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武人祭
同級生との差
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☆★☆★
師匠がシャード先生に何を教えてもらうかを知る前に、学園に登校する時間になってしまい、話はまた帰ってきてからとなった。
そして自分の教室に着いた今、俺は動けなくなっていた。
「な~、お願いだよカイト~。宿題見せてくれよぉ~」
そう言って俺の足にまとわり付いてくるのは友人のシン。
クラスの教室へ入ると真っ先にやってきて、「宿題を見せて」と言い出した。
自分でやれと俺が断ると、このようにしがみつかれ、教室の入り口で立ち往生している。
「鬱陶しいぞ、シン。それに俺の宿題を見せたところですぐにバレるに決まってるだろ」
今日提出する予定の宿題というのは、夏休み中に会得した魔法のお披露目と、その魔法をどうやって会得したかまでを文にして書いてこい、というものだった。
なので、俺の文を写したところで同じ魔法を使えるようにしなければいけないし、シンのことだから全く同じ文にして出そうとするだろう。そんなのが二人もいたら怒られるだろうから、俺は何の躊躇もなくシンを売るだろう。
まぁ、どっちにしても大人しく怒られろ、ということだ。
「そもそも、お前は何属性の魔法が使えるようになったんだ?」
「フッ、聞いて驚け・・・・・・俺はこの夏、ついに無属性を手に入れた!」
「わかった、つまり何も会得してないんだな」
俺たちのやり取りに教室中がドッと笑いに包まれる。別に漫才をしてるわけじゃないんだけどな・・・・・・。
結局、何もしていないシンは放置し、早速最初がその授業だったので、先生に怒られていた。
場所は魔法を撃っても問題のない中庭で、今は俺たちのクラスだけが使っている状態だ。
使っているクラスが俺たちだけだからか、前よりも狭くなってしいる。今までは気にしてなかったが、これも空間魔術の一種だろうか?
「それじゃあ、夏休み中遊び呆けてたアホなシン以外は全員、ちゃんと魔法を会得したな? ではその成果を発表して見せてくれ」
乱れた天然パーマの銀色の髪で暗い雰囲気を纏った先生がそう言った。
レイ二先生だ。シャード先生のような白衣を着ているが、彼もれっきとした魔術師で、白衣は先生の趣味らしい。
授業が始まると中庭の中央に人の形をした白いものが現れる。
周囲の女の子から小さい悲鳴が上げるが、それが害のないものだとすぐに知った。
「落ち着いてくれ、あれは私の魔術で作った幻影だ。ただそこにあるだけの的と思ってくれていい」
レイ二先生の説明にホッとしたのが聞こえる。
「私は強力な魔術は放てないが、ああやって惑わすものは得意なんだ。あれを狙って会得した魔法を撃て。魔法の威力によっては成績が上がるから気張れよ」
煽るように最後のセリフを笑いながら言うレイ二先生。その言葉に何人かの目の色が変わってしまった。怖い怖い。
まず一人目の女子生徒が前に出る。
緊張しているためか、動きがガチガチだ。
するとレイ二先生が女子生徒の横へと立った。
「見本として授業の復習をしようか。まず魔法とは、血と同様に体の中を循環する魔力を変換、放出するものだ。そして大切なのはイメージ。頭の中で明確な形にすることが大事だ」
そう言ってレイ二先生は手の平を差し出し、その上に鳥の形をした土を作り出した。
「そして詠唱は、人が補え切れないイメージを助けてくれる。だからその魔法や魔術を使い続ければ、慣れでイメージが固まっていき、無詠唱で放つことができる。と、これがこれまでやった授業を簡単にまとめた内容だ」
それだけ言うとその土を的に軽く当て、また後ろに下がる。どうやら緊張を少しでも解そうとしてくれたみたいだった。
そのおかげか女子生徒の緊張が和らぎ、杖を取り出して詠唱を唱え始める。
「ーーウォーターボール!」
唱え終えると、杖の先から水の塊が出現し、勢いよく放たれた。
ウォーターボールは的へ真っ直ぐ飛び、パシャッという気持ちよさそうな音を立てて当たった。
その結果がどうだったのか気になった生徒は、恐る恐るレイト先生の方を向いた。
「おめでとう。ただの魔法とはいえ、あの勢いで飛んだのはいい評価だ。では次」
それからは一人、また一人のと成功させたり失敗させたり・・・・・・中にはシンのように宿題をやらず名乗り出なかった生徒もいて、同様に叱られていた。
失敗した大半は剣士希望の生徒だったこともあり、失敗したとしても「まぁ、そんなもんか」という感じで終わっていた。
そしてレナの番になり、俺の横を通り過ぎようとした。その際、小さく声をかける。
「頑張れよ」
「・・・・・・!」
俺の応援に驚いたレナはにっこりとした微笑みで返してくれる。
「青春だナァ?」
「おおぅ!? じ、ジジリさん・・・・・・」
いつの間にか隣に立っていた情報屋のジジリさん。その彼女がにんまりとした意地悪な笑みを浮かべていた。
「・・・・・・なんだよ」
「そう邪険にしないでくれヨ。オネーサンは君に期待してると言っても過言ではないんだゼ?」
「何を期待してるって?」
「泥沼の三角関係」
クソがッ! 思わずそう叫びたくなってしまうくらい腹の立つ回答だった。
そしてずっとニヤニヤニマニマしてるジジリさんをとりあえず無視し、レナに視線を戻すと訓練用の弓を持っていた。
「おや? えっと、レナさん、か。君ははなぜ弓を? 一応これは魔法の授業なんだが・・・・・・」
レイニ先生が引きつった笑いをしていた。
まぁ、普通魔法を撃てと言われて弓を出す奴はいないだろうし、その反応が正解なのだろうけど。
「あ、この方、が集中できるから、です・・・・・・」
「そうか、なら好きにやるといい。他の子も、もし自分に合った道具を使用したいというのであれば、それで構わない。今終わった子の中にもそういう人がいたら申し出るように」
先生の諦めに近い言葉で辺りが騒めき立つ。
「えー、普通杖でしょー?」「僕も別のでやってみようかな・・・・・・」「っていうか、弓って・・・・・・」
レナに共感する人もいれば、バカにするような声も飛び交う。
しかし当の本人であるレナは気にした様子もなく、弓を構えて正面を向いていた。
ただ、その手には矢を装備していなかった。
「矢はいいのかい? 弓だけじゃ・・・・・・」
「いいん、です。『これ』が、私の研究成果、ですから」
レイニ先生の疑問にレナはそう答えると、空いてるもう片方の手を、まるで矢を装填するかのような構えを取る。
その謎の行動にみんなが首を傾げて注目する中、その空いた手に細い水の矢が形成された。
「な、に・・・・・・!?」
周りのみんなはとうとう静まり返り、レイ二先生は驚愕の表情で呟いた。
レナは深呼吸をして、ゆっくりと水の矢を持っていた指を放す。
すると矢と同様に放たれたそれは真っ直ぐ飛び、人の形をしていた的の頭部分を貫き風穴を空けた。
レナは技が成功したことを確認すると、ホッと一息吐いてレイト先生の方を向く。
「あ、の・・・・・・どうだった、でしょうか?」
「「・・・・・・」」
レイ二先生とその場にいた生徒全員が唖然とした顔をして固まっていた。つまり沈黙。
誰からも声が上がることもなく、レナは何か失敗したのかと俺の方を向く。
ああ、失敗したよ。魔法を撃つ授業なのに、あんな魔術を撃ってしまえばこうなるに決まっている。
俺はレナの視線に答える代わりに、大きく溜め息を吐いた。
そして、しばらくしてやっとレイ二先生が口を開く。
「レナさん、今のは魔術か・・・・・・?」
「あ、は、はい。風と水を使い、ました。イメー、ジは見た通り、矢を形成、して放ちまし、た」
「しかも無詠唱で形成してなかったか?」
「いつもの、ことなので・・・・・・」
「いつものこと・・・・・・?」
数秒呆然としていたレイ二先生は今度は頭をポリポリと掻き、そして大きく溜め息を吐いてレナに再び向き合う。
「レナさん。君の魔法実技評価は少なくとも今学年は満点だ」
「え・・・・・・え?」
何を言われたかをすぐには理解できないレナは、何を言えばいいのかすらわからなくなっていた様子だった。
「中等部では魔法を伸ばす授業しかしない。中等部三年くらいでやっと高等部に向けて魔術を開発するための下地を用意し始めるんだ。まぁ、この時点で魔術の研究を始める生徒もいるが・・・・・・」
たしかに、体育館で師匠に向けて魔術を放とうとしていた生徒がいたことを思い出す。
「だけど君はすでにかなり難易度の高い魔術を使ってしまっている。私が教えることはあるだろうが、中等部として教えるものは何もなくなってしまった、ということだ」
「は、はぁ・・・・・・?」
「よくわかってないな? まぁいい、とりあえず合格ということだ。元に戻ってよし」
頭を軽く下げて帰ってくるレナ。
ジジリさんが横にいるからか、俺の横へと立ち並んだ。
「確かに実力を示す場でもあるけど、ここで普通に魔術なんか使ったら、そりゃこうなるだろ」
俺がそう言うとレナは顔を赤くし、ジジリさんが軽く笑った。
「レナっちは変に真面目だからナ。どうせ自分の全力をぶつけたいとか思っての行動じゃないのカ?」
ジジリさんの言葉に、レナは首を横に振る。
「ううん、全力、は出してない、よ? 魔力は少なめに、細く鋭いイメージ、でやったから」
師匠、近頃同い年のレナがどんどん逞しくなっていって、正直複雑な心境です・・・・・・。
「あー・・・・・・他に魔術が扱える奴がいたら放ってもいいぞ。ただし失敗したら逆に減点にするがな。次、ジジリ!」
簡単に魔術を放って暴発させないように保険をかけた言い方をするレイ二先生。
「おっと、オイラの出番のようダ。ちょっくら行ってくるゼ!」
そして呼ばれたジジリさんは自信満々に前に出て行った。
緊張の様子もなく、片手を前に出して詠唱する。
「ーーロックストーム☆」
ジジリさんが人差し指と小指、親指を立てた手を顔の横に持っていき、ポーズを取る。
どれだけ自信があってそんなことをしたのか、と思ったのもつかの間。
その手の先からは拳程度の石がポロリと、勢いもなく地面に転がっただけだった。
「・・・・・・」
「ああ、言うのを忘れてタ。オイラ、魔法は苦手なのサ」
「「だったらなんでそんな自慢気!?」」
クラス一同の心が一つとなった。
師匠がシャード先生に何を教えてもらうかを知る前に、学園に登校する時間になってしまい、話はまた帰ってきてからとなった。
そして自分の教室に着いた今、俺は動けなくなっていた。
「な~、お願いだよカイト~。宿題見せてくれよぉ~」
そう言って俺の足にまとわり付いてくるのは友人のシン。
クラスの教室へ入ると真っ先にやってきて、「宿題を見せて」と言い出した。
自分でやれと俺が断ると、このようにしがみつかれ、教室の入り口で立ち往生している。
「鬱陶しいぞ、シン。それに俺の宿題を見せたところですぐにバレるに決まってるだろ」
今日提出する予定の宿題というのは、夏休み中に会得した魔法のお披露目と、その魔法をどうやって会得したかまでを文にして書いてこい、というものだった。
なので、俺の文を写したところで同じ魔法を使えるようにしなければいけないし、シンのことだから全く同じ文にして出そうとするだろう。そんなのが二人もいたら怒られるだろうから、俺は何の躊躇もなくシンを売るだろう。
まぁ、どっちにしても大人しく怒られろ、ということだ。
「そもそも、お前は何属性の魔法が使えるようになったんだ?」
「フッ、聞いて驚け・・・・・・俺はこの夏、ついに無属性を手に入れた!」
「わかった、つまり何も会得してないんだな」
俺たちのやり取りに教室中がドッと笑いに包まれる。別に漫才をしてるわけじゃないんだけどな・・・・・・。
結局、何もしていないシンは放置し、早速最初がその授業だったので、先生に怒られていた。
場所は魔法を撃っても問題のない中庭で、今は俺たちのクラスだけが使っている状態だ。
使っているクラスが俺たちだけだからか、前よりも狭くなってしいる。今までは気にしてなかったが、これも空間魔術の一種だろうか?
「それじゃあ、夏休み中遊び呆けてたアホなシン以外は全員、ちゃんと魔法を会得したな? ではその成果を発表して見せてくれ」
乱れた天然パーマの銀色の髪で暗い雰囲気を纏った先生がそう言った。
レイ二先生だ。シャード先生のような白衣を着ているが、彼もれっきとした魔術師で、白衣は先生の趣味らしい。
授業が始まると中庭の中央に人の形をした白いものが現れる。
周囲の女の子から小さい悲鳴が上げるが、それが害のないものだとすぐに知った。
「落ち着いてくれ、あれは私の魔術で作った幻影だ。ただそこにあるだけの的と思ってくれていい」
レイ二先生の説明にホッとしたのが聞こえる。
「私は強力な魔術は放てないが、ああやって惑わすものは得意なんだ。あれを狙って会得した魔法を撃て。魔法の威力によっては成績が上がるから気張れよ」
煽るように最後のセリフを笑いながら言うレイ二先生。その言葉に何人かの目の色が変わってしまった。怖い怖い。
まず一人目の女子生徒が前に出る。
緊張しているためか、動きがガチガチだ。
するとレイ二先生が女子生徒の横へと立った。
「見本として授業の復習をしようか。まず魔法とは、血と同様に体の中を循環する魔力を変換、放出するものだ。そして大切なのはイメージ。頭の中で明確な形にすることが大事だ」
そう言ってレイ二先生は手の平を差し出し、その上に鳥の形をした土を作り出した。
「そして詠唱は、人が補え切れないイメージを助けてくれる。だからその魔法や魔術を使い続ければ、慣れでイメージが固まっていき、無詠唱で放つことができる。と、これがこれまでやった授業を簡単にまとめた内容だ」
それだけ言うとその土を的に軽く当て、また後ろに下がる。どうやら緊張を少しでも解そうとしてくれたみたいだった。
そのおかげか女子生徒の緊張が和らぎ、杖を取り出して詠唱を唱え始める。
「ーーウォーターボール!」
唱え終えると、杖の先から水の塊が出現し、勢いよく放たれた。
ウォーターボールは的へ真っ直ぐ飛び、パシャッという気持ちよさそうな音を立てて当たった。
その結果がどうだったのか気になった生徒は、恐る恐るレイト先生の方を向いた。
「おめでとう。ただの魔法とはいえ、あの勢いで飛んだのはいい評価だ。では次」
それからは一人、また一人のと成功させたり失敗させたり・・・・・・中にはシンのように宿題をやらず名乗り出なかった生徒もいて、同様に叱られていた。
失敗した大半は剣士希望の生徒だったこともあり、失敗したとしても「まぁ、そんなもんか」という感じで終わっていた。
そしてレナの番になり、俺の横を通り過ぎようとした。その際、小さく声をかける。
「頑張れよ」
「・・・・・・!」
俺の応援に驚いたレナはにっこりとした微笑みで返してくれる。
「青春だナァ?」
「おおぅ!? じ、ジジリさん・・・・・・」
いつの間にか隣に立っていた情報屋のジジリさん。その彼女がにんまりとした意地悪な笑みを浮かべていた。
「・・・・・・なんだよ」
「そう邪険にしないでくれヨ。オネーサンは君に期待してると言っても過言ではないんだゼ?」
「何を期待してるって?」
「泥沼の三角関係」
クソがッ! 思わずそう叫びたくなってしまうくらい腹の立つ回答だった。
そしてずっとニヤニヤニマニマしてるジジリさんをとりあえず無視し、レナに視線を戻すと訓練用の弓を持っていた。
「おや? えっと、レナさん、か。君ははなぜ弓を? 一応これは魔法の授業なんだが・・・・・・」
レイニ先生が引きつった笑いをしていた。
まぁ、普通魔法を撃てと言われて弓を出す奴はいないだろうし、その反応が正解なのだろうけど。
「あ、この方、が集中できるから、です・・・・・・」
「そうか、なら好きにやるといい。他の子も、もし自分に合った道具を使用したいというのであれば、それで構わない。今終わった子の中にもそういう人がいたら申し出るように」
先生の諦めに近い言葉で辺りが騒めき立つ。
「えー、普通杖でしょー?」「僕も別のでやってみようかな・・・・・・」「っていうか、弓って・・・・・・」
レナに共感する人もいれば、バカにするような声も飛び交う。
しかし当の本人であるレナは気にした様子もなく、弓を構えて正面を向いていた。
ただ、その手には矢を装備していなかった。
「矢はいいのかい? 弓だけじゃ・・・・・・」
「いいん、です。『これ』が、私の研究成果、ですから」
レイニ先生の疑問にレナはそう答えると、空いてるもう片方の手を、まるで矢を装填するかのような構えを取る。
その謎の行動にみんなが首を傾げて注目する中、その空いた手に細い水の矢が形成された。
「な、に・・・・・・!?」
周りのみんなはとうとう静まり返り、レイ二先生は驚愕の表情で呟いた。
レナは深呼吸をして、ゆっくりと水の矢を持っていた指を放す。
すると矢と同様に放たれたそれは真っ直ぐ飛び、人の形をしていた的の頭部分を貫き風穴を空けた。
レナは技が成功したことを確認すると、ホッと一息吐いてレイト先生の方を向く。
「あ、の・・・・・・どうだった、でしょうか?」
「「・・・・・・」」
レイ二先生とその場にいた生徒全員が唖然とした顔をして固まっていた。つまり沈黙。
誰からも声が上がることもなく、レナは何か失敗したのかと俺の方を向く。
ああ、失敗したよ。魔法を撃つ授業なのに、あんな魔術を撃ってしまえばこうなるに決まっている。
俺はレナの視線に答える代わりに、大きく溜め息を吐いた。
そして、しばらくしてやっとレイ二先生が口を開く。
「レナさん、今のは魔術か・・・・・・?」
「あ、は、はい。風と水を使い、ました。イメー、ジは見た通り、矢を形成、して放ちまし、た」
「しかも無詠唱で形成してなかったか?」
「いつもの、ことなので・・・・・・」
「いつものこと・・・・・・?」
数秒呆然としていたレイ二先生は今度は頭をポリポリと掻き、そして大きく溜め息を吐いてレナに再び向き合う。
「レナさん。君の魔法実技評価は少なくとも今学年は満点だ」
「え・・・・・・え?」
何を言われたかをすぐには理解できないレナは、何を言えばいいのかすらわからなくなっていた様子だった。
「中等部では魔法を伸ばす授業しかしない。中等部三年くらいでやっと高等部に向けて魔術を開発するための下地を用意し始めるんだ。まぁ、この時点で魔術の研究を始める生徒もいるが・・・・・・」
たしかに、体育館で師匠に向けて魔術を放とうとしていた生徒がいたことを思い出す。
「だけど君はすでにかなり難易度の高い魔術を使ってしまっている。私が教えることはあるだろうが、中等部として教えるものは何もなくなってしまった、ということだ」
「は、はぁ・・・・・・?」
「よくわかってないな? まぁいい、とりあえず合格ということだ。元に戻ってよし」
頭を軽く下げて帰ってくるレナ。
ジジリさんが横にいるからか、俺の横へと立ち並んだ。
「確かに実力を示す場でもあるけど、ここで普通に魔術なんか使ったら、そりゃこうなるだろ」
俺がそう言うとレナは顔を赤くし、ジジリさんが軽く笑った。
「レナっちは変に真面目だからナ。どうせ自分の全力をぶつけたいとか思っての行動じゃないのカ?」
ジジリさんの言葉に、レナは首を横に振る。
「ううん、全力、は出してない、よ? 魔力は少なめに、細く鋭いイメージ、でやったから」
師匠、近頃同い年のレナがどんどん逞しくなっていって、正直複雑な心境です・・・・・・。
「あー・・・・・・他に魔術が扱える奴がいたら放ってもいいぞ。ただし失敗したら逆に減点にするがな。次、ジジリ!」
簡単に魔術を放って暴発させないように保険をかけた言い方をするレイ二先生。
「おっと、オイラの出番のようダ。ちょっくら行ってくるゼ!」
そして呼ばれたジジリさんは自信満々に前に出て行った。
緊張の様子もなく、片手を前に出して詠唱する。
「ーーロックストーム☆」
ジジリさんが人差し指と小指、親指を立てた手を顔の横に持っていき、ポーズを取る。
どれだけ自信があってそんなことをしたのか、と思ったのもつかの間。
その手の先からは拳程度の石がポロリと、勢いもなく地面に転がっただけだった。
「・・・・・・」
「ああ、言うのを忘れてタ。オイラ、魔法は苦手なのサ」
「「だったらなんでそんな自慢気!?」」
クラス一同の心が一つとなった。
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