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5章
8話目 前編 密告
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「よっと。どうじゃ主様、似合っとるか?」
そう老人口調で聞いてくる振袖姿の赤髪幼女。
クルリと一回転し、あざとく可愛さアピールをしてくる。
どうしてそうなった……
「どうしてそうなったと言いたげな顔じゃの」
「マジでか。なんでわかったの?」
「そんな困った顔をしてればわかるわい。そんでその理由は簡単、貴様の生気を少しずつ吸っておったんじゃよ、こやつ。その溜めた生気を糧に成長しただけじゃ。ちなみに意識も乗っ取っておるから暴れ出す心配もないぞ」
なんだろう、言葉の情報量が多くて頭がパンクしそうよ……
「……本当にお前さんが妖刀なのか?」
「なんじゃ、信じとらんのか?だったら今ここで貴様の痴態をバラしてやろうか?そうさな、まずは武器を作ってる時に金槌で指を打ってしまい、『あぴょん!』とかいうマヌケな悲鳴を上げたことかの。他には――」
「わかった!俺が悪かった!だから勘弁してくれっ!」
黒歴史をそれなりに持っているのか、レッグが膝と共に折れてしまった。不憫だな……
「理解したようで何より」
得意げにそう言ってフンと鼻を鳴らす。
するとまた扉が勢いよく開けられる。開けたのはアリアだった。
「お食事のお時間ですわ!」
昨晩のようなネグリジェは着ておらず、寝巻きとい 言うにもワンピースやスカートなどしっかりした服装をしている。
というか早くない?出発するために起きた今の時間って4時か5時くらいだよ?
しかも朝食にしたって早いわ。
「お早い朝食ですね。いつもこの時間に食ってんの?」
「貴族の朝は早いんですのよ、習い事や稽古などをするので……その点に関しては冒険者だった時は時間に余裕があって楽しかったですわねぇ……」
冒険者だった頃の記憶を思い出してか、懐かしそうに上を見上げるアリア。
なんだろう、今の彼女から悲壮感を感じる気がする。それだけ貴族の生活は窮屈なんだろうか……
「ところでこの可愛らしい少女はどなたで?尻尾や耳があるところを見ると亜種のように見えますが……」
赤毛の幼女を見て聞いてくるアリア。
……えっ、ついさっきまで赤ん坊だったのに妖刀の意識が取り憑いて急激に成長したんだって説明するのか?面倒臭……
「よっ、おっぱいのデカイ小娘!ワシは昨日お前さんに現れた赤ん坊じゃよ。名はそうさなぁ……マカとでも名乗ろうか」
腕組みをして堂々と答える少女。
「まぁ!あの赤ちゃんがこんなに早く成長するだなんて!しかもワタクシ好みにもっと可愛らしくなってしまてますわぁ!」
「うおっ、何をするのじゃあ!?」
なぜだか急にテンションが上がり、マカを抱き寄せて頭を撫でまくるアリア。
可愛いもの好きなのは女の子らしくていいと思うが、若干暴走気味な気がするような……
そんなことを考えていると、レッグが横に寄って来て耳打ちをしてきた。
「おい、俺がドワーフだってことは内緒にしといてくれ」
「……なんだって?」
俺は意外な言葉に聞き返してしまった。
「だから俺がドワーフだって――」
「違う、聞こえてなかったわけじゃない。ドワーフだって彼女たちに伝えてないのか?」
「当たり前だ。鍛冶が上手くても結局俺は亜種、ドワーフという存在自体がレアだからバレずに済んでる……お前がさっき言ってた通りの『鍛冶ができるちっちゃなおっさん』で通してるんだ」
自分で言っちゃってるよ、この人。生きるためにプライドを捨ててるのは流石だ。
だが……
「……俺みたいな奴も受け入れてるくらいだから、バレても問題と思うんだがな」
と、本人には聞こえないくらいの小声で呟く。どうせそういう問題じゃないと思うから言わないけど。
わかっててもバレたくないことってあるよね。
そんなことを考えていたらまたまた部屋の扉が強く開けられて音が響く。
何なの、みんな部屋のドアに恨みでもあんの?それとも俺にあるの?
扉を開けたのは頭以外の甲冑を着た茶短髪の女性だった。
「アリアお嬢様!『奴ら』が来ました!」
「……奴ら?」
慌てて言った彼女の言葉に嫌な予感を感じた。
――――
俺たちはまだ寝ていたレチアたちを起こしてアリアの家の中から玄関先の門が見える部屋へと移動し、その「奴ら」の姿を窓から確認していた。
そこにはアリアの家に雇われている奴らとは違う甲冑を着た者が数十人固まっている。
何やらキラマークが描かれた国旗のようなものを掲げて物々しい雰囲気をしていた。
「奴らってのはアイツらのことか?」
一緒に部屋へ来たさっき俺たちを呼びに来た甲冑の女性にそう聞くと彼女は頷く。
「あの国旗のマーク、それに彼らの着ている甲冑は王国騎士のものです」
「なんでまた王国騎士がワタクシの家に……」
隣で覗き込んでいるアリアが不可解そうに眉をひそめて親指の爪を噛む。
どうやら王国騎士とやらの訪問は想定してなかったもののようだ。しかし真剣な顔をしながらマカの頭を未だに撫でているせいで雰囲気がぶち壊しである。
しばらく眺めているとアリアの両親が出迎えに行った。
「これはこれは、ようこそフランシス家へ。王国騎士様がどうなさいました?」
アリアパパが前に出て会釈し、王国騎士たちの方からも一人が前に出て頭の甲冑を脱ぎ、男の素顔を晒してからお辞儀をする。
「わざわざお出迎えありがとうございます、侯爵。いえ、元々別の任務でこの近くまで来ていたのですが、ある報告を耳にしまして……」
「報告?」
眉をひそめて聞き返すアリアパパ。
「えぇ……『魔族』がここにいると」
王国騎士の男は「魔族」の部分だけ強調して言ったのが聞こえてきていた。
マジかよ……
魔族の……ララがここにいると報告されただって?一体誰が……
ふと昨晩にお風呂でアリアパパとの会話を思い出すが、違うと信じたい。
「魔族ですと?まさかそんな……そもそも彼らは絶滅しているはずでは?」
「すでに通告がいってるはずです。魔族の生き残りがいる、と。その捜索を我々が引き受けてこの近隣の町を調査に来たのですが、まさにその最中にこんな手紙が届きまして……」
王国騎士の男がそう言ってアリアの両親に紙を見せた。何が書いてあるかまではわからないが――
【視力を強化します】
頭の中でアナさんのそんな一言を発すると、まるで双眼鏡でズームしたみたいになって王国騎士の男が持っている紙の内容が見えてしまう。
わーい、相変わらずの便利機能。あの騎士男のシワの数までハッキリ見えちゃう!
そして紙に書いてある内容は……
【フランシス家にて魔族確認。救援求む】
ただそれだけが書かれていた。
そう老人口調で聞いてくる振袖姿の赤髪幼女。
クルリと一回転し、あざとく可愛さアピールをしてくる。
どうしてそうなった……
「どうしてそうなったと言いたげな顔じゃの」
「マジでか。なんでわかったの?」
「そんな困った顔をしてればわかるわい。そんでその理由は簡単、貴様の生気を少しずつ吸っておったんじゃよ、こやつ。その溜めた生気を糧に成長しただけじゃ。ちなみに意識も乗っ取っておるから暴れ出す心配もないぞ」
なんだろう、言葉の情報量が多くて頭がパンクしそうよ……
「……本当にお前さんが妖刀なのか?」
「なんじゃ、信じとらんのか?だったら今ここで貴様の痴態をバラしてやろうか?そうさな、まずは武器を作ってる時に金槌で指を打ってしまい、『あぴょん!』とかいうマヌケな悲鳴を上げたことかの。他には――」
「わかった!俺が悪かった!だから勘弁してくれっ!」
黒歴史をそれなりに持っているのか、レッグが膝と共に折れてしまった。不憫だな……
「理解したようで何より」
得意げにそう言ってフンと鼻を鳴らす。
するとまた扉が勢いよく開けられる。開けたのはアリアだった。
「お食事のお時間ですわ!」
昨晩のようなネグリジェは着ておらず、寝巻きとい 言うにもワンピースやスカートなどしっかりした服装をしている。
というか早くない?出発するために起きた今の時間って4時か5時くらいだよ?
しかも朝食にしたって早いわ。
「お早い朝食ですね。いつもこの時間に食ってんの?」
「貴族の朝は早いんですのよ、習い事や稽古などをするので……その点に関しては冒険者だった時は時間に余裕があって楽しかったですわねぇ……」
冒険者だった頃の記憶を思い出してか、懐かしそうに上を見上げるアリア。
なんだろう、今の彼女から悲壮感を感じる気がする。それだけ貴族の生活は窮屈なんだろうか……
「ところでこの可愛らしい少女はどなたで?尻尾や耳があるところを見ると亜種のように見えますが……」
赤毛の幼女を見て聞いてくるアリア。
……えっ、ついさっきまで赤ん坊だったのに妖刀の意識が取り憑いて急激に成長したんだって説明するのか?面倒臭……
「よっ、おっぱいのデカイ小娘!ワシは昨日お前さんに現れた赤ん坊じゃよ。名はそうさなぁ……マカとでも名乗ろうか」
腕組みをして堂々と答える少女。
「まぁ!あの赤ちゃんがこんなに早く成長するだなんて!しかもワタクシ好みにもっと可愛らしくなってしまてますわぁ!」
「うおっ、何をするのじゃあ!?」
なぜだか急にテンションが上がり、マカを抱き寄せて頭を撫でまくるアリア。
可愛いもの好きなのは女の子らしくていいと思うが、若干暴走気味な気がするような……
そんなことを考えていると、レッグが横に寄って来て耳打ちをしてきた。
「おい、俺がドワーフだってことは内緒にしといてくれ」
「……なんだって?」
俺は意外な言葉に聞き返してしまった。
「だから俺がドワーフだって――」
「違う、聞こえてなかったわけじゃない。ドワーフだって彼女たちに伝えてないのか?」
「当たり前だ。鍛冶が上手くても結局俺は亜種、ドワーフという存在自体がレアだからバレずに済んでる……お前がさっき言ってた通りの『鍛冶ができるちっちゃなおっさん』で通してるんだ」
自分で言っちゃってるよ、この人。生きるためにプライドを捨ててるのは流石だ。
だが……
「……俺みたいな奴も受け入れてるくらいだから、バレても問題と思うんだがな」
と、本人には聞こえないくらいの小声で呟く。どうせそういう問題じゃないと思うから言わないけど。
わかっててもバレたくないことってあるよね。
そんなことを考えていたらまたまた部屋の扉が強く開けられて音が響く。
何なの、みんな部屋のドアに恨みでもあんの?それとも俺にあるの?
扉を開けたのは頭以外の甲冑を着た茶短髪の女性だった。
「アリアお嬢様!『奴ら』が来ました!」
「……奴ら?」
慌てて言った彼女の言葉に嫌な予感を感じた。
――――
俺たちはまだ寝ていたレチアたちを起こしてアリアの家の中から玄関先の門が見える部屋へと移動し、その「奴ら」の姿を窓から確認していた。
そこにはアリアの家に雇われている奴らとは違う甲冑を着た者が数十人固まっている。
何やらキラマークが描かれた国旗のようなものを掲げて物々しい雰囲気をしていた。
「奴らってのはアイツらのことか?」
一緒に部屋へ来たさっき俺たちを呼びに来た甲冑の女性にそう聞くと彼女は頷く。
「あの国旗のマーク、それに彼らの着ている甲冑は王国騎士のものです」
「なんでまた王国騎士がワタクシの家に……」
隣で覗き込んでいるアリアが不可解そうに眉をひそめて親指の爪を噛む。
どうやら王国騎士とやらの訪問は想定してなかったもののようだ。しかし真剣な顔をしながらマカの頭を未だに撫でているせいで雰囲気がぶち壊しである。
しばらく眺めているとアリアの両親が出迎えに行った。
「これはこれは、ようこそフランシス家へ。王国騎士様がどうなさいました?」
アリアパパが前に出て会釈し、王国騎士たちの方からも一人が前に出て頭の甲冑を脱ぎ、男の素顔を晒してからお辞儀をする。
「わざわざお出迎えありがとうございます、侯爵。いえ、元々別の任務でこの近くまで来ていたのですが、ある報告を耳にしまして……」
「報告?」
眉をひそめて聞き返すアリアパパ。
「えぇ……『魔族』がここにいると」
王国騎士の男は「魔族」の部分だけ強調して言ったのが聞こえてきていた。
マジかよ……
魔族の……ララがここにいると報告されただって?一体誰が……
ふと昨晩にお風呂でアリアパパとの会話を思い出すが、違うと信じたい。
「魔族ですと?まさかそんな……そもそも彼らは絶滅しているはずでは?」
「すでに通告がいってるはずです。魔族の生き残りがいる、と。その捜索を我々が引き受けてこの近隣の町を調査に来たのですが、まさにその最中にこんな手紙が届きまして……」
王国騎士の男がそう言ってアリアの両親に紙を見せた。何が書いてあるかまではわからないが――
【視力を強化します】
頭の中でアナさんのそんな一言を発すると、まるで双眼鏡でズームしたみたいになって王国騎士の男が持っている紙の内容が見えてしまう。
わーい、相変わらずの便利機能。あの騎士男のシワの数までハッキリ見えちゃう!
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