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1章

8話目 中編 腐り探し

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☆★☆★
 ~イグラスの町、協会本部にて~

「ウルクさん!ウルクさんはいるか!?」

 そこに厳つい風貌をしたグラッツェが焦った様子で駆け込み、受け付けまで行って問う。
 その様子にアイカが目を見開いて驚いてしまっていた。

「ま、待ってくださいグラッツェ様!一体どうしたというのです……!?」
「どうしたもこうしたもねえ!大黒森の依頼関係全ての難易度を引き上げてくれ!このままだと犠牲者が……」
「何事だ」

 騒ぎを聞き付けたウルクがその場に現れ、グラッツェの肩に手を置いて落ち着かせようとする。

「う、ウルクさん!あの、その……」
「落ち着け。一度深呼吸して、あったことを順番に話せ」

 ウルクに諭されたグラッツェが言われた通りに呼吸を整え、落ち着いたところで話を切り出す。

「……駆け出しが手を出しやすいレベルだった大黒森に「パペティ」が現れました」
「何!?」

 ウルクの驚きに同調するように、周囲の冒険者たちがざわめく。

「パペティは通常廃墟などを好む人形型をした魔物……森に生息するとは考え辛いのですが……」

 アイカがそう言うとグラッツェが神妙に頷く。

「だからおかしいんだ。周囲に民家なんてない大黒森にそんな魔物が現れるなんてよぉ……」
「それに、今日そこには……」

 ヤタたちを見送ったことを思い出すアイカたち。

「今すぐ調査隊を編成!職員各員に通達し招集、町の冒険者全員にも即時連絡!これから依頼に向かった冒険者二名の捜索、及び大黒森の異変調査を開始する!」

 ウルクの迅速な指示にアイカや受け付けにいた職員が動き出し、緊急事態ということを理解した冒険者たちも一斉に立ち上がり、それぞれ行動し始めた。

「協会本部は一時休業にするが、給料は出るからしっかり働けよ野郎ども!」
「「オォッ!!」」

 ウルクの決起させる言葉に、その場にいた男女全員が拳を上げて呼応する。
 この時、ヤタがゾンビらしきものに襲われてから一時間が経過していた……

――――

「おーい、そっちに何かあったか!?」

 協会本部の職員と冒険者が共同して捜索を始めてから一時間近くが経とうとしていた。

「いいや、何も。あるのは魔物の傷跡とかそれぐらいだ」
「こっちもだ。むしろ痕跡の一つもねえぞ」
「こっちは……うん、グロロならいたわ。元気にゆっくり活動中ね」
「真面目に探せテメェらっ!!」

 緊張感のないものから怒号まで、あらゆる声が森の中に飛び交う。
 ヤタたちの行方を追って数百人規模の隊が組まれ大黒森が捜索され始めたが、未だに進展はなかった。

「ウルクさん、ここら辺は調べ尽くしました。もう少し奥を探しませんか?」

 自らの胴と同じくらいの大きさがある大斧を背中に背負ったグラッツェがそう提案すると、茂みを探っていたウルクが立ち上がり「ふーむ」唸る。
 するとそんな彼の肩に雀のような小ささの不自然に真っ白な小鳥が止まった。

「伝い鳥か……アイカたちの班からだな。どうした?」
【…………】

 呼びかけに答えない伝い鳥に対し、ウルクたちが動きを止めて視線をソレに集まる。

「……おい?」
【……伝達。捜索対象の一名であるララ様を対象外の者一名と共に発見しました】

 伝い鳥から出たアイカの声。
 その吉報と言うべき知らせにその場にいる者が「おぉっ!」と感嘆の声を上げた。

「そうか……ヤタは?あとその対象外の者とは……?」
【いません。それともう一名は……青色の肌をした少女らしい姿をしています。人間というには少々……】

 そんな中、アイカの報告に喜びの声が静まる。

「青い肌……?『亜種』じゃないのか?」
【わかりません。どちらにしろ、今はあまり良くない状況となっていまして……】
「報告しろ」
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