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3章
2話目 中編 交渉
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俺はチェスターと別れた後、この町で泊まっている宿屋へ戻った。
ガチャッと自室の扉を開くと真っ先にイクナが勢いよく飛び付いてくる。
「ア!」
「おぉ、どうした?」
俺はそのダイブを受け止め、イクナの頭を撫でる。
イクナが気持ち良さそうに撫でている手に頭を擦り付けていると、彼女の後ろから黒猫を肩に乗せたレチアがやってきた。
「依頼は終わらせてきたにゃ?」
誰もいない部屋では語尾を「にゃ」と猫化させて話すレチア。
そしてプルンと揺れる彼女の大きな胸に目がいってしまうのは男の性である……
「終わり、というか継続的な感じで続くことになった。しかもかなりの額を貰えるらしい」
「えっ、それって……?」
レチアが驚いた表情で俺の顔を見てくる。
「まぁ、いつまで続くかわからねえし、安定とまではいかないかもしれないが……とりあえずちゃんとした収入源をゲットだ」
「やったじゃにゃいか!いくら依頼をいくつも掛け持ちしてても厳しかったからにゃあ……その日暮しの生活とはオサラバだにゃ?」
嬉しそうに言うレチアだが、俺はそれに首を横に振って否定する。
「たしかにまとまった金はいくらか入るが、贅沢な暮らしはまだできねえよ」
「な、なんでにゃ?装備だってまだ使えるし、そんな大きな出費をする予定にゃんて――あっ……」
困惑していたレチアだったが、俺が何にその大金を当てようとしているのかすぐに思い当たったようだ。
「そうだ、俺たち……正確にはお前を買い取った俺には借金がある。月々に一定の料金さえ払っていれば問題ないが、どうせ払えるんならできる限り払っちまおうってことだよ」
「ご、ごめんにゃ……」
途端に落ち込んでしまったレチア。
彼女を見て俺は苦笑する。
「謝るなって、俺は別に後悔はしてないから」
「……ヤタはお人好し過ぎるにゃ」
レチアもまた苦笑して溜息を零す。
たしかに。
人を助けるため……しかも仕方がないとはいえ、自分を貶めた奴を借金を負ってまで助けるなんて普通はしないだろうな。
「……にゃははははは」
「ははっ……」
俺たちの間では不思議な空気になり、お互い自然と笑いが込み上げてきた。
間で俺の腰に抱き着いているイクナは、そんな俺たちを交互に見て一緒に笑い始める。
別の世界に飛ばされ、人間の体じゃなくなり、そして借金まで抱えてしまったが、こうやって一緒にいてくれる仲間がいるってだけで俺は今少しだけ幸せを感じられた。
そしてふとララのことを思い出し、彼女にも伝えることにした。
「ところでさっき、依頼場所でララを見たぞ」
「……ララちが?」
「ああ……へぶっ」
レチアの聞き返しに頷くと彼女から素早くビンタされた。
レチアの肩に乗っていた黒猫は驚いて部屋の隅に逃げてしまう。
「なんで連れて帰って来ないにゃ!」
「り、理不尽……」
その後も何回か殴られる。
なんか俺、痛みを感じないからってサンドバックにされてない?体は痛くないけど心が痛いよぉ……
しばらくして落ち着いたところで事情を話した。
「んで、金が無くなったララを依頼主を雇ってる人が拾ったってわけだ」
「はぁ、ララちも後先考えないんにゃね……みんな計画性がないにゃ」
経緯はどうであれ、奴隷になってる奴が言うと説得力を感じない。
もしくはこう返すしかないだろう。
「類は友を呼ぶんだろうよ」
「どういう意味にゃ?」
「似たもの同士が集まるぶはぁっ!」
意味を知ってて聞き返したのかは知らないけれど、俺が答えるのと同時にレチアが腹へ蹴りを入れてきた。
まぁ、痛くないからすぐ立ち上がるけれど。
「なんかそうやって平然と立ち上がられると腹立つにゃ」
「何もしてないのにヘイトが集まるとか無茶言うなよ。泣くを通り越してから360度回って大泣きしちまうじゃねえか」
というかむしろそんな体質なら、大盾持ってタンク役とかで活躍できるんじゃないか?……俺自身が耐えられる自信皆無だという欠点を除けば。
「ララちは僕たちを追いかけて来たんにゃよね?どうするにゃ?」
「どうするって言われてもな……まだあいつが俺たちを追いかけてきたとは限らないし……」
「まだその口はそんなこと言うにゃか、この偏屈者め!このっ!このっ!」
今度はさっきの殴りや蹴りと違って軽めのチョップをしてくる。
ただ、俺の方が背が高いせいでレチアがジャンプしながらやっているため、彼女のボインボインが目の前でバルンバルン揺れ跳ねるので凄く目を引いてしまうのである。
「当たり前だ。ララが数年も住んでた町から出て俺たちについてくる意味がわからん。たまたま偶然こっちに用事があったのかもしれないって考えの方が自然だろ?」
「なんでそんなひねくれた考えが出てくるんにゃか……」
レチアは呆れて溜息を漏らしてそう言う。悪かったな、ひねくれた性格で。
ガチャッと自室の扉を開くと真っ先にイクナが勢いよく飛び付いてくる。
「ア!」
「おぉ、どうした?」
俺はそのダイブを受け止め、イクナの頭を撫でる。
イクナが気持ち良さそうに撫でている手に頭を擦り付けていると、彼女の後ろから黒猫を肩に乗せたレチアがやってきた。
「依頼は終わらせてきたにゃ?」
誰もいない部屋では語尾を「にゃ」と猫化させて話すレチア。
そしてプルンと揺れる彼女の大きな胸に目がいってしまうのは男の性である……
「終わり、というか継続的な感じで続くことになった。しかもかなりの額を貰えるらしい」
「えっ、それって……?」
レチアが驚いた表情で俺の顔を見てくる。
「まぁ、いつまで続くかわからねえし、安定とまではいかないかもしれないが……とりあえずちゃんとした収入源をゲットだ」
「やったじゃにゃいか!いくら依頼をいくつも掛け持ちしてても厳しかったからにゃあ……その日暮しの生活とはオサラバだにゃ?」
嬉しそうに言うレチアだが、俺はそれに首を横に振って否定する。
「たしかにまとまった金はいくらか入るが、贅沢な暮らしはまだできねえよ」
「な、なんでにゃ?装備だってまだ使えるし、そんな大きな出費をする予定にゃんて――あっ……」
困惑していたレチアだったが、俺が何にその大金を当てようとしているのかすぐに思い当たったようだ。
「そうだ、俺たち……正確にはお前を買い取った俺には借金がある。月々に一定の料金さえ払っていれば問題ないが、どうせ払えるんならできる限り払っちまおうってことだよ」
「ご、ごめんにゃ……」
途端に落ち込んでしまったレチア。
彼女を見て俺は苦笑する。
「謝るなって、俺は別に後悔はしてないから」
「……ヤタはお人好し過ぎるにゃ」
レチアもまた苦笑して溜息を零す。
たしかに。
人を助けるため……しかも仕方がないとはいえ、自分を貶めた奴を借金を負ってまで助けるなんて普通はしないだろうな。
「……にゃははははは」
「ははっ……」
俺たちの間では不思議な空気になり、お互い自然と笑いが込み上げてきた。
間で俺の腰に抱き着いているイクナは、そんな俺たちを交互に見て一緒に笑い始める。
別の世界に飛ばされ、人間の体じゃなくなり、そして借金まで抱えてしまったが、こうやって一緒にいてくれる仲間がいるってだけで俺は今少しだけ幸せを感じられた。
そしてふとララのことを思い出し、彼女にも伝えることにした。
「ところでさっき、依頼場所でララを見たぞ」
「……ララちが?」
「ああ……へぶっ」
レチアの聞き返しに頷くと彼女から素早くビンタされた。
レチアの肩に乗っていた黒猫は驚いて部屋の隅に逃げてしまう。
「なんで連れて帰って来ないにゃ!」
「り、理不尽……」
その後も何回か殴られる。
なんか俺、痛みを感じないからってサンドバックにされてない?体は痛くないけど心が痛いよぉ……
しばらくして落ち着いたところで事情を話した。
「んで、金が無くなったララを依頼主を雇ってる人が拾ったってわけだ」
「はぁ、ララちも後先考えないんにゃね……みんな計画性がないにゃ」
経緯はどうであれ、奴隷になってる奴が言うと説得力を感じない。
もしくはこう返すしかないだろう。
「類は友を呼ぶんだろうよ」
「どういう意味にゃ?」
「似たもの同士が集まるぶはぁっ!」
意味を知ってて聞き返したのかは知らないけれど、俺が答えるのと同時にレチアが腹へ蹴りを入れてきた。
まぁ、痛くないからすぐ立ち上がるけれど。
「なんかそうやって平然と立ち上がられると腹立つにゃ」
「何もしてないのにヘイトが集まるとか無茶言うなよ。泣くを通り越してから360度回って大泣きしちまうじゃねえか」
というかむしろそんな体質なら、大盾持ってタンク役とかで活躍できるんじゃないか?……俺自身が耐えられる自信皆無だという欠点を除けば。
「ララちは僕たちを追いかけて来たんにゃよね?どうするにゃ?」
「どうするって言われてもな……まだあいつが俺たちを追いかけてきたとは限らないし……」
「まだその口はそんなこと言うにゃか、この偏屈者め!このっ!このっ!」
今度はさっきの殴りや蹴りと違って軽めのチョップをしてくる。
ただ、俺の方が背が高いせいでレチアがジャンプしながらやっているため、彼女のボインボインが目の前でバルンバルン揺れ跳ねるので凄く目を引いてしまうのである。
「当たり前だ。ララが数年も住んでた町から出て俺たちについてくる意味がわからん。たまたま偶然こっちに用事があったのかもしれないって考えの方が自然だろ?」
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レチアは呆れて溜息を漏らしてそう言う。悪かったな、ひねくれた性格で。
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