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本当に本人?
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「スマホ……?僕こんなの知らないんだけど……」
大人の服の中にあったスマホを取り出したカズが困惑する。
持っているはずがない所有物を眺めるカズ。彼が画面を触ると多種のアプリがある画面が表示された。
「わぁ……凄い!まるで携帯ゲームみたい……ねぇ、これでゲームとかできるの?」
カズがその容姿相応に目を輝かせてそう聞くと、ヴェルネたちはクスリと笑う。
「多分……あたしたちは大人のあんたに教えてもらった立場だから使い方とかあんまりわからないんだけどね」
「ふーん……なんかそれってお年寄りみたいだね」
子供特有の残酷な言葉にヴェルネが「うっ」と声を漏らして精神的ダメージを負ってしまう。
そんな彼女の心境など察するはずもないカズはスマホの画面を触り続ける。
するとその中に――
「……これって」
「何……あっ」
カズの一言に落ち込んでいたヴェルネも彼のスマホを覗き込むとそんな気持ちもどこかへ行ってしまった。
映り込んでいたのは大人のカズとヴェルネ二人。
それは決して仲が良いとは言える雰囲気ではなく、しかしカズが一方的に抱き着いているように見える写真だった。
「この男の人……」
「それがあなたよ。今の子供の姿になる前のあなた」
「マジか。なんというか……もしかして僕ってお姉さんのこと凄い好きだった?」
そうとしか思えない写真を見たカズは顔を赤らめながらもそう聞く。
そんなカズの初心な反応を見たヴェルネは背筋がゾクゾクとしたものを感じていた。
恥ずかしがるカズをさらに恥ずかしがらせようとヴェルネは彼を自分のところに引き寄せて抱き締める。
「そうよ?『好き好きー!』って言いながらいつも抱き着いてきてたんだから。なんならあんたもそうしてくれていいのよ?」
ヴェルネはそう言ってカズから離れ、ハグを求めるように両手を広げる。
「いや、それは……だってそういうのって好きな奴同士がやるやつだろ⁉ 恋人の奴らがやるみたいな……」
「あれ、そういえばまだ言ってなかったっけ?あたしたち恋人なのよ」
「え?」
ヴェルネからあっけらかんと告げられてカズは固まってしまう。
「……僕、まだ子供なんだけど」
「そうなる前のあなたはちゃんと二十歳過ぎてたわよ?」
「え……でもそれって……」
混乱してはいるようだが、モジモジとしながらうるんだ目をヴェルネに向けていた。
その反応があまりにもヴェルネに「刺さってしまっていた」ため、じゅるりと涎を垂らして興奮してしまう。
「……ねぇ、今のあなたから見てあたしってどう?」
「どうって……」
「女性として魅力的かってこと。もし……好きだって言ってくれたらあたし的に嬉しいんだけど?」
そう言って両手を広げて返答を待ち続けるヴェルネにカズはしばらく迷っていた様子だったが、覚悟を決めたのかヴェルネに近寄って抱き締め返した。
「……好き」
「~~~ッ⁉」
彼の恥ずかしながらも素直な返答にヴェルネは予想以上に快感を覚え悶えてしまう。
「何この子、本当にカズ⁉ 凄い可愛いんだけど!」
「大丈夫です、アレ?もうすでに癖が歪んでません?」
「アレはどちらかというと母性的なものでは?」
ヴェルネの興奮具合には流石のマヤルとジークも若干の心配を覚えたのだった。
「……ねぇ、もし本当に恋人なら……あ、アレしなきゃいけない?」
「『アレ』?」
「えっと……ちゅっ、き、キス、とか?」
顔を赤くしたカズの言葉にヴェルネも彼よりも顔を赤くしてしまう。
「そ、それは流石に……恋人って言っても今のカズは子供になっちゃってるし……」
「たしかにヴェルネ様が今のカズ様とにゃんにゃんしちゃったら世間的にはヤヴァイですもんね」
言葉を伏せつつもからかう言葉を口にしたマヤルを恨めしそうにヴェルネが睨む。
「……どうしましょう。今日のヴェルネ様、初めて見せる表情ばかりで凄い面白いんですけど」
「カズ様がこのお屋敷に来てから表情が豊かになっていましたが、今日はまた一段と……」
「うるさいわよ、あんたら。こんな可愛い子が可愛いこと言ってくれたらキュンキュンきちゃうに決まってるじゃない!」
感心するジークたち二人に対してヴェルネが力説しながら抱き締めているカズの頭を撫でまくる。
「……これ、なんか恋人というよりお父さんとお母さんにされてるみたいで落ち着いてくるんだけど」
「そう?……でもこのまましてほしい?」
ヴェルネは少し残念そうにしながらもウトウトと眠そうにしていたカズに問いかけると頷く。
「……眠いならベッドに行く?」
優しく微笑むヴェルネがそう聞くとカズは目を閉じつつ首を横に振る。
「この、ままで……このままが、いい……」
そう言うとヴェルネに強くしがみつき、そのまま眠りに落ちてしまった。
「……カズっぽいけどやっぱり子供なのね」
「ヴェルネ様、本当にそのままで?」
「うん、だってこの子凄い力で離してくれなさそうだし。この馬鹿力、やっぱりカズって感じがするわ」
彼女が支える腕を離してもカズは落ちる様子が全くなく、彼が起きるまではきっとこのままなのだろうと予想したヴェルネはただ苦笑いを浮かべるしかなかった。
大人の服の中にあったスマホを取り出したカズが困惑する。
持っているはずがない所有物を眺めるカズ。彼が画面を触ると多種のアプリがある画面が表示された。
「わぁ……凄い!まるで携帯ゲームみたい……ねぇ、これでゲームとかできるの?」
カズがその容姿相応に目を輝かせてそう聞くと、ヴェルネたちはクスリと笑う。
「多分……あたしたちは大人のあんたに教えてもらった立場だから使い方とかあんまりわからないんだけどね」
「ふーん……なんかそれってお年寄りみたいだね」
子供特有の残酷な言葉にヴェルネが「うっ」と声を漏らして精神的ダメージを負ってしまう。
そんな彼女の心境など察するはずもないカズはスマホの画面を触り続ける。
するとその中に――
「……これって」
「何……あっ」
カズの一言に落ち込んでいたヴェルネも彼のスマホを覗き込むとそんな気持ちもどこかへ行ってしまった。
映り込んでいたのは大人のカズとヴェルネ二人。
それは決して仲が良いとは言える雰囲気ではなく、しかしカズが一方的に抱き着いているように見える写真だった。
「この男の人……」
「それがあなたよ。今の子供の姿になる前のあなた」
「マジか。なんというか……もしかして僕ってお姉さんのこと凄い好きだった?」
そうとしか思えない写真を見たカズは顔を赤らめながらもそう聞く。
そんなカズの初心な反応を見たヴェルネは背筋がゾクゾクとしたものを感じていた。
恥ずかしがるカズをさらに恥ずかしがらせようとヴェルネは彼を自分のところに引き寄せて抱き締める。
「そうよ?『好き好きー!』って言いながらいつも抱き着いてきてたんだから。なんならあんたもそうしてくれていいのよ?」
ヴェルネはそう言ってカズから離れ、ハグを求めるように両手を広げる。
「いや、それは……だってそういうのって好きな奴同士がやるやつだろ⁉ 恋人の奴らがやるみたいな……」
「あれ、そういえばまだ言ってなかったっけ?あたしたち恋人なのよ」
「え?」
ヴェルネからあっけらかんと告げられてカズは固まってしまう。
「……僕、まだ子供なんだけど」
「そうなる前のあなたはちゃんと二十歳過ぎてたわよ?」
「え……でもそれって……」
混乱してはいるようだが、モジモジとしながらうるんだ目をヴェルネに向けていた。
その反応があまりにもヴェルネに「刺さってしまっていた」ため、じゅるりと涎を垂らして興奮してしまう。
「……ねぇ、今のあなたから見てあたしってどう?」
「どうって……」
「女性として魅力的かってこと。もし……好きだって言ってくれたらあたし的に嬉しいんだけど?」
そう言って両手を広げて返答を待ち続けるヴェルネにカズはしばらく迷っていた様子だったが、覚悟を決めたのかヴェルネに近寄って抱き締め返した。
「……好き」
「~~~ッ⁉」
彼の恥ずかしながらも素直な返答にヴェルネは予想以上に快感を覚え悶えてしまう。
「何この子、本当にカズ⁉ 凄い可愛いんだけど!」
「大丈夫です、アレ?もうすでに癖が歪んでません?」
「アレはどちらかというと母性的なものでは?」
ヴェルネの興奮具合には流石のマヤルとジークも若干の心配を覚えたのだった。
「……ねぇ、もし本当に恋人なら……あ、アレしなきゃいけない?」
「『アレ』?」
「えっと……ちゅっ、き、キス、とか?」
顔を赤くしたカズの言葉にヴェルネも彼よりも顔を赤くしてしまう。
「そ、それは流石に……恋人って言っても今のカズは子供になっちゃってるし……」
「たしかにヴェルネ様が今のカズ様とにゃんにゃんしちゃったら世間的にはヤヴァイですもんね」
言葉を伏せつつもからかう言葉を口にしたマヤルを恨めしそうにヴェルネが睨む。
「……どうしましょう。今日のヴェルネ様、初めて見せる表情ばかりで凄い面白いんですけど」
「カズ様がこのお屋敷に来てから表情が豊かになっていましたが、今日はまた一段と……」
「うるさいわよ、あんたら。こんな可愛い子が可愛いこと言ってくれたらキュンキュンきちゃうに決まってるじゃない!」
感心するジークたち二人に対してヴェルネが力説しながら抱き締めているカズの頭を撫でまくる。
「……これ、なんか恋人というよりお父さんとお母さんにされてるみたいで落ち着いてくるんだけど」
「そう?……でもこのまましてほしい?」
ヴェルネは少し残念そうにしながらもウトウトと眠そうにしていたカズに問いかけると頷く。
「……眠いならベッドに行く?」
優しく微笑むヴェルネがそう聞くとカズは目を閉じつつ首を横に振る。
「この、ままで……このままが、いい……」
そう言うとヴェルネに強くしがみつき、そのまま眠りに落ちてしまった。
「……カズっぽいけどやっぱり子供なのね」
「ヴェルネ様、本当にそのままで?」
「うん、だってこの子凄い力で離してくれなさそうだし。この馬鹿力、やっぱりカズって感じがするわ」
彼女が支える腕を離してもカズは落ちる様子が全くなく、彼が起きるまではきっとこのままなのだろうと予想したヴェルネはただ苦笑いを浮かべるしかなかった。
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