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彼の記憶
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カズたちが町から離れた一方、屋敷で留守番兼鍛錬をしていたジルたち。ジルと戦っていたのはアマゾネスのフウリだった。
「ほらほらどうしタ、攻撃が全く当たらないゾ?」
「くっ……」
ジルがフウリに攻撃を加えようとするが、全てがただ虚しく空を切っていた。
「それに隙だらけ!」
そんなジルにカウンターの形でフウリの肘打ちが腹部に決まり、その場で膝を突いてしまう。
「ぐふっ……アニキと手合わせしてるみたいに全部当たらない……」
「ハッハッハ、だろうネ!なんたって心が読める能力をフル活用してるわけだシ、同格相手の戦闘でもほぼ負け無しの能力だヨ!とはいえ、純粋に強過ぎる彼と戦うとなると僕のアドバンテージは無いも同然だけド」
「心が読めても勝てないんですか?」
ディールが持ってきたタオルをジルは受け取りつつ疑問を投げる。
フウリが「あれ、僕の分は?」と聞くとディールは「無いに決まってる」と言いたげに肩をすくめて人間味を帯びたジェスチャーを取る。
「簡単な話サ。君は自分の顔面にボールが飛んでくるとわかっていても、その速さが自分が認識できないほど速過ぎたら避けられると思ウ?しかもそのボールは一度や二度避けても追いかけてきたラ……」
「……あー、そういうことですか」
ジルは頭の中でイメージし、なんとなく理解して頷いた。
「『右拳で顔を殴る』『腹に膝を入れる』『頭を掴んで地面に叩き付ける』……相手が次に何をしようとしているのかを読み取っても、気が付けば避ける暇もなく攻撃を受けてしまウ。それほど僕と彼の間には実力差があり過ぎるのサ」
「だろうな。如何に能力が優れていようと、結局はその使用者の腕が戦局を左右する。逆に言えば不利になる能力を使われていたとしても勝ちようはあるということでもあるがな」
彼女たちの会話に入ってきたのはヤトだった。
「実際に私相手に能力を使ったところで手も足も出なかっただろう?」
ヤトがそう言って笑い、したり顔でフウリを見る。
「竜相手に勝てるとは思ってなかったけども、まさかゴリ押しされるとも思ってなかったというのが本音だヨ」
納得いかないと言いたげに頬を膨らませるフウリ。
実はフウリはジルと手合わせする直前、先にヤトとも手合わせをしていた。
フウリは殺す気で挑んだのだが、ヤトは攻撃を躱すどころか殴られながら強引に攻撃を加えていたのだった。
フウリは肉弾戦に自信のある種族のアマゾネス、しかしヤトの身体能力はそれを凌駕していたために結果はフウリのボロ負けとなってしまっていた。
「カズには言われてないのか?多彩な敵と戦って経験を積め、と」
「あ、俺は言われました」
ジルが素直に答える反面、フウリはそっぽを向く。
「僕は彼の弟子じゃないから言われてないヨ……まぁ、良い経験になったのはその通りなんだけどサ……」
「それに目的はそれだけじゃない。お前たちは私に挑む時にさっき知ったものも含めた身体能力を強化する魔法を使っただろう?魔力は限界ギリギリまで使えばその分、体内に蓄えられる魔力量を底上げできる……が、本当に倒れるギリギリまで使わないとならないし、増える量は微々たるものだから根気が必要になるから本当についでに考えておけばいい」
ヤトの説明にジルが納得の声を漏らしつつその場に座る。
「……でもそれだけアニキが強いってことですよね。獣人でもないのに獣人よりも速くて力強いなんて、どんな鍛え方をしたらああなるんでしょうか?」
「さぁな……地獄のような環境で育ったとしか思えん。じゃなきゃ神か悪魔が転生したのかもな?」
「フッフッフ、どうやら彼のことを知りたいようだネ?」
ジルの疑問にヤトがケラケラと笑いながら適当に答えると、フウリが自分なら知ってるとでも言いたげな態度を取る。
「その物言い、お前の能力を応用すれば相棒のことを少しは知れるということか」
「そうそう、『心を読む能力』は心の片隅にある記憶を覗くこともできて、それを他の人と共有できるんだ。もちろん条件付きだけど……その条件はもうすでに満たしてあるから、彼の記憶はいつでも一度だけ見れるんだヨ。そしてそれは今だろうなと僕は思ってル……ということで今からみんなに集まってもらおう!」
フウリの提案によりその場にいなかったルルア、ジーク、マヤル、レトナの四人が集められた。
「お兄ちゃんの可愛い子供の頃が見れると聞いて来たよ!」
「もしかしたらカズさんの弱点とかもわかるかもですしね!」
ルルアとマヤル、それぞれが別の意味でワクワクして落ち着かない様。逆にレトナは気が進まないようだった。
「マヤルのせいで罪悪感が出てきたんだけど……勝手に人の記憶見ちゃっていいのか?あとで怒られない?」
「相変わらずレトナ様は小心者ですねー♪ そんなんだからルルア様に押し倒されちゃうんですよ」
マヤルがケラケラと笑ってからかい、レトナがムッとする。そんな彼女らを横目にフウリたちは話を進める。
「見るか見ないかは自由だヨ。もし見たいなら僕の手を取って」
フウリが左手を伸ばし、レトナ以外がすぐにその手に自らの手を重ねる。
レトナも迷った末にフウリの手を掴んだ。
「ほらほらどうしタ、攻撃が全く当たらないゾ?」
「くっ……」
ジルがフウリに攻撃を加えようとするが、全てがただ虚しく空を切っていた。
「それに隙だらけ!」
そんなジルにカウンターの形でフウリの肘打ちが腹部に決まり、その場で膝を突いてしまう。
「ぐふっ……アニキと手合わせしてるみたいに全部当たらない……」
「ハッハッハ、だろうネ!なんたって心が読める能力をフル活用してるわけだシ、同格相手の戦闘でもほぼ負け無しの能力だヨ!とはいえ、純粋に強過ぎる彼と戦うとなると僕のアドバンテージは無いも同然だけド」
「心が読めても勝てないんですか?」
ディールが持ってきたタオルをジルは受け取りつつ疑問を投げる。
フウリが「あれ、僕の分は?」と聞くとディールは「無いに決まってる」と言いたげに肩をすくめて人間味を帯びたジェスチャーを取る。
「簡単な話サ。君は自分の顔面にボールが飛んでくるとわかっていても、その速さが自分が認識できないほど速過ぎたら避けられると思ウ?しかもそのボールは一度や二度避けても追いかけてきたラ……」
「……あー、そういうことですか」
ジルは頭の中でイメージし、なんとなく理解して頷いた。
「『右拳で顔を殴る』『腹に膝を入れる』『頭を掴んで地面に叩き付ける』……相手が次に何をしようとしているのかを読み取っても、気が付けば避ける暇もなく攻撃を受けてしまウ。それほど僕と彼の間には実力差があり過ぎるのサ」
「だろうな。如何に能力が優れていようと、結局はその使用者の腕が戦局を左右する。逆に言えば不利になる能力を使われていたとしても勝ちようはあるということでもあるがな」
彼女たちの会話に入ってきたのはヤトだった。
「実際に私相手に能力を使ったところで手も足も出なかっただろう?」
ヤトがそう言って笑い、したり顔でフウリを見る。
「竜相手に勝てるとは思ってなかったけども、まさかゴリ押しされるとも思ってなかったというのが本音だヨ」
納得いかないと言いたげに頬を膨らませるフウリ。
実はフウリはジルと手合わせする直前、先にヤトとも手合わせをしていた。
フウリは殺す気で挑んだのだが、ヤトは攻撃を躱すどころか殴られながら強引に攻撃を加えていたのだった。
フウリは肉弾戦に自信のある種族のアマゾネス、しかしヤトの身体能力はそれを凌駕していたために結果はフウリのボロ負けとなってしまっていた。
「カズには言われてないのか?多彩な敵と戦って経験を積め、と」
「あ、俺は言われました」
ジルが素直に答える反面、フウリはそっぽを向く。
「僕は彼の弟子じゃないから言われてないヨ……まぁ、良い経験になったのはその通りなんだけどサ……」
「それに目的はそれだけじゃない。お前たちは私に挑む時にさっき知ったものも含めた身体能力を強化する魔法を使っただろう?魔力は限界ギリギリまで使えばその分、体内に蓄えられる魔力量を底上げできる……が、本当に倒れるギリギリまで使わないとならないし、増える量は微々たるものだから根気が必要になるから本当についでに考えておけばいい」
ヤトの説明にジルが納得の声を漏らしつつその場に座る。
「……でもそれだけアニキが強いってことですよね。獣人でもないのに獣人よりも速くて力強いなんて、どんな鍛え方をしたらああなるんでしょうか?」
「さぁな……地獄のような環境で育ったとしか思えん。じゃなきゃ神か悪魔が転生したのかもな?」
「フッフッフ、どうやら彼のことを知りたいようだネ?」
ジルの疑問にヤトがケラケラと笑いながら適当に答えると、フウリが自分なら知ってるとでも言いたげな態度を取る。
「その物言い、お前の能力を応用すれば相棒のことを少しは知れるということか」
「そうそう、『心を読む能力』は心の片隅にある記憶を覗くこともできて、それを他の人と共有できるんだ。もちろん条件付きだけど……その条件はもうすでに満たしてあるから、彼の記憶はいつでも一度だけ見れるんだヨ。そしてそれは今だろうなと僕は思ってル……ということで今からみんなに集まってもらおう!」
フウリの提案によりその場にいなかったルルア、ジーク、マヤル、レトナの四人が集められた。
「お兄ちゃんの可愛い子供の頃が見れると聞いて来たよ!」
「もしかしたらカズさんの弱点とかもわかるかもですしね!」
ルルアとマヤル、それぞれが別の意味でワクワクして落ち着かない様。逆にレトナは気が進まないようだった。
「マヤルのせいで罪悪感が出てきたんだけど……勝手に人の記憶見ちゃっていいのか?あとで怒られない?」
「相変わらずレトナ様は小心者ですねー♪ そんなんだからルルア様に押し倒されちゃうんですよ」
マヤルがケラケラと笑ってからかい、レトナがムッとする。そんな彼女らを横目にフウリたちは話を進める。
「見るか見ないかは自由だヨ。もし見たいなら僕の手を取って」
フウリが左手を伸ばし、レトナ以外がすぐにその手に自らの手を重ねる。
レトナも迷った末にフウリの手を掴んだ。
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