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5章
11話目 前編 対立
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「この惨状の原因は貴様だな!」
有象無象から一人の女性が前に出てきて言い放つ。勇ましい第一印象を強く残す姿をした彼女。
金色の髪をなびかせて紫色の瞳をし、大剣ほどでなくとも普通の剣より一回り大きめの剣を地面に突き刺していた。
冒険者というには服装が豪華過ぎる。恐らくあの城にいた王様の娘と似た立場の人間じゃないかと思う。
「何とか言ったらどうだ、魔物を引き連れた男!」
尋問のように責める口振りの女性。性格はやっぱり初めて会った頃のアリアや王様の娘に似て高飛車に思える。
「違うんで帰っていい?」
「いいわけないだろう、このたわけ!」
めっさ怒られた。
というか馬鹿者なんて言われて怒られたの初めてだよ。まぁ、尻尾が九本ある女性や骸骨と一緒に雑談してる怪しい奴が違うって言っても信じてもらえないよね。
……もうどうでもいいか。
「んじゃ、だとしたらなんなの?」
「何?」
ちょっと生意気な感じで聞き返したら女性の顔が血管が浮き出るくらいの鬼のような形相になってしまった。
こっわ!
え、待って本当に怖い!人間ってあんな顔できるの?昔絡まれた不良の顔より怖い!
もうあの目で睨まれただけで死ぬんじゃない俺?
なんて考えていると、その女性の口角が上がり笑みを浮かべる。
「……面白い!」
「へ?」
怒りの形相から笑いを浮かべてそう言い放つ彼女の態度と言葉に戸惑った。いや、笑ってるのは口だけで目が怖いままなんだけど。
「こうやって意思疎通ができるのなら他にも問おう!貴様は我ら人間に仇なす者か?」
それはここで戦うかという問い掛けなのだろうか。どちらにしても俺の考えはもう変わらない。
「人間でも亜種でも魔族でも変わらない。敵なら食うまでだ」
そう言って腕を捕食形態にしようとした。
しかし腕は変化する気配がなかった。
「えっ、なんで……?」
【アバターによる過剰捕食と体内に取り込んだ者の回復にウイルスを割り当てているので、捕食形態への変化は現在できません】
マジかよ……って、取り込んだ奴の回復?誰を回復してるっていうんだ?
【……約千を超える町にいたほぼ全ての住人たちです。同時に個体名「ララ」も含めています】
ララを?ララは死んだんじゃ……助かるのか!?
【肯定します。消滅寸前だったため多くの時間を要しますが】
彼女の言葉を聞いて目の前が明るくなった気がした。
ララが生きてる!? しかも殺してしまったと思ってた普通の人々まで!?
割り切ろうとしてもやっぱり多少の罪悪感はあったのだけれども、その心配がなくなったわけだ。
家や家具はまぁ……申し訳ないとは思うけれども。
そう思ったらつい笑いが零れてしまう。
「フッ、面白い……この人数を相手にできると豪語するか!」
「豪語かどうか試してみるか、小娘?」
「数で我らをとうにかできると思っているのか?お前らのようなカスなど主が出るまでもない」
相手も相手だが、マカやリンネスも荒い言葉で挑発した。、
「言うではないか、魔物風情がッ!」
女性が片手を軽く挙げて何かを合図すると、俺たちを囲んでいる奴らの一部が奇跡の詠唱を唱え始め、剣や槍などの武器を持った奴らが突っ込んできた。
「主よ、殲滅の許可を」
そう言って俺より前に出るリンネスとマカ。
眷属になったおかげで態度が百八十度回転して俺を慕う言葉を言い放つ彼に痒さを覚えながらも答える。
「できれば非殺傷。それぞれの判断に任せる」
「御意」
「この期に及んで殺さず、か……ずいぶん甘い主に仕えちゃったもんじゃのう」
マカもおちゃらけたことを言いつつもやる気満々でどこからともなく武器を取り出した。
アレは……レッグが俺に押し付けようとした妖刀か?
「《黒玉》」
リンネスは両手を広げ、ボーリング玉くらいの大きさがある黒く丸い玉を手の平の先に出現させる。
「《鬼狐》」
マカは左手を突き出して中指、薬指、親指をくっ付けていわゆる狐の形にしたと思ったら、彼女の全身が青い炎に包まれる。
青い炎は彼女を焼くのではなく膜を張るように周囲を燃やし続け、その一部が狐のような耳、額に鬼のような角を生やしているように見せていた。
そしてリンネスの両手にある黒い玉からは似た玉が弾幕のようにいくつも放たれ、マカも武器を数度振ってその剣先から青い炎の斬撃が飛ばされる。
それらは俺たちに向かってきていた兵士たちや奇跡を詠唱していた奴らに降り注いだ。
兵士たちの勢いは一気になくなり、奇跡の詠唱も誰も口にしなくなってしまっていた。
リンネスの言う通り俺の出番は本当にないのかもしれない。
「そういやいきなり喧嘩売ってきたけど、アイツらって誰なんだ?」
「あの女には見覚えがあります。たしか隣国の王女……名をベルナル・シア・ティアーズ。恐らくあなた様の体にあるウイルスを作った国の出身です」
ふと気になったことを呟くと、両手から弾幕を撒き散らし続けているリンネスが答えてくれた。
ちなみにマカは走って敵陣のど真ん中に斬り込んで行ってしまっている。
心配もしたけど、遠目からでも人が宙を浮いているのを見たらそんな心配もどこかへ行ってしまった。
「じゃあ、アイツが原因ってことか?」
「そこまでは……ですがその片棒を担いでいる可能性は高いかと」
じゃあ結果的に下手に出ず挑発しておいてよかったってことかな?なんて、マカとリンネスの技が人間を吹き飛ばす光景を眺めながら考えていた。
有象無象から一人の女性が前に出てきて言い放つ。勇ましい第一印象を強く残す姿をした彼女。
金色の髪をなびかせて紫色の瞳をし、大剣ほどでなくとも普通の剣より一回り大きめの剣を地面に突き刺していた。
冒険者というには服装が豪華過ぎる。恐らくあの城にいた王様の娘と似た立場の人間じゃないかと思う。
「何とか言ったらどうだ、魔物を引き連れた男!」
尋問のように責める口振りの女性。性格はやっぱり初めて会った頃のアリアや王様の娘に似て高飛車に思える。
「違うんで帰っていい?」
「いいわけないだろう、このたわけ!」
めっさ怒られた。
というか馬鹿者なんて言われて怒られたの初めてだよ。まぁ、尻尾が九本ある女性や骸骨と一緒に雑談してる怪しい奴が違うって言っても信じてもらえないよね。
……もうどうでもいいか。
「んじゃ、だとしたらなんなの?」
「何?」
ちょっと生意気な感じで聞き返したら女性の顔が血管が浮き出るくらいの鬼のような形相になってしまった。
こっわ!
え、待って本当に怖い!人間ってあんな顔できるの?昔絡まれた不良の顔より怖い!
もうあの目で睨まれただけで死ぬんじゃない俺?
なんて考えていると、その女性の口角が上がり笑みを浮かべる。
「……面白い!」
「へ?」
怒りの形相から笑いを浮かべてそう言い放つ彼女の態度と言葉に戸惑った。いや、笑ってるのは口だけで目が怖いままなんだけど。
「こうやって意思疎通ができるのなら他にも問おう!貴様は我ら人間に仇なす者か?」
それはここで戦うかという問い掛けなのだろうか。どちらにしても俺の考えはもう変わらない。
「人間でも亜種でも魔族でも変わらない。敵なら食うまでだ」
そう言って腕を捕食形態にしようとした。
しかし腕は変化する気配がなかった。
「えっ、なんで……?」
【アバターによる過剰捕食と体内に取り込んだ者の回復にウイルスを割り当てているので、捕食形態への変化は現在できません】
マジかよ……って、取り込んだ奴の回復?誰を回復してるっていうんだ?
【……約千を超える町にいたほぼ全ての住人たちです。同時に個体名「ララ」も含めています】
ララを?ララは死んだんじゃ……助かるのか!?
【肯定します。消滅寸前だったため多くの時間を要しますが】
彼女の言葉を聞いて目の前が明るくなった気がした。
ララが生きてる!? しかも殺してしまったと思ってた普通の人々まで!?
割り切ろうとしてもやっぱり多少の罪悪感はあったのだけれども、その心配がなくなったわけだ。
家や家具はまぁ……申し訳ないとは思うけれども。
そう思ったらつい笑いが零れてしまう。
「フッ、面白い……この人数を相手にできると豪語するか!」
「豪語かどうか試してみるか、小娘?」
「数で我らをとうにかできると思っているのか?お前らのようなカスなど主が出るまでもない」
相手も相手だが、マカやリンネスも荒い言葉で挑発した。、
「言うではないか、魔物風情がッ!」
女性が片手を軽く挙げて何かを合図すると、俺たちを囲んでいる奴らの一部が奇跡の詠唱を唱え始め、剣や槍などの武器を持った奴らが突っ込んできた。
「主よ、殲滅の許可を」
そう言って俺より前に出るリンネスとマカ。
眷属になったおかげで態度が百八十度回転して俺を慕う言葉を言い放つ彼に痒さを覚えながらも答える。
「できれば非殺傷。それぞれの判断に任せる」
「御意」
「この期に及んで殺さず、か……ずいぶん甘い主に仕えちゃったもんじゃのう」
マカもおちゃらけたことを言いつつもやる気満々でどこからともなく武器を取り出した。
アレは……レッグが俺に押し付けようとした妖刀か?
「《黒玉》」
リンネスは両手を広げ、ボーリング玉くらいの大きさがある黒く丸い玉を手の平の先に出現させる。
「《鬼狐》」
マカは左手を突き出して中指、薬指、親指をくっ付けていわゆる狐の形にしたと思ったら、彼女の全身が青い炎に包まれる。
青い炎は彼女を焼くのではなく膜を張るように周囲を燃やし続け、その一部が狐のような耳、額に鬼のような角を生やしているように見せていた。
そしてリンネスの両手にある黒い玉からは似た玉が弾幕のようにいくつも放たれ、マカも武器を数度振ってその剣先から青い炎の斬撃が飛ばされる。
それらは俺たちに向かってきていた兵士たちや奇跡を詠唱していた奴らに降り注いだ。
兵士たちの勢いは一気になくなり、奇跡の詠唱も誰も口にしなくなってしまっていた。
リンネスの言う通り俺の出番は本当にないのかもしれない。
「そういやいきなり喧嘩売ってきたけど、アイツらって誰なんだ?」
「あの女には見覚えがあります。たしか隣国の王女……名をベルナル・シア・ティアーズ。恐らくあなた様の体にあるウイルスを作った国の出身です」
ふと気になったことを呟くと、両手から弾幕を撒き散らし続けているリンネスが答えてくれた。
ちなみにマカは走って敵陣のど真ん中に斬り込んで行ってしまっている。
心配もしたけど、遠目からでも人が宙を浮いているのを見たらそんな心配もどこかへ行ってしまった。
「じゃあ、アイツが原因ってことか?」
「そこまでは……ですがその片棒を担いでいる可能性は高いかと」
じゃあ結果的に下手に出ず挑発しておいてよかったってことかな?なんて、マカとリンネスの技が人間を吹き飛ばす光景を眺めながら考えていた。
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