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5章
5話目 前編 魔族の力
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「どうせならレチアたちも訓練をしてみるか?」
「「えっ」」
ようやく落ち着いたと思ったらララが急にそんなことを言い出し始める。
「急に何を言い出すんだ?」
「急というほど突然じゃないだろう。もしこの場を貸してもらえるのならば都合が良いからな」
ララが黒い目でアリアの両親を見ると彼らは頷いてくれた。
「構いませんよ。この人たちの相手をしてくださったんですから。それに娘の恩人への些細な恩返しの一つです」
快諾してくれたことで使用可能となった訓練場へ立つ。
少し離れたところではアリア家族と甲冑の男たちが見学する形でこっちを見ているた。男たちは戒めのためか未だに正座中である。
「で、訓練って何するんだよ?」
「力の使い方だ」
「力の?剣とか槍とか武器のか?」
「いいや、違う。魔族が使う力……人間で言うところの『奇跡』というのが一番近い」
ララはそう言うと右手に黒い炎のようなものを宿し、その手で近くの大剣を持つとその刃にも炎が伝う。
白い刃だった大剣はみるみる黒くなり、しかし斬れ味が落ちたとは思えない輝きを魅せていた。
「んにゃ?でもそれって魔族にしか使えないんじゃなかったかにゃ?」
「いいや、使えないこともない。人間や亜種にも伝わってるはずだ……禁忌の術として」
「禁忌って……危険な技ってことか?」
俺がそう言うとララは首を横に振る。
「危険はない。ただ人間が勝手に危険だと決め付けているに過ぎない。人間は奇跡を『神からの寵愛』と考え、神聖化している。だから奇跡は教会でしか発現させることができないんだ。一方我らが使うこの技術は努力で誰でも使うことができる。もちろん神なんて曖昧な存在になど頼らずともな」
「つまりアレか、見た目の邪悪さも相まってララのソレは……魔族の力ってのは悪魔と取引して得た力だとでも思われてんのか?」
「だろうな。それに魔族の姿自体、異形が多い。ゆえに他種族から避難されやすく、この技も誤解されて伝わってしまったのだ」
見た目が嫌だからって拒絶しててその技術すら取り入れなかったとか損なことしてるな。
「だがある意味、良かったと考えるべきか。技術だけ盗まれて裏切られるよりもマシだったと」
「ポジティブって言っていいのか微妙な考え方だな……」
俺がそう言うとララは軽く笑う。
「でもそれって本当に僕たちも使えるのかにゃ?だってその技って結局、魔族以外使ったことないんじゃにゃーか?」
「いるにはいる。正確には「いた」と言うべきか。ただその者たちは国や種族から追放されたりしているため大きくは公表していないだけだ」
「公表したところで信じる奴がどれだけいるかって話にもなるけどな」
自分に都合の良い情報は鵜呑みにするが、今まで悪と断定してきたものをすぐに受け入れられないのが人間だ。
もし魔族の力を使う人間が現れようものなら魔女裁判並に言いがかりをつけられるのがオチだろう。
「まぁ、聞くより実践が早いだろう。というより、イクナはもう実践しているぞ」
「え……」
「……あっ、あの賊を倒した時のかにゃ?」
レチアの言葉でカノンたちを助けた時の状況を思い出して俺も「あぁ」と声を漏らす。
「凄い技だったよな。イクナの手から竜巻みたいなのが出て」
「その時、人間が奇跡を発動する時のような呪文は詠唱しなかっただろう?」
その時の場面をもう少し鮮明に思い出し、そういえばと口にする。
「詠唱は必要とせず、なおかつ攻撃技に関しては人間の奇跡のどれよりも絶大な威力を持ち、防御面でも役に立つ。力の使い方次第では炊事洗濯だって自分の体一つでどうにでもなる」
そう言って黒くなった大剣を素早く振り回すララ。
気のせいか武器の扱いが達者になってる気がする……というか絶対に上手くなってる。
魔王になる前までは大剣に振り回されていたのが素人の俺でもわかっていたが、今は完全に使いこなしてるように見えた。
「……あっ」
やってしまった感のある言葉を漏らしたララの振り回していた大剣から斬撃っぽい風圧が飛び、俺たちの間を通って後ろの外壁を壊しやがりました。
「何やってんだ……」
「いやすまん。記憶を取り戻してから武器を振るのは久しぶりだったものでな……つい力加減を忘れてしまった。許せ」
「いや、なんで謝る側が上から目線なの?むしろアリアの家族に俺たち全員が土下座しなきゃいけないレベルだよね?なんだったら俺一人だけでも地面に頭が埋まるくらい土下座しに行くよ?」
会社勤め十年の経験の中で後輩が取引先でやらかして萎縮してしまったそいつの代わりに俺が謝りに行ったのだが、その時に全力で頭を地面に擦りながら土下座したことがあった。
頭から血を出すほどの土下座に、最初は怒っていた取引相手も引き顔になってすぐ許してくれたのだ。
ようは勢いである。
その相手が血を見慣れてるヤクザや極道でない限り有効なはずだ。
「いや、いいんだ!むしろ凄いものを見せてもらったと思ってるよ」
「そうねぇ、あんな細い腕で大きな剣を振り回して壁まで壊せちゃうなんて……魔族って凄いのね~」
素直に感心している様子のアリアパパと、頬に手を当てて「あら~」とのんきな感想を口にするアリアママ。アリアママの方はなんでそんな急に箱入り娘みたいな感じになってんのん?
「というかそれでいいのか、あんたらは……」
自分ちの壁を壊されたのにその感想って……流石はお金持ちか。
「「えっ」」
ようやく落ち着いたと思ったらララが急にそんなことを言い出し始める。
「急に何を言い出すんだ?」
「急というほど突然じゃないだろう。もしこの場を貸してもらえるのならば都合が良いからな」
ララが黒い目でアリアの両親を見ると彼らは頷いてくれた。
「構いませんよ。この人たちの相手をしてくださったんですから。それに娘の恩人への些細な恩返しの一つです」
快諾してくれたことで使用可能となった訓練場へ立つ。
少し離れたところではアリア家族と甲冑の男たちが見学する形でこっちを見ているた。男たちは戒めのためか未だに正座中である。
「で、訓練って何するんだよ?」
「力の使い方だ」
「力の?剣とか槍とか武器のか?」
「いいや、違う。魔族が使う力……人間で言うところの『奇跡』というのが一番近い」
ララはそう言うと右手に黒い炎のようなものを宿し、その手で近くの大剣を持つとその刃にも炎が伝う。
白い刃だった大剣はみるみる黒くなり、しかし斬れ味が落ちたとは思えない輝きを魅せていた。
「んにゃ?でもそれって魔族にしか使えないんじゃなかったかにゃ?」
「いいや、使えないこともない。人間や亜種にも伝わってるはずだ……禁忌の術として」
「禁忌って……危険な技ってことか?」
俺がそう言うとララは首を横に振る。
「危険はない。ただ人間が勝手に危険だと決め付けているに過ぎない。人間は奇跡を『神からの寵愛』と考え、神聖化している。だから奇跡は教会でしか発現させることができないんだ。一方我らが使うこの技術は努力で誰でも使うことができる。もちろん神なんて曖昧な存在になど頼らずともな」
「つまりアレか、見た目の邪悪さも相まってララのソレは……魔族の力ってのは悪魔と取引して得た力だとでも思われてんのか?」
「だろうな。それに魔族の姿自体、異形が多い。ゆえに他種族から避難されやすく、この技も誤解されて伝わってしまったのだ」
見た目が嫌だからって拒絶しててその技術すら取り入れなかったとか損なことしてるな。
「だがある意味、良かったと考えるべきか。技術だけ盗まれて裏切られるよりもマシだったと」
「ポジティブって言っていいのか微妙な考え方だな……」
俺がそう言うとララは軽く笑う。
「でもそれって本当に僕たちも使えるのかにゃ?だってその技って結局、魔族以外使ったことないんじゃにゃーか?」
「いるにはいる。正確には「いた」と言うべきか。ただその者たちは国や種族から追放されたりしているため大きくは公表していないだけだ」
「公表したところで信じる奴がどれだけいるかって話にもなるけどな」
自分に都合の良い情報は鵜呑みにするが、今まで悪と断定してきたものをすぐに受け入れられないのが人間だ。
もし魔族の力を使う人間が現れようものなら魔女裁判並に言いがかりをつけられるのがオチだろう。
「まぁ、聞くより実践が早いだろう。というより、イクナはもう実践しているぞ」
「え……」
「……あっ、あの賊を倒した時のかにゃ?」
レチアの言葉でカノンたちを助けた時の状況を思い出して俺も「あぁ」と声を漏らす。
「凄い技だったよな。イクナの手から竜巻みたいなのが出て」
「その時、人間が奇跡を発動する時のような呪文は詠唱しなかっただろう?」
その時の場面をもう少し鮮明に思い出し、そういえばと口にする。
「詠唱は必要とせず、なおかつ攻撃技に関しては人間の奇跡のどれよりも絶大な威力を持ち、防御面でも役に立つ。力の使い方次第では炊事洗濯だって自分の体一つでどうにでもなる」
そう言って黒くなった大剣を素早く振り回すララ。
気のせいか武器の扱いが達者になってる気がする……というか絶対に上手くなってる。
魔王になる前までは大剣に振り回されていたのが素人の俺でもわかっていたが、今は完全に使いこなしてるように見えた。
「……あっ」
やってしまった感のある言葉を漏らしたララの振り回していた大剣から斬撃っぽい風圧が飛び、俺たちの間を通って後ろの外壁を壊しやがりました。
「何やってんだ……」
「いやすまん。記憶を取り戻してから武器を振るのは久しぶりだったものでな……つい力加減を忘れてしまった。許せ」
「いや、なんで謝る側が上から目線なの?むしろアリアの家族に俺たち全員が土下座しなきゃいけないレベルだよね?なんだったら俺一人だけでも地面に頭が埋まるくらい土下座しに行くよ?」
会社勤め十年の経験の中で後輩が取引先でやらかして萎縮してしまったそいつの代わりに俺が謝りに行ったのだが、その時に全力で頭を地面に擦りながら土下座したことがあった。
頭から血を出すほどの土下座に、最初は怒っていた取引相手も引き顔になってすぐ許してくれたのだ。
ようは勢いである。
その相手が血を見慣れてるヤクザや極道でない限り有効なはずだ。
「いや、いいんだ!むしろ凄いものを見せてもらったと思ってるよ」
「そうねぇ、あんな細い腕で大きな剣を振り回して壁まで壊せちゃうなんて……魔族って凄いのね~」
素直に感心している様子のアリアパパと、頬に手を当てて「あら~」とのんきな感想を口にするアリアママ。アリアママの方はなんでそんな急に箱入り娘みたいな感じになってんのん?
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