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バレてた

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 ヴェルネの屋敷内、カズの部屋にて。
 月の光以外の明かりがない暗い部屋の中で地面からルルアが出現する。

「……ふぅ、戻って来れた。さて、これでお兄ちゃんにバレないように部屋に戻れば――」

「ミッション達成……ってか?」

 部屋には寝ているレトナ以外に誰もいなかったにも関わらず、彼女の背後に突如としてカズが現れた。

「えっ――ふげっ!?」

 振り返ったルルアの鼻が摘まれ持ち上げられる。

「ルルア、俺が気付かないとでも思ったか?」

「ぷぇ!? き、きふいてたの……?」

 鼻を摘まれ涙目になりながらも聞いてきたルルアの疑問にカズは溜め息混じりに答える。

「最初からな……と言いたいところだけど、なんとなくルルアだって察したのはついさっきだ。俺が屋敷を出る前から曖昧な視線は感じてたけど接触してくる気配はなかったし、そう思ったらルディと出会った辺りで感情が強くなったり……極めつけはさっきの廃屋のとこでルディの前に出ただろ?」

「アレェ……なんでわかったの?」

 鼻を放されたルルアはそこを撫でながら問う。

「気配がわかるんだから気配が消えたタイミングもわかるに決まってるだろ……しかもそれがルディたちと別れた辺りで消えて、さらには殺気がこっちまで伝わってきたしな。んで、こんなことしそうな奴って言ったらお前しかいないんだよ」

 ルルアは自分たちが怒られている状況にも関わらず嬉しそうな笑みを浮かべた。

「ちゃんとルルアのことを見てくれて嬉しいな♪」

「俺はお前にヒヤヒヤしてるよ……心配だったり嫉妬で監視するのは構わないけど、いつか本当に誰か犠牲が出そうで怖いよ。下手なホラー映画より恐怖を感じるわ」

 気を重くしたカズが溜め息を吐きつつ笑うルルアの頬を悪戯するように軽く引っ張る。それでも彼女はニヒヒと子供らしく笑う。
 カズはこれ以上の言葉は意味が無いと判断し、ベッドに向けて歩き始める。

「……もう寝るか」

「うん、寝よ♪」

 ルルアが当たり前のようにそう言ってカズの後について行き、レトナが大の字に寝ているベッドの前で止まる。

「真ん中で寝んな!」

 カズがベッドメイキングでもするように布団を持ち上げ、レトナをベッドの端っこへ移動させた。空いたところにカズが横になり、ルルアもその横にピッタリとくっ付いて横になる。

「……ルルア」

「ん?」

「ほどほどにな」

「……うん♪」

 カズが目を瞑ったところで声をかける。
 「何を」とは言わなかったが、ルルアは目を薄く開けてカズの言葉の意味を考え、理解すると短く答えて頷き彼の腕をギュッと抱き締めて目を瞑り眠りに就く。

「大丈夫、お兄ちゃんが悪い女に捕まらない限りはやり過ぎないようにするから」

「……いや、もう十二分にやり過ぎてるからな?」

 カズのツッコミが聞こえていたのかどうか、ルルアは返事をする前に寝息を立て始めていた。

――――
―――
――


☆★☆★
~カズ視点~

「……ふむ」

 日が明けた次の日の朝、ジルたちの鍛錬を見ながらあることを考えていた。

「どうしたんだ?」

 そんな俺の様子に気付いたユースティックがジルとの手合わせの手を止めて聞いてくる。

「この前、俺が獣魔会議に呼ばれた時に他の町に現れた災厄級の厄介な魔物を倒す依頼をできるだけ引き受けるようにって話をしたよな?その依頼にお前らも連れて行こうかと思ってな」

「「「えっ……」」」

 俺の言葉に相当驚いたらしく、三人とも似た表情で驚いた。

「そうやって同じ表情で並ばれるとちょっと面白いな」

「いや待て、何結構ヤバイことをサラッと流そうとしてんだ⁉」

「そうです!災害級や災厄級って……町一つ簡単に滅ぼしたり、最悪国が総出で相手にしなきゃならないのよ?普通個人でなんとかしようとするもんじゃないし、そんなことしようとは思いませんから!」

 ジルは何も言わないが、ユースティックとミミィの反感が意外と凄かった。

「別に直接戦って倒せって言ってるわけじゃない。俺が戦ってるのを見て勉強してくれればいいだけなんだけど……」

「いや……いやいやいやいや!無理ですって!」

「相手は災厄級だったりするんだろ?お前が戦ってくれるって言ったって……そんな簡単な話じゃないだろよ。相手は町を軽々と滅ぼすような魔物だぞ?カズが一人で戦う分には問題ないだろうが、近くにいる俺たちは少しでも巻き込まれれば致命傷どころか命を落としかねないんだぞ?」

 二人は弱気にそう言って乗り気にはならないらしい。たださっきから黙って何も言わないジルのことが気になった。

「ジルはどうする?ユースティックたちみたいに来たくないなら……」

「俺は行ってみたいです!」

 ジルは期待するようなキラキラとした目でそう答える。彼のそんな活き活きとした即答にユースティックとミミィは驚き、ユースティックが呆れて溜め息を吐く。

「ジルはカズを信じているんだろうが、命の保証はないんだぞ?」

「大丈夫、アニキならちゃんと守ってくれるって信じてますから!」

 曇りなき眼で言うジルの言葉に流石に少し恥ずかしくなってしまう。言われて嬉しいことではあるけど、ちゃんとした理由も無く信頼されるっていうのは何とも言えないむず痒い感じがするんだよなぁ……
 そんなことを考えていると、懐のポケットの中からピコンと音が鳴る。
 何度も鳴るそれを取り出してみると、鳴っていたのは離音玉だった。まさに噂をすれば何とやら、というやつだった。

「よし、それじゃあ早速社会見学に行くとしますか」
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