41 / 196
1章
1章閑話 前編 モルモット
しおりを挟む
私はある日、何も聞かされないままどこかの施設に連れて来られた。
パパもママもいなくて、それがただただ怖くて、大人の人に連れていかれている間ずっと下を向いて歩いていた。
ちょっとだけ気になって横を向くと、白い服を着た大人がいっぱいいて、窓の向こうを見てる。
たまに変な動物の鳴き声とかも聞こえてもっと怖くなった。
「……ねぇ、パパとママは?」
私の手を引っ張る大人の男の人に、勇気を振り絞って聞いてみた。
するとちょっとだけ止まってこっちを見てきたけれど、すぐにまた歩き始める。
「……もう君の両親には会えないと思った方がいいよ」
男の人の言葉が頭の中でグルグル回る。意味がわからなかった。
もう会えない?りょうしんって何?パパとママには会えないってこと?なんで?
理解が追い付かないまま、ボーッとしていた私はある一つの何も無い部屋に置いていかれ、男の人はどこかへと消えてしまった。
ふと男の人と繋いでいた手を見ると、「No.197」って書かれたプレートを持っていた。ボーッとしてる間に男の人に握らされたんだと思う。
そして時間が経つにつれて悲しい気持ちが溢れ、涙がポロポロと流れ出て泣いてしまっていた。
さっきの男の人の言葉で、もう二度とパパとママには会えないと悟った私は、必死に叫んだ。声が枯れるまでずっと……
泣き叫ぶ私を慰めてくれる人は誰もいない。もうパパも……ママも……
――――
泣き過ぎていつの間にか寝てたみたいだった。
起きると少しだけ部屋の様子が変わってた。
可愛いぬいぐるみが何個も部屋のあっちこっちに置かれてる。あの男の人が慰めるつもりで持ってきてくれたのかな?
でも私はもうぬいぐるみや人形で遊ぶ趣味は卒業してるから、あまり興味はないのに……
するとこの部屋の扉がカシャッって音を立てて開いた。
ここに来た時は気付かなかったけど、凄い扉だなと思った。ぬいぐるみより、こっちを見てたら泣き止んでたかもしれない……
「やぁ、嬢ちゃん。落ち着いたかい?」
優しい声で話しかけてきたのは、優しそうな白髪のおじさんだった。おじいちゃん……かな?
思い出すとまた泣きそうになるけど、とりあえず頷いておく。
「そうか……あのね、お嬢ちゃんはおじさんたちのお仕事のお手伝いをすることになったんだ。それで君のお母さんたちに頼んで、しばらくここに住んでもらうことにしたんだ」
お仕事のお手伝い?私、何も聞かされてない……
「……会えるの?」
「え……?」
「パパとママに会えるの?違う男の人に「会えない」って言われた……」
まだショックが残っているのか、拙い言葉でそう言った。
するとおじさんは「うーん」と困ったように唸る。
それがまた私を不安にさせた。
だけどおじさんはすぐに優しい笑顔になって否定する。
「大丈夫だよ、お仕事が終わればまたお母さんたちに会える。ただその間、寂しい思いをさせちゃうと思うけど……我慢できるかい?」
それを聞いた瞬間、不安で浮ついていた私の体が落ち着いて地面についた気がした。
ホッと息を吐き、また涙が出そうになるのを我慢して私も笑おうとする。
「大丈夫!またパパとママに会えるなら、頑張る!」
必死に笑みを作って言う。
するとおじさんはさっきよりも嬉しそうな笑顔になる。
「それはよかった!それじゃあ、早速なんだけど……注射は嫌いかな?」
<hr>
お仕事を初めて次の日になった。時計も無い部屋の中にずっといるから時間感覚がわからなくなっちゃうけど、ここに来る人が教えてくれる。
ここには色んな大人の人がいて、今日は昨日とは違う大人が来た。
「ほーい、今日も注射するから大人しくしてろよー?」
なんというか……男の子みたいな喋り方をするカッコイイお姉さんだった。
赤髪で身長もここで見た男の人たちより高い。その人の綺麗な赤い目で見られると、ちょっとドキドキする……
私は注射とか結構大丈夫な方だったから、その人の言う通り大人しくしてた。
「あーん?血管どこだ……?針刺すとか繊細なもんはやっぱ苦手なんだよな……おっ、あったあった♪」
……凄く不安でしかない。
大丈夫だよね?失敗して私死なないよね?
ここに来た時とはまた違った恐さがあった。
「ほい、終わったぞ」
「あ……うん……」
注射が無事終わってホッとする。
あれ、でもなんだろう……頭がボーッとする……眠いのかな?
「ん?どうした?」
「……ううん、なんでもない。ちょっとまだ眠いだけ」
「頭が変」と言おうとしたけど、眠いだけだと思ったからそう言わなかった。
「おいおい、まだ昼だぞ?……って、こんな場所にいたら眠くなってもしょうがねえか。ならちょっとこっち来いよ」
女の人が正座になって、自分の太ももをパンパンと軽く叩く。
なんだろう……?
女の人のところまで近付くと、無理矢理寝かされた。
「えっ、えっ?」
それが唐突過ぎて女の人が何をしようとしていたのかがわからなくて混乱した。
でも頭に当たっているのが柔らかくて気持ち良い感触だった。
それが短くも離れてしまったママたちを思い出して安心して……
「寝る子は育つっていうしな。私って柔らかい方だから、枕代わりにも十分……ん?」
私はもうウトウトとしていて、目を瞑り眠ってしまう直前だった。
「ふふん、私の膝枕も捨てたもんじゃないってことだな」
女の人の得意げな声が聞こえてきた。
そしてその人に頭を優しく撫でられて、私の意識は次第に暗闇に沈んでいった。
それからどれだけの時間が過ぎたのか、わたしは目が覚めた。
目を擦って辺りを見渡すと部屋の電気は消されていて暗かっタ。あのカッコイイ女の人モいない。
誰もいないことヲ確認すると、急に寂しクなってしまった。
「パパ、ママ……アレ?」
パパとママの顔……どンな顔だッタっケ?
――――
「今日も注射するから、少し我慢しててねー」
今日も注射。
ここノ人二「大丈夫?」ト聞かレた。ナニがだろう?
私がココに来てから五日ガ経ったッテ大人ノ人が言ッテタ。
あれカラ五日……なんで私ココニいるンだっケ?
体に青い痣もアるし……ナンダカ痒イナァ……
パパもママもいなくて、それがただただ怖くて、大人の人に連れていかれている間ずっと下を向いて歩いていた。
ちょっとだけ気になって横を向くと、白い服を着た大人がいっぱいいて、窓の向こうを見てる。
たまに変な動物の鳴き声とかも聞こえてもっと怖くなった。
「……ねぇ、パパとママは?」
私の手を引っ張る大人の男の人に、勇気を振り絞って聞いてみた。
するとちょっとだけ止まってこっちを見てきたけれど、すぐにまた歩き始める。
「……もう君の両親には会えないと思った方がいいよ」
男の人の言葉が頭の中でグルグル回る。意味がわからなかった。
もう会えない?りょうしんって何?パパとママには会えないってこと?なんで?
理解が追い付かないまま、ボーッとしていた私はある一つの何も無い部屋に置いていかれ、男の人はどこかへと消えてしまった。
ふと男の人と繋いでいた手を見ると、「No.197」って書かれたプレートを持っていた。ボーッとしてる間に男の人に握らされたんだと思う。
そして時間が経つにつれて悲しい気持ちが溢れ、涙がポロポロと流れ出て泣いてしまっていた。
さっきの男の人の言葉で、もう二度とパパとママには会えないと悟った私は、必死に叫んだ。声が枯れるまでずっと……
泣き叫ぶ私を慰めてくれる人は誰もいない。もうパパも……ママも……
――――
泣き過ぎていつの間にか寝てたみたいだった。
起きると少しだけ部屋の様子が変わってた。
可愛いぬいぐるみが何個も部屋のあっちこっちに置かれてる。あの男の人が慰めるつもりで持ってきてくれたのかな?
でも私はもうぬいぐるみや人形で遊ぶ趣味は卒業してるから、あまり興味はないのに……
するとこの部屋の扉がカシャッって音を立てて開いた。
ここに来た時は気付かなかったけど、凄い扉だなと思った。ぬいぐるみより、こっちを見てたら泣き止んでたかもしれない……
「やぁ、嬢ちゃん。落ち着いたかい?」
優しい声で話しかけてきたのは、優しそうな白髪のおじさんだった。おじいちゃん……かな?
思い出すとまた泣きそうになるけど、とりあえず頷いておく。
「そうか……あのね、お嬢ちゃんはおじさんたちのお仕事のお手伝いをすることになったんだ。それで君のお母さんたちに頼んで、しばらくここに住んでもらうことにしたんだ」
お仕事のお手伝い?私、何も聞かされてない……
「……会えるの?」
「え……?」
「パパとママに会えるの?違う男の人に「会えない」って言われた……」
まだショックが残っているのか、拙い言葉でそう言った。
するとおじさんは「うーん」と困ったように唸る。
それがまた私を不安にさせた。
だけどおじさんはすぐに優しい笑顔になって否定する。
「大丈夫だよ、お仕事が終わればまたお母さんたちに会える。ただその間、寂しい思いをさせちゃうと思うけど……我慢できるかい?」
それを聞いた瞬間、不安で浮ついていた私の体が落ち着いて地面についた気がした。
ホッと息を吐き、また涙が出そうになるのを我慢して私も笑おうとする。
「大丈夫!またパパとママに会えるなら、頑張る!」
必死に笑みを作って言う。
するとおじさんはさっきよりも嬉しそうな笑顔になる。
「それはよかった!それじゃあ、早速なんだけど……注射は嫌いかな?」
<hr>
お仕事を初めて次の日になった。時計も無い部屋の中にずっといるから時間感覚がわからなくなっちゃうけど、ここに来る人が教えてくれる。
ここには色んな大人の人がいて、今日は昨日とは違う大人が来た。
「ほーい、今日も注射するから大人しくしてろよー?」
なんというか……男の子みたいな喋り方をするカッコイイお姉さんだった。
赤髪で身長もここで見た男の人たちより高い。その人の綺麗な赤い目で見られると、ちょっとドキドキする……
私は注射とか結構大丈夫な方だったから、その人の言う通り大人しくしてた。
「あーん?血管どこだ……?針刺すとか繊細なもんはやっぱ苦手なんだよな……おっ、あったあった♪」
……凄く不安でしかない。
大丈夫だよね?失敗して私死なないよね?
ここに来た時とはまた違った恐さがあった。
「ほい、終わったぞ」
「あ……うん……」
注射が無事終わってホッとする。
あれ、でもなんだろう……頭がボーッとする……眠いのかな?
「ん?どうした?」
「……ううん、なんでもない。ちょっとまだ眠いだけ」
「頭が変」と言おうとしたけど、眠いだけだと思ったからそう言わなかった。
「おいおい、まだ昼だぞ?……って、こんな場所にいたら眠くなってもしょうがねえか。ならちょっとこっち来いよ」
女の人が正座になって、自分の太ももをパンパンと軽く叩く。
なんだろう……?
女の人のところまで近付くと、無理矢理寝かされた。
「えっ、えっ?」
それが唐突過ぎて女の人が何をしようとしていたのかがわからなくて混乱した。
でも頭に当たっているのが柔らかくて気持ち良い感触だった。
それが短くも離れてしまったママたちを思い出して安心して……
「寝る子は育つっていうしな。私って柔らかい方だから、枕代わりにも十分……ん?」
私はもうウトウトとしていて、目を瞑り眠ってしまう直前だった。
「ふふん、私の膝枕も捨てたもんじゃないってことだな」
女の人の得意げな声が聞こえてきた。
そしてその人に頭を優しく撫でられて、私の意識は次第に暗闇に沈んでいった。
それからどれだけの時間が過ぎたのか、わたしは目が覚めた。
目を擦って辺りを見渡すと部屋の電気は消されていて暗かっタ。あのカッコイイ女の人モいない。
誰もいないことヲ確認すると、急に寂しクなってしまった。
「パパ、ママ……アレ?」
パパとママの顔……どンな顔だッタっケ?
――――
「今日も注射するから、少し我慢しててねー」
今日も注射。
ここノ人二「大丈夫?」ト聞かレた。ナニがだろう?
私がココに来てから五日ガ経ったッテ大人ノ人が言ッテタ。
あれカラ五日……なんで私ココニいるンだっケ?
体に青い痣もアるし……ナンダカ痒イナァ……
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説


もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる