24 / 196
1章
8話目 中編 腐り探し
しおりを挟む
☆★☆★
~イグラスの町、協会本部にて~
「ウルクさん!ウルクさんはいるか!?」
そこに厳つい風貌をしたグラッツェが焦った様子で駆け込み、受け付けまで行って問う。
その様子にアイカが目を見開いて驚いてしまっていた。
「ま、待ってくださいグラッツェ様!一体どうしたというのです……!?」
「どうしたもこうしたもねえ!大黒森の依頼関係全ての難易度を引き上げてくれ!このままだと犠牲者が……」
「何事だ」
騒ぎを聞き付けたウルクがその場に現れ、グラッツェの肩に手を置いて落ち着かせようとする。
「う、ウルクさん!あの、その……」
「落ち着け。一度深呼吸して、あったことを順番に話せ」
ウルクに諭されたグラッツェが言われた通りに呼吸を整え、落ち着いたところで話を切り出す。
「……駆け出しが手を出しやすいレベルだった大黒森に「パペティ」が現れました」
「何!?」
ウルクの驚きに同調するように、周囲の冒険者たちがざわめく。
「パペティは通常廃墟などを好む人形型をした魔物……森に生息するとは考え辛いのですが……」
アイカがそう言うとグラッツェが神妙に頷く。
「だからおかしいんだ。周囲に民家なんてない大黒森にそんな魔物が現れるなんてよぉ……」
「それに、今日そこには……」
ヤタたちを見送ったことを思い出すアイカたち。
「今すぐ調査隊を編成!職員各員に通達し招集、町の冒険者全員にも即時連絡!これから依頼に向かった冒険者二名の捜索、及び大黒森の異変調査を開始する!」
ウルクの迅速な指示にアイカや受け付けにいた職員が動き出し、緊急事態ということを理解した冒険者たちも一斉に立ち上がり、それぞれ行動し始めた。
「協会本部は一時休業にするが、給料は出るからしっかり働けよ野郎ども!」
「「オォッ!!」」
ウルクの決起させる言葉に、その場にいた男女全員が拳を上げて呼応する。
この時、ヤタがゾンビらしきものに襲われてから一時間が経過していた……
――――
「おーい、そっちに何かあったか!?」
協会本部の職員と冒険者が共同して捜索を始めてから一時間近くが経とうとしていた。
「いいや、何も。あるのは魔物の傷跡とかそれぐらいだ」
「こっちもだ。むしろ痕跡の一つもねえぞ」
「こっちは……うん、グロロならいたわ。元気にゆっくり活動中ね」
「真面目に探せテメェらっ!!」
緊張感のないものから怒号まで、あらゆる声が森の中に飛び交う。
ヤタたちの行方を追って数百人規模の隊が組まれ大黒森が捜索され始めたが、未だに進展はなかった。
「ウルクさん、ここら辺は調べ尽くしました。もう少し奥を探しませんか?」
自らの胴と同じくらいの大きさがある大斧を背中に背負ったグラッツェがそう提案すると、茂みを探っていたウルクが立ち上がり「ふーむ」唸る。
するとそんな彼の肩に雀のような小ささの不自然に真っ白な小鳥が止まった。
「伝い鳥か……アイカたちの班からだな。どうした?」
【…………】
呼びかけに答えない伝い鳥に対し、ウルクたちが動きを止めて視線をソレに集まる。
「……おい?」
【……伝達。捜索対象の一名であるララ様を対象外の者一名と共に発見しました】
伝い鳥から出たアイカの声。
その吉報と言うべき知らせにその場にいる者が「おぉっ!」と感嘆の声を上げた。
「そうか……ヤタは?あとその対象外の者とは……?」
【いません。それともう一名は……青色の肌をした少女らしい姿をしています。人間というには少々……】
そんな中、アイカの報告に喜びの声が静まる。
「青い肌……?『亜種』じゃないのか?」
【わかりません。どちらにしろ、今はあまり良くない状況となっていまして……】
「報告しろ」
~イグラスの町、協会本部にて~
「ウルクさん!ウルクさんはいるか!?」
そこに厳つい風貌をしたグラッツェが焦った様子で駆け込み、受け付けまで行って問う。
その様子にアイカが目を見開いて驚いてしまっていた。
「ま、待ってくださいグラッツェ様!一体どうしたというのです……!?」
「どうしたもこうしたもねえ!大黒森の依頼関係全ての難易度を引き上げてくれ!このままだと犠牲者が……」
「何事だ」
騒ぎを聞き付けたウルクがその場に現れ、グラッツェの肩に手を置いて落ち着かせようとする。
「う、ウルクさん!あの、その……」
「落ち着け。一度深呼吸して、あったことを順番に話せ」
ウルクに諭されたグラッツェが言われた通りに呼吸を整え、落ち着いたところで話を切り出す。
「……駆け出しが手を出しやすいレベルだった大黒森に「パペティ」が現れました」
「何!?」
ウルクの驚きに同調するように、周囲の冒険者たちがざわめく。
「パペティは通常廃墟などを好む人形型をした魔物……森に生息するとは考え辛いのですが……」
アイカがそう言うとグラッツェが神妙に頷く。
「だからおかしいんだ。周囲に民家なんてない大黒森にそんな魔物が現れるなんてよぉ……」
「それに、今日そこには……」
ヤタたちを見送ったことを思い出すアイカたち。
「今すぐ調査隊を編成!職員各員に通達し招集、町の冒険者全員にも即時連絡!これから依頼に向かった冒険者二名の捜索、及び大黒森の異変調査を開始する!」
ウルクの迅速な指示にアイカや受け付けにいた職員が動き出し、緊急事態ということを理解した冒険者たちも一斉に立ち上がり、それぞれ行動し始めた。
「協会本部は一時休業にするが、給料は出るからしっかり働けよ野郎ども!」
「「オォッ!!」」
ウルクの決起させる言葉に、その場にいた男女全員が拳を上げて呼応する。
この時、ヤタがゾンビらしきものに襲われてから一時間が経過していた……
――――
「おーい、そっちに何かあったか!?」
協会本部の職員と冒険者が共同して捜索を始めてから一時間近くが経とうとしていた。
「いいや、何も。あるのは魔物の傷跡とかそれぐらいだ」
「こっちもだ。むしろ痕跡の一つもねえぞ」
「こっちは……うん、グロロならいたわ。元気にゆっくり活動中ね」
「真面目に探せテメェらっ!!」
緊張感のないものから怒号まで、あらゆる声が森の中に飛び交う。
ヤタたちの行方を追って数百人規模の隊が組まれ大黒森が捜索され始めたが、未だに進展はなかった。
「ウルクさん、ここら辺は調べ尽くしました。もう少し奥を探しませんか?」
自らの胴と同じくらいの大きさがある大斧を背中に背負ったグラッツェがそう提案すると、茂みを探っていたウルクが立ち上がり「ふーむ」唸る。
するとそんな彼の肩に雀のような小ささの不自然に真っ白な小鳥が止まった。
「伝い鳥か……アイカたちの班からだな。どうした?」
【…………】
呼びかけに答えない伝い鳥に対し、ウルクたちが動きを止めて視線をソレに集まる。
「……おい?」
【……伝達。捜索対象の一名であるララ様を対象外の者一名と共に発見しました】
伝い鳥から出たアイカの声。
その吉報と言うべき知らせにその場にいる者が「おぉっ!」と感嘆の声を上げた。
「そうか……ヤタは?あとその対象外の者とは……?」
【いません。それともう一名は……青色の肌をした少女らしい姿をしています。人間というには少々……】
そんな中、アイカの報告に喜びの声が静まる。
「青い肌……?『亜種』じゃないのか?」
【わかりません。どちらにしろ、今はあまり良くない状況となっていまして……】
「報告しろ」
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる