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2章

1話目 中編 奇妙な少女

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「ちょ……ちょっとー!無視しないでニ、そこの目の腐った男子一人と体格大きめの大剣持った女子一人とフードの子一人!」

 ピンポイントで俺たちパーティの特徴を言って呼び止めてきやがったよ、チクショウ!
 仕方無く振り返ると、こっちに走ってくる少女がいた。

「やー、やっと止まってくれたニ?女の子が声をかけてるのに、無視するなんて酷い二!」

 不思議な語尾を付ける少女が俺たちの前で止まり、中腰になって軽い敬礼のようなものをしてポーズを取る。あざとい……
 彼女の見た目は特徴的で、妙に両サイド二箇所が盛り上がったニット帽を被り、ショートの白髪と赤い瞳をしていた。
 身長は……百三十から百四十くらいだろうか?かなり低いことから年齢も幼いと思いたかったが……それを否定する「もの」が彼女に付いていた。
 ご立派な胸……しかも大きさも普通じゃない。
 「巨」なんて生易しい文字では表せない。
 爆乳?いや、違う。
 現実ではありえない大きさをしたソレは、もはや魔乳と言う他ない。
 とにかく、成人女性ですらそうそう持ちえないであろう……まさにスイカと言っても相違ない大きさのバストを彼女はその小さい身に宿していた。
 ロリ巨乳なんて言葉はアニメや漫画などではたまに見かけたが、彼女のような不相応なアンバランスの場合はロリ「魔」乳がぴったりだと思う。
 だから俺はつい言葉に出してしまった。

「デカ――ぐぶっ!?」

 あまりにも異常な乳に反射的なリアクションをした直後、それを予測していたかのように横にいたララから素早い蹴りが炸裂し、俺は勢いよく吹き飛んでしまった。

「うわー……凄い勢いで飛んでったけど、大丈夫二?」

 吹き飛ばされた先の茂みに頭を突っ込んでいると、彼女の心配してくる声が聞こえてくる。
 ララの奴……俺が死なない体になったからって手加減抜きでやってないか?まぁ、痛みを感じないからいいんだけどさぁ……
 

「ああ、問題無い。最近じゃ、よくやるやり取りだ……それよりも俺たちに何か用か?」
「あ、そう二!さっきギルドで聞いちゃったけど、君たち鉱山に行く二?僕もそこの近くで用のある依頼を受けた二。だから一緒に行こうと思って声をかけたんだけど……迷惑だった二?」

 彼女は俺のとこまで来てそう言うと、低身長を駆使してうるうるさせた目で上目遣いをしてくる。
 その言動にドキッとしてしまうが、ここで簡単に頷いてはいけない。
 ここには三人もいるのに、わざわざ男の俺に色仕掛けで許可を貰おうとするということは、何か裏があるってことだ。
 つまりこれはハニートラップ……そう簡単に引っかかってたまるかよ!

「……い、いや、別に……迷惑ってわけじゃないけど……」

 俺は目を逸らしながら、どもった返事をしてしまった。しかもその逸らした視線は自然と彼女の奇乳に目がいってしまっていた……
 ああ、やめて!腕でその大きな胸を挟んで強調させないで!男だから反応しちゃうから!
 すると俺の返事を聞いた彼女は、嬉しそうに飛び跳ねて喜んだ。

「本当二!?やった!あたしって他の人からもパーティに入れてもらえなくて困ってた二!助かった二!」

 飛び跳ねる度に彼女の大きな胸が揺れる揺れる。め、目が離せない……!
 というか、ララがなぜかものっそい俺を睨んできてて怒ってるっぽいから……めっちゃ怖いから!
 今はイクナがなぜか彼女に絡み付いていて動けない様子だったが、そうじゃなかったら今頃俺は追撃を食らっていただろう……

「僕はレチア、階級は見習い二!」
「俺はヤタ、階級は……たしか駆け出しだったか?あっちにいる背の高い方がララ、外套被ってるのがイクナだ。イクナはさっき登録したばかりだから俺と同じ駆け出しで、ララは……最近知り合ったばかりだから知らないな」

 自身のに加え、喋れない彼女たちの紹介もするとレチアは誇らしげに胸を張り、その魔乳を前へと突き出す。

「それじゃ、少なくとも僕は君とイクナちゃんの先輩ってことだ二!これからよろしく二!」

 気さくにそう言って握手を求めてくるレチア。
 彼女のようにグイグイ引っ張ってくれそうな人種はコミュ障の俺にとってありがたいが……十歳どころか二十以上離れてそうな少女に、というのは些か抵抗がある。

「その……ずいぶんしっかりしてるようだけど、年齢を聞いてもいいか……?」

 「女性に年齢のことを聞くのは失礼」というのは重々承知で問いかけてみる。嫌と言われればすぐに引き下がるつもりだったが……

「歳二?僕は十八だ二」
「……マジか」

 明らかに幼女レベルの外見をしたレチアが成人直前だったとは……
 しかしその事実に俺も驚いたのだが、それ以上に離れたところで聞いていたララが口を開けっ放しにして固まってしまっていた。

「先に聞いておきたいんだけど、ヤタ君とイクナちゃんの武器は何二?」

 レチアと共に鉱山を目指し始めた時、そんなことを聞かれた。

「俺は短剣だ。イクナは……素手だ」
「素手?ふーん……女の子なのに珍しい二」

 そう言ってレチアはイクナを見る。イクナは少し警戒するようにララの後ろへと隠れた。
 アイカさんから聞いた話だと、武器を持たない素手というのはレチアの言う通り珍しいだが、逆に言うといないわけではないらしい。判定の結果、イクナがソレだったとのこと。
 運動音痴に似た「武器音痴」という癖のある奴がたまにいるらしく、そいつに合った格闘家という冒険者階級もあるようだ。
 しかし女性で素手というのはさらに稀有で、注目を集めやすくなってしまうだろうから気を付けてほしいと言われた。
 特にイクナはワケありだ。事情を知ってる奴ならともかく、知らない奴に興味を持たれて正体がバレてしまったら、また批難されてしまうだろう。

「それはそうとレチアはどんな武器を使うんだ?」
「よくぞ聞いてくれた二!何を隠そう僕は……ヤタと同じ短剣二!刮目せよ、この神々しさを……二!」

 レチアはおもむろに自らの胸に手を突っ込んだ。その唐突な行動に、俺は思わずそこに視線が釘付けになってしまう。

「ぶっ!?」

 そしてララにぶたれた。親にもぶたれたことないのに!
 ……うん、ないよ?殴る価値もないって言われるくらいに。
 俺、何もしてないはずなのに、なんでそんな言われなきゃならないんだろうか……なんて、もう家族の一人すらいないんだから気にしなくていいんだけどね。
 改めて彼女の掲げたものを見ると、俺のものとは全く違う形状をした短剣だった。
 たしかに俺の短剣も戦闘用だから向こうで日常的に見ることはない形状だが、レチアのはもっと刺々しくファンタジーらしく、まるでモンスターをハントするゲームのようにカッコイイ武器だった。
 俺が中学生だったら「見せて!」から「ちょーだい!」の流れは必須。そして嫌われるまである。
 しかし大人の俺はそんなことしない。

「少し触らせてもらっても?」

 でも見たいものは見たい。人間は好奇心に逆らえないのだよ。

「いい二!」

 意外と簡単に了承して差し出してくれる。あらやだ、この子簡単に騙されちゃいそうで心配だわ!
 なんて思いながら差し出してくれた短剣を持つ。

「軽い……」
「だ二?」

 レチアから受け取った瞬間、ただでさえ軽い短剣よりも重さを感じなかった。
 しかも大きさは通常の短剣と剣士などが使う長剣との中間くらいだ。
 こんな大きさをスプーンでも持ってるかのような重量で振り回せるなんて……チートとまではいかなくとも、十分課金武器じゃねえか。
 しかしこうも軽いと攻撃力の方が心配になってくるな……こんなんで戦えるのか?

「ぬっふっふ、こんな軽い武器で武器で戦えるのか?って顔をしてるね!」

 ……心を読まれると、思いの外ゾッとするね。

「だが安心召されよ二!……えっとね――」

 自信満々にそう言うレチアはキョロキョロと当たりを見渡し、二匹のゴブリンを見付ける。
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