Locust

ごったに

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 扉にもたれかかり、中の様子に聞き耳を立てる。
 嗤ったり怒鳴ったり、よがったり歌ったりする、大勢の男女の声。
 同じか、それよりも多くの泣き喚く子供の声が聞こえて来た。
「準備はいいか」
 振り返ると、シケイダ君は頭にGoProを装着していた。
 ヘッドギアのベルト版みたいなのを被り、頭に固定しているのだ。
 思わず嘆息した。
 準備万端らしい。
「投稿する前に、動画のチェックはさせろよ」
 シケイダ君が首肯したのに合わせて、俺は両開きの扉を開いた。
 そこで開かれている魔宴に、思わず俺は顔をしかめた。
 中央奥に聳えるは、フクロウを模した石の巨像。
 薄暗くてだだっ広いホールのあちこちで松明が焚かれており、フクロウ像の前で燃え盛るものは巨大なキャンプファイヤーみたいだった。
 中から漂って来た臭気に、咄嗟に腕で鼻と口を塞いだ。
 汗と血液と性的な分泌物、さらには糞尿のものまで混ざり合ったそれに、吐き気を催したからだ。
 それだけではない。
 炎に照らされてできた大きな影と小さな影の織り成す醜悪なダンスも、見ちゃいられなかった。
 テレビで何度も見た顔が、素っ裸の年端も行かない子供を犯しているのだ。
 与野党、右派左派中道を問わない政治家。
 国内外の有名俳優やタレント、大企業の役員。
 世界を股にかける活動家、ギリスト教をはじめとした世界的な宗教指導者。
 逆に、あられもない姿で犯されては、嬌声を上げている男女問わないアイドルの姿も見られた。彼ら彼女らはバックを突かれながらギリスト教の讃美歌を斉唱しており、淫猥なそれがホールに響いている。
「マルキ・ド・サドの世界だな」
 ドアボーイを殴り殺すのに使った拳銃の、安全装置を外す。
 未成年をレイプする有力者どもに、順番にヘッドショットを見舞って回る。
 幼女とまぐわう海外の男性政治家を。
 ブヨブヨの老いぼれボディをシースルー地のベビードールに包んでチンポを男児にしゃぶらせる、世界的な経済団体の代表を。
 男児の口に大便をして悦んでいた、異例の就任を果たした初めての黒人女性教皇を。
 全身を複数の女児に舐めさせていた、日本の女性政治家を。
 白いスク水で女装をして、露出したチンポを未就学児に舐めさせていた前教皇を。
 女児の乳首を舐めまわしながら、男児の尻を掘っていた元ヒーロー俳優を。
 自らの下痢便を塗りたくった女児に射精していた、ハリウッドスターを。
 枚挙にいとまがない変態どもを、拳銃の弾が尽きれば鉈を振るい、容赦なく地獄へ送り返した。
 変態どもの怯えや怒号がホールに満ちた。
 知ったこっちゃない。俺は、怒りのままに連中へと死を振りまいた。
 許せなかった。
 このイカレた連中の異常性欲のせいで、直斗の行方を捜索する捜査本部が解散させられたのだと思うと、殺しても殺しても気が晴れない。
 いっそ滅茶苦茶に暴れたくなるのを抑え、変態どもだけを殺す。
 犯され、弄ばれている子供たちに罪はない。全員救ってやらなければならない。
「直斗! 直斗どこだ! お父さんが助けに来たぞ!!」
 恐慌に駆られた著名人たちを冷徹に狩りながら、直斗の名を呼ぶ。
 扉の方でも銃声と、年寄りどものマヌケな声がする。
 シケイダ君が、自分の動画の挨拶の通り、支配者層の人間や、それに下った変態どもを射殺しているようだ。
 助かる。
 数が数だ。俺だけでは、仕留め切れない。
「ま、待って! 目的は何!? お金ならあげるから殺さな、ぐべっ!!」
「昔好きだったよ、アンタのこと」
 少年の日に憧れた元アイドルの顔面を、鉈の一振りで二目と見られないものにする。
 逆バニースーツでそいつに性的な奉仕をしていた女装少年たちに、逃げろとあごをしゃくる。
 元アイドルの血を浴びた彼らは、一目散に逃げて行った。
 彼らはいいが、中には解放してもまるで逃げようとしない子供もいた。
 目は焦点が合っておらず、口からよだれを垂らし、足元には注射器が転がっている。
 全員を救ってやりたいが、こういう子は変態どもを掃討した後でないと運び出せない。
 やむを得ず対処を後回しに、変態狩りを続ける。
 鉈を振るのにも疲れて来た頃、頭が真っ白になる光景に出くわした。
 フクロウ像の裏に回ったときだ。
 コメンテーターをしていたのを見たことのある、女性大学教授がいた。年甲斐もなく髪を派手な色に染めたそいつが、男児に直に齧りついて肉を貪り食っていたのだ。
「……全員がクズ野郎だが、お前は輪をかけて外道だ」
 顔を引き攣らせた女性大学教授に、鉈を振り下ろす。
 食べていた男児を盾にしてきたが、動きがノロすぎる。
 攻撃の軌道を変え、まずその腕を伐採した。
 痛みに悶えるそいつの頭へと、容赦ない一撃を見舞う。
 頭を真っ二つに割ってやったが、なおも鉈を何度か振るわなければ、気持ちが収まらなかった。
 犠牲になった男の子を抱き起すも、既にこと切れている。
 直斗ではない。
 そのことに安心している自分が嫌だった。
 泣きながらそのご相伴に預からされていた女児たちを、解放する。
 遠くない未来、彼女らはクロイツフェルト・ヤコブ病を発症するだろうが、それは俺にどうにかできる問題ではない。
「これが。これが、人間の本性かよ」
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