最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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武人祭

師弟で友人

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 結局その後、保護したの女たちには俺のではなく、メアたちの背中を流すよう風呂に連れて行ってもらった。
 なので、あいつらが風呂から出て来るまでは空き家に待機している状態となっている。
 そして保護しているのは女だけなので、今ここにいるのは俺とカイトだけとなっている。

 「連れて来た人たち、意外とここに馴染んでるみたいですね」

 カイトが横でストレッチをしながらそう呟いた。
 カイトもだが、メアたちにも女たちを保護したその日に事情を話してある。
 あいつらは盗賊に村を襲われ、他の住人から売られるような形で連れて行かれたというのだ。しかし結局その村の奴らはここにいる女たち以外殺されてしまったようだが・・・・・・。
 そして俺はある子供から依頼を受けてその盗賊を壊滅直前に追い込んだのだ。ちなみに、情報屋ジジリと会ったのもその時だ。
 次に助けたはいいが、住む家どころか帰る村もなくなった女たちをどうするかを話し合い、結果この魔空間にいくつかの条件付きで住まわせた、というわけだ。
 その条件の一つが「この魔空間から出られない」のだったのだが、女たちは快く承諾した。元よりそれ以外の選択肢は難しいようだったしな。

 「そうみたいだな。まだ戸惑ってはいるようだが、ここは向こうより格段に住みやすいしな」
 「学園を卒業したらいっそここに住みますか? なんて・・・・・・」

 カイトは冗談半分のつもりでそう言い、軽く笑う。
 しかし俺からすれば冗談ではない。

 「ん? そのつもりだぞ」
 「・・・・・・え?」

 キョトンとしてマヌケな顔になるカイト。

 「だってせっかくこんな場所があるんだぞ? それくらい活用しないでどうする」
 「いやまぁ、確かに・・・・・・でも外との連絡手段はどうするんですか?」

 連絡手段・・・・・・そう聞けば一見不便そうに感じるが、実際そうでもないと思う。

 「そんな頻繁に連絡なんて取る相手なんていないだろ」
 「やめてください、そんな「お前友達いねえだろ」みたいな言い回し」
 「お前友達いないだろ」
 「なんで言うんですか!? いますよ、クラスに一人くらいは!」

 一人しかいないのか・・・・・・? なんて事を考えつつ良い感じにカイトにツッコミさせたところで本題に戻る。

 「まぁ、冗談はさておき。どこかに行きたい場合は俺かノワールに言えばいいし、もし二人ともその場にいなかった時のための連絡手段も考えてある」
 「そうですか。ところで師匠はクラスに友達はいるんですか?」

 その話続けるのか・・・・・・。

 「ミーナとメア」
 「俺の聞いてる内容とちょっと違いますし、二人とも師匠の恋人じゃないですか。却下です」

 師匠の言葉を弟子が却下するとは、生意気にも逞しく育ってしまったものだ・・・・・・。
 俺もカイトと同じストレッチを始める。足を広げて体全てを地面に付ける。横にいるカイトからは「柔らかっ!?」と驚かれた。

 「一応話すには話すが、そこまで親しい奴はいねえな」
 「なんですか、師匠だって友達いないじゃないですか」
 「舐めるなよ? 今までの人生でまずまともに口を聞いてくれる奴なんて結城以外にいなかったんだぞ。つまりここに来るまでの十八年で作った友人はたった一人だけだ」

 俺の言葉を聞いたカイトが何故か目を逸らして引き笑いする。

 「なんか・・・・・・すいません」

 謝るなよ、悲しくなるだろ・・・・・・。

 「まぁ、「友達」だとか「親友」だとかなんて、気が合った相手に付ける称号みたいなもんだ。無理に作る必要もねえし、いなかったところで不便するわけでもねえからな。一緒にいてお互いに楽しいと思えるなら友達」
 「・・・・・・なんか言い訳みたいですね」

 グサッとくる言葉を投げかけてくるカイト。あれ、さっきから結構エグい事ばっか言っくるけど、もしかしてこいつ俺の事嫌い?

 「でも一緒にいて楽しい人が友達なら・・・・・・師匠も友達って事ですか?」

 その言葉に驚き、目を見開いてしまった。
 俺の反応が不安だったのか、カイトが恐る恐る聞いてくる。

 「えと・・・・・・やっぱり違い、ましたか?」
 「いや・・・・・・」

 俺とカイトは師弟という関係だが、それはあくまで「鍛える側」と「鍛えられる側」というだけだ。
 それを抜いた人間関係はと言われれば・・・・・・?
 一応学園の先輩後輩でもあるが、それ以上に親しい関係でもある。お互い遠慮なく言い合えるし。
 って事は・・・・・・。

 「そうか・・・・・・そうだな。俺たちは友人って事になるんだな」
 「あ・・・・・・いいんですか? 俺って結構年下ですよ?」

 俺の年齢を知っているカイトは遠慮気味に聞き返してくる。
 確かに学生間で二歳、三歳だけでも相手と自分が対等になれるなんて思えないもんな。
 しかし成人を越して社会に出てしまえば年齢差のある友人なんていくらでもいた。
 だから俺とカイトだって友人とも言えるだろう。

 「年齢は関係ないさ。さっきもそうだが、カイトも俺も言いたい事や冗談を言い合ってるんだし、いいんじゃねえか? そういう事で」

 俺が言った事が嬉しかったのか、変にニヤけてしまっているカイト。正直気持ち悪い。
 その話がそろそろ終わりそうなところで、丁度メアたちが風呂から上がって来たようだった。

 「何やってんだお前ら!? 気持ち悪っ!」

 何故か俺たちを見たメアの第一声がそれだった。
 改めて自分とカイトの状態を見直すが、ストレッチで体を地面に付けるくらい折り曲げている以外変わった様子はない。

 「何が気持ち悪いんだ? いつもの柔軟体操だろうが」
 「いや、男二人揃ってそんな状態になってたら誰でも引くだろ・・・・・・アヤトなんて片足が背中にくっ付いてるじゃん」

 本気で引いた目をするメア。いや、メアだけじゃなく他の女連中も引きつった笑いをしている。
 唯一ミーナだけは表情を変えずに見てきた。
 俺の体勢は普通のストレッチではなく、ヨガのポーズに近い状態である。

 「気持ち悪かろうが戦いにおいて柔軟は結構重要な要素なんだぞ? ・・・・・・確か一応各自でやるよう指示してあったはずなんだが、まさかやってないって事はないよな?」

 俺がジト目をして睨むとミーナは「もち」とグッドサインを出したが、メアは思いっ切り目を逸らした。

 「・・・・・・メーアー?」

 起き上がってメアの肩を掴むと小さく「ヒッ!?」と悲鳴が上がる。

 「最初以来、準備運動すら見た事ないなーとは思ってたけど、やっぱやってなかったかー・・・・・・あれだけ大事だって言ったのになー?」
 「あ、いや・・・・・・そ、そうだ! レナとミーナも・・・・・・フィーナだってやってないんじゃないか!?」

 責任転嫁に近い感じで助けを求める視線をミーナたちに送っていたが、フィーナがなんとも爽やかな笑顔で答える。

 「あたしとミーナはアヤトの前でいつもしてるわ」

 無慈悲な宣告も共に中指を立てるファックサインをメアに向けた。
 そしてレナも・・・・・・。

 「いつも、お風呂入った、後にやって、ます、よ?」
 「ま・・・・・・マジで?」

 レナもメアに対して思う事があったらしく、ちょっと怒った感じに頬を膨らませてしまう。
 その後、俺はメアに軽い説教とストレッチをした。
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