Locust

ごったに

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 事務所に帰り、鏑木にもらった写真を改めて見る。
 優愛と、その両親の苦悶に歪んだ顔はやはり心に来るものがある。
 どうして、直斗が連れ去られなければならなかったのだ。
 どうして、優愛たちがこんな目に遭わなければならなかったのだ。
「もっと、情報が必要だ」
 スマホの電話帳を開く。
 付き合いのあったマスコミ関係者の、連絡先。
 東明新聞、デイリー新聞、ラケットニュース。
 登録してある記者の番号は、せいぜいそんなところ。
 こんなことなら、もっと連中と親交を深めておくんだった。
「今更言っても、遅い」
 ひとまず、東明新聞の記者へと連絡を取ってみたのだが。
『勘弁してくださいよ。その件は、うちでも調べたらクビが、いや僕どころか会社ごと潰されますよ。日月さんも、夜道には気を付けた方がいいと思いますよ』
「おい! 待て、待ってくれ! 少しでも情報が欲しいんだ……クソッ!!」
 一方的に、電話を切られてしまった。
 他の二社も、同じ。
 命がいくつあっても足りない、だそうだ。
「とんでもなくデケぇ闇に、首を突っ込んじまったのかもしれないな」
 ソファに倒れ込み、天井を眺める。
 うちの事務所は未だに蛍光灯で、LEDになっていない。
 とんでもない時代遅れで、今使っているものが切れたとき、どうするか俺は決めていなかった。
 ピロン♪
 スマホに通知が届いた。
 誰だ、俺に連絡なんか寄越すのは。
 鏑木か?
 ひとまず画面を見て、思わず舌打ちした。
『恐竜人間は実在した!? 衝撃、もうひとつの人類!!』
 なんのことはない。
 有料動画サイトの、シケイダ君の新着動画の通知だった。
「くだらねぇ陰謀論者が……」
 吐き捨てて、一緒にスマホもソファに放り出す。
 考えても仕方ない。
 こんなときは、酒でもかっ食らって寝るのが一番なんだ。
 立ち上がり、冷蔵庫へ向かう。
 冷凍室でキンキンに冷えたジンに手を伸ばしかけて、この境遇でなければ笑ってしまうような考えが脳裏を過ぎった。
 マスコミがダメなら、シケイダ君を頼るのは、どうだ?
 追い詰められるあまり、どうかしちまったんじゃねぇか?
 俺の中の冷静な部分が鼻で笑う。
 けれど。
 他に頼れる相手もいない今、少しでも望みがあるならコンタクトを取る価値はあるんじゃないのか?
 冷凍室の扉を閉め、俺はパソコンでシケイダ君のチャンネルを開いた。
 連絡用メールアドレスをコピーし、自分の素性を明かした上で、ネタを提供したい旨を書いたメールを送信した。
 ほどなくして、返信があった。
 いくつかのやり取りの末、後日、会えることになった。
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