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2章

2話目 後編 採掘

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 二つの短剣を持ち、出入り口にいる奴らに向かって走り出す。
 リーダーのいる方は数え切れないくらいいるが、こっちは五、六体。頑張れば倒せないほどじゃないだろう。
 あっちも俺が倒しにかかってきたのを理解したらしく、全員が体をくねらせて攻撃を始めた。
 縦横無尽に放たれるその攻撃は予測不能で、突っ込めばきっとタダじゃ済まない。
 だが、けれど、それでも。
 俺がやらなきゃいけないんだ。タダじゃ済まなくとも、力や技術がなくとも、痛みを感じず死から生き返った俺がやらなければ……
 それにもちろん死ぬ気はない。
 死ぬ気がなく、この数相手に生き残る自信があるから自ら実行するのだ。
 じゃなきゃ絶対やらん。
 一つしかない命を無駄にするとか絶対したくないからな。
 ……だけどその命ももうない。だから少し無茶をするくらいいいよな?
 そんな考え事をしてる間にも魔物三体の首を斬り裂いて屠る。
 なんだ、俺だってやればできるじゃねえ――

「――かっ!?」

 調子に乗っているところに、魔物の腕が勢いよく俺の腹を貫いてきた。
 油断しちまったな……だけどやっぱ痛くねえ。

「キュルルルルルル……」
「……ハッ、魔物も油断するのか?」

 力を抜いて脱力していると、魔物の上擦った声につい笑ってしまう。
 魔物が油断した隙に俺の腹に突き刺さっている腕を切り落し、俺を貫いた奴がちょうど落下する先にいるので、そのまま頭部らしき場所を短剣で突く。

「キュィィィィィィィッ!?」

 頭に短剣が刺さった魔物は悲痛な断末魔をあげる。
 中途半端に倒せなかったそいつは頭を抱えて人間のように苦しんでいるように見えた。
 ちなみに今突き刺したのは斬れないと言われた方の短剣。
 なんだ、普通に刺さるじゃんか。
 ……もしかして「斬る」ことはできないけど、「突く」ことはできるのか?
 怯んでる隙に魔物の頭に刺した短剣を掴んで固定し、もう一本の短剣で首を思いっ切り斬り裂いた。

「返せこの野郎」

 自分で刺しといて何言ってんだと言われそうなセリフを吐き、短剣に刺さりっぱなしだった魔物の頭が消滅する。
 この魔物の唯一いいところ……綺麗さっぱり消えて返り血がないことだな。
 するとそんなことを考えてる最中に残りのもう一匹に頭を殴られる。

「いだっ」

 ピシャンッと鞭で叩かれた時のようないい音が、頭上で鳴る。
 音的に普通の人が食らったら結構痛そうなんだけど……

「――っとと?」

 突然頭から液体が垂れてくる感覚がし、視界が右半分赤く染った。
 殴られた場所から血が垂れてきたらしい。かなり強く殴られたってことか……
 ――ジュル……
 すると頭の上で気持ち悪い音が鳴り、俺の右目に垂れていた血が吸い込まれるように上に戻っていく。
 この感覚は知ってる。俺が一度べラルに殺された時、体が元通りになったのだが、恐らくそれと同じ現象が今起きているのだろう。
 腹の穴もすでに塞がっている。
 言うなれば「再生」、もしくは「超回復」……死から蘇るくらいなら後者が丁度いいかな?
 というか、今思ったが服も元の状態に戻ってる。
 そういえばバラバラにされた時も、何事も無かったかのように元に戻ってるし……わざと攻撃食らっても服の心配がないとか、何それ超便利じゃん。

「やっぱ、これくらいなら平気っぽいな」

 魔物の方も俺のダメージが回復したことに驚いたのか、固まって動かなくなっていた。
 姿形だけでなく、動揺するところも人間そっくりだな。
 そのチャンスをものにするために素早く動き、そいつの首も斬る。
 前方には何もいなくなり、道が開けた。

「よし、行くぞララ――」

 ようやく希望が見えたところで振り返ると、ララはイクナを背負ったまま膝を突いて動けずにいるようだった。
 さっきのデバフがまだ効いてるのか……!?
 しかもリーダーがすぐそこまで近付いてきていて、今にも攻撃されそうになっていた。
 俺がここでどうするかなんて、もう決まってる。

「ララ、前に思いっ切り飛べっ!」

 大きめの声でそう叫ぶと、ララは素直に従い勢いよく前のめりに跳んだ。
 そして彼女の頭があった場所にヒュンッと高速で何かが通り過ぎる音がした。
 リーダーの腕だ。俺が叫ばなければ、もしかしたらララは大怪我をしていたかもしれない……だけど安心するのはまだ早い!
 俺はララたちとの間に割り込む。

「シィィィィィィィィイッ!」
「っ……!」

 鳴き声を聞くのと同時に、鋭く素早い攻撃が俺の顔面を直撃する。やっぱ攻撃が見えねえ……

「行け、ララ!走れっ!」

 俺は短剣を持った両手を前で交差して防御の体勢になりつつそう叫ぶ。
 二度目の攻撃は運良くガードしたところに来たが、その威力に俺は後方へ吹き飛ばされてしまう。

「ぐっ……だけど結果オーライ!」

 元々後退するつもりだったので、吹き飛ばされた俺はすぐに立ち上がって、そのまま振り返って走る。
 ララたちとはすぐに合流して、俺たちはその洞窟を抜けた。

「はぁ、はぁ……これだけ離れれば、もう大丈夫だろ……」

 あいつらの攻撃は速かったが、歩行速度はそうでもなかった。
 戦うとなったら脅威かもしれないが、逃げてしまえば追い付けないはず。

「……帰るか。今日は一旦戻って、体勢を立て直して足りない分をまた取りに来ようぜ……」

 自分でもわかるくらいに疲れた声で、溜息混じりにそう言う。
 ララは頷いて同意し、背中から降りたイクナが俺に抱き着いてくる。
 少し震えてる……怖かったのか。
 そりゃそうだよな、いくら強いってイクナは幼い子供なんだ。

「もう大丈夫だ、イクナ。もうあいつらはいねえから安心していいぞ」

 イクナの頭を撫でてあやす。すると抱き着く腕に力が入り、頭をぐりぐりと押し付けてきた。
 ……うん、怖いのはわかった……でもね、イクナさん?いくら痛覚がなくなってるからってそんなに力を込められると、体が千切れそうになるんですが……
 ほら、耳を澄ませばバキバキと音が鳴るよ……
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