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武人祭

高等部の騒ぎ

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 ところ変わってユウキは、アヤトと同学年で三組に入っていた。

 「どうも、今日からこのクラスでお世話になるユウキです」

 ユウキの丁寧な名乗りに、クラスの所々からキャーという女性の声が上がり、男性からは感心や嫉妬の声が上がっていた。

 「うわっ、マジでイケメンだ」
 「チッ・・・・・・なんだ、俺たちの敵か」
 「ああ、そうだな。生まれながら何もしなくてもモテる才能を持つ俺たちの敵だ・・・・・・ぺっ!」
 「夜道には・・・・・・いや、四六時中、背中に気を付けろよ」

 男性陣からの明確な敵意に、ユウキも「うわぁ・・・・・・」と漏らす。

 「前にもラブレターとか貰った時も似た感じになってたけど、やっぱ変わらないな・・・・・・」

 ユウキはそう言って乾いた笑いを零す。
 すると、女子生徒の一人が挙手した。

 「ユウキ君ってやっぱり彼女いるんですか?いなかったら好きなタイプ教えてください!」

 その発言に周りがざわめき立ち、近くの席に座っている女子生徒からは「だいたーん」とからかう。
 その女子の問いにユウキはニッコリと笑って答える。

 「亜人や魔族っていいなって思っています」

 屈託のない笑みで答えたその言葉に、教室中がシンッと一気に静まり返る。
 生徒たちの表情は驚きで固まっていたり、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
 そのうちの一人、男子生徒が苦笑いをしながら口を開く。

 「は、はは、冗談だろ?亜人相手だっておかしいのに・・・・・・魔族?」

 その男子が引きつった笑いをし、釣られて他数名の生徒からも笑いが起こる。
 全員の態度にユウキは首を傾げた。

 「何もおかしい事なんてないだろ。俺の知り合いにすっげぇ可愛くて性格のいい亜人や魔族がいるんだ。お前らがなんて教わってきたのか知らねえけど、他の種族相手に恋愛できないなんて・・・・・・損してるぜ、お前ら?」
 「っ・・・・・・魔族の知り合い!?」

 ユウキの発言に教室中がどよめく。

 「おーっと、先に言っておくがお前らには紹介してやらねえからな?」

 問題発言をしたユウキ自身は冗談混じりにそう言って笑う。
 隣では先生が眉間を押さえていた。

 「あー、ユウキ君。君はこれ以上、話をややこしくしないでくれ。席は空いてるところに好きに座っていいから、早く行ってくれ」
 「わかりました!」

 ユウキは軽く敬礼しながらそう答え、丁度真ん中辺りの空いている席に座った。
 すると隣の席に座っている男子生徒が嫌な顔をしてほんの少しだけユウキから離れる。

 「・・・・・・なんだよ?」
 「だって、亜人と魔族が好きだなんて・・・・・・変態が伝染るだろ」
 「ほうほう、なるほど・・・・・・」

 うんうんと頷くユウキ。
 次に意味深な笑みを浮かべたと思うと、相手の肩に腕を回し、自分のところへ引き寄せる。

 「ならいい事を教えてやろう。まず亜人はなーー」

 そこから十分間、ユウキによる亜人と魔族のいい所を上げる講義が始まった。
 正確には亜人であるミーナとクリララ、魔族のフィーナ、ペルディア、ランカの可愛いところを語っていただけなのだが。
 しかしそれはまるで・・・・・・

 「ーーしかも亜人は五感が鋭いから、肩とか少し触っただけで耳が動いたり声が出たりするんだよ。それに、もし自分の好きなタイプを把握してるなら、相手を探しやすいぞ?逞しい女の子がご所望だったら鬼族や獅子族、小柄な子なら猫人族だっているしな。魔族も角が性感帯らしくて触られるのを嫌うんだが、アレで亜人と同じような反応をしたらと思うと興奮すると思わないか?さらに魔族は俺たちより寿命が長く、その大半を二十代前後の姿で過ごすと言っていた。なら損はないはずだ。青い肌?むしろ目を奪われるほど妖美で最高のスパイスじゃないか!人間の女の子に恋をするなとは言わないが、亜人や魔族だからって目を背けるのは、それこそ損だと思わないか?」
 「そうか・・・・・・そうか、亜人も魔族も・・・・・・いいもんなんだなぁ・・・・・・」

 長々としたユウキの言葉を聞いていた男子生徒は、目から生気が失われ、乾いた笑いを続けていた。

 「おい、ユウキ、いい加減にしないと投稿初日から両手と頭にバケツを持たせて廊下に立たされたっていうレッテルを貼らせるぞ」
 「マジですか、頭バケツは勘弁してほしいですね」

 注意された途端に大人しくなるユウキ。
 そして先生も溜め息を吐きながら、これまで進めてきた授業進行内容を軽く説明し始める。

 ーーーー

 その教室の外から、中を窺う者がいた。

 「・・・・・・何してるんだ、あいつは」

 アヤトが扉の隙間から中を見て、呆れて呟く。
 彼はユウキたちの動向が心配になり、授業を抜け出していた。
 開けていた隙間をアヤトは閉めて歩き出す。

 「ノクトは予想通りだとして、エリは意外と好印象。後々学園生活に支障はあまりないだろうな。ユウキがかなりオープンになってたが・・・・・・向こうにいた時と違って偽る気がないようだな。チユキは・・・・・・まぁ、少しくらい自制してくれればいいか」

 ブツブツと呟きながら廊下を歩くアヤト。すると教室の前で立ち止まる。
 そこはアヤトたちがいるべき、高等部一年一組の教室だった。
 アヤトはガラガラとスライドの扉を開く。

 「ただいま」
 「おかえりなさい、あなた~♪」

 アヤトの言葉に、授業を行っていたカルナーデがふんわりとした言い方でそう返事を返した。

 「俺の言い方も悪かったかもしれないが、教師がそういうノリに乗っちゃいけないだろ・・・・・・」
 「アヤト君がイケないですよ~?相手のいない寂しい女の子に『ただいま』なんて言葉をかけたら~・・・・・・キュンとしちゃうじゃないですか~」
 「さいですか・・・・・・」

 「うふふ~」と笑うカルナーデ。それを見た離れた席でメアがボソリと呟く。

 「女の子・・・・・・?」
 「なんですか、メアさん?」

 メアの小さな呟きに、少し低い声で反応するカルナーデ。
 その声にはいつものゆったりした口調がなく、異様な威圧感にメアは目を逸らして口もつぐむ。

 「もう・・・・・・では授業を再開しますので、アヤト君も席に戻ってください~」

 カルナーデがそう言うと、アヤトは「ああ」と答えてメアたちの元へと行き、席に着く。
 するとメアがこっそりと耳打ちしてくる。

 「長いトイレだったな?」
 「まぁな。

 アヤトがそう言うと、メアが「キヒヒ」といやらしく笑う。

 「心配性だよな、アヤトも」
 「心配してないと何するかわかったもんじゃないからな。実際チユキとかギリギリだったし」

 呆れながらそう言うアヤトは、カルナーデの授業で使う教材をこっそり収納庫から取り出す。

 「ズリーな、それ」
 「いいだろー・・・・・・って、メアだって収納庫くらいなら使えるじゃねえか」

 アヤトにそう言われてハッと気が付くメア。
 早速何かしようとするメアに、アヤトが釘を刺す。

 「一応言っとくが、人前でやるなよ?やるならこっそりだ」

 アヤトがそう言って胸ポケットに手を入れてペンを取り出すーーフリをした動作をし、収納庫に繋げて取り出したペンをメアに見せ付ける。

 「慣れてるなー・・・・・・」
 「そもそも私には空間魔術がない。そんな私からしたら、二人共ズルい」

 メアの横にいるミーナがそう言って、正面を向きながら頬を膨らませ、拗ねていた。
 その様子にメアが苦笑いする。

 「あー、すまん・・・・・・荷物持ちくらいならしてやるから、勘弁してくれよ」
 「・・・・・・ん、冗談。荷物はもうアヤトに持たせてる」

 してやったりと言うように、ニヤリと笑うミーナ。
 メアが視線をアヤトに移すと、収納庫からミーナの教材を取り出していたところだった。
 それをメアの前まで差し出し、ミーナが受け取った。

 「おい、それ聞いてねえんだけど!?なんで俺のはやってくれなかったんだよ?」

 いつの間にかミーナの荷物をアヤトが持っていた事にツッコむメア。
 アヤトは特に動じた様子もなく答える。

 「いやだって、ミーナの荷物持ち始めたのは今日だし、お前はお前の収納庫があるし」
 「むー、どうせアヤトと同じところに繋がってるんだし、教えてくれてもいいだろ・・・・・・」

 そう言って今度はメアが膨れてしまっていた。
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