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神様と神様
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「あぁ…お主は死ぬぞ」
七五三木 柔吾(シメギ ジュウゴ)は齢18にして神様にとり殺されそうになっていた。
15分前
『おめでとう柔吾!お父さんとお母さんからのお誕生日プレゼントだ!』
3月1日。まだまだ上着が手放せない寒い寒い日。
柔吾は大学生になる祝いにと、両親から一人暮らし用の「一軒家」をプレゼントされた。
程よく郊外にあるその土地は元々神社があった場所を避難所用の公園を作るとか何かで、取り壊し、その余った土地が柔吾の家になったということみたいだ。
お気づきかも知れないが柔吾の両親は金持ちであり大地主であり庶民と感覚がズレている。
「あ、ありがとう。父さん。また連絡するね」
『ああ!いつでも連絡してくれ!困ったことがあったらすぐ父さんに言うんだぞ
!仕送りも楽しみにしておいてくれよ!じゃあな!』
「父さんも体に気をつけて。電話切るね」
柔吾は、電話越しからでもわかるいつもの父の勢いに気圧されていた。
「くそ!これじゃあ普通の大学生活からまた一歩遠のいたよ」
友達家に呼んだら一軒家だったら引くよなあ、普通。というかそれ以上に友達できるかな。実家から出れば普通の暮らしが出来ると思ったのに。
いや、そもそも「住むところぐらいはお父さんに決めさせてくれ」何て泣き脅しに屈するんじゃなかった。まさか家が買われているとは。
柔吾は人生で、両親があんな調子なので庶民との「感覚のズレ」から友達らしい友達ができたことがない。
高校生から始めたSNSで情報を集め庶民との「感覚のズレ」を修正し、ようやく大学から一旦リセットして友達を作れると思っていが、考えが甘かったようだ。
「まぁ、最悪家に人を呼ばなきゃいいわけだしギリギリなんとかなるかな」
玄関の鍵を開けて中に入る。
「やっぱり一人じゃ広いよなあ。たぶん。…ん?」
玄関からリビングのほうを見ると灯りはついていないはずなのに、光が漏れ出していた。それと同時にゆらゆらと人影らしきものも見える。
なんだ?火?小火?空き巣?放火魔?
半分パニックになってリビングに駆け寄りドアを開く。
「え???女の子?」
そこには和服を着た小学生か中学生ぐらいの女の子が。立って、いや浮いていた。
光源は髪の毛。メラメラとまるで炎のように明るい。しかし、それが髪の毛だとなんとなく感覚で理解してしまう。
「ほぅ。お主がこの社の主人か。ひとまずは礼を言おうかのう」
「え?いや?ど、どちら様で?」
「見て判らぬのか馬鹿者。儂は神じゃ」
神???と一瞬思ったが彼女の一言一言に妙に説得力があり。すんなり信じてしまう。
信じる。というよりは理屈を脳味噌が捏ねる前に「理解」してしまう感覚だ。気持ち悪い。
「さて、小さいとはいえ、よく再び祀ってれた」
神様の目線の先には小さな神棚がある。
「そこで、一つ提案じゃ。願い事を一つ…」
願い事?あるある!普通の友達がほしいけど、ここはあえて庶民的な感じで返そう
「その願い事。「願い事を百個叶える」っていう願い事になりませんかね?」
いい感じだ。
柔吾は、自分自身がとても庶民っぽいと思っていた。
「何て殊勝なやつじゃ。もちろん構わないぞ。「儂」の願い事を百も叶えてくれるとは!」
「え?」
「儂の願い事を一つ叶えてやる権利をやろうと思ったが、まさか百も叶えると自分から言い出すとは。なかなか信心深いやつじゃの」
「え?そういうこと?ですか?いや、ちょっと今のは、なしで…」
「良い良い、照れるでない。覚えておけ、今のは神との「契約」じゃ。お主が儂の願い事を百叶えなければ、お主は死ぬ」
「死ぬ???」
「あぁ…お主は死ぬぞ」
これがハッタリじゃないってことは脳味噌が痛いほど「理解」していた。
夢の庶民のキャンパスライフは神との契約にはるか遠くに遠のいていく。
「そんなことはさせるか!」
「なんじゃ?」
柔吾は決意する。
「ようやく庶民の暮らしが出来るところだったんだ、あんたの願い事!大学が始まるまでに全て叶えてやる!」
「ほう。それは頼もしいのう」
神様がにやりと笑う。
「じゃあまずは、儂に千人参拝させよ」
「千人!?」
「ああ。大さあびすじゃ」
「参拝って、どうしたら1人って数えるんだ?ここは手水もできないし、あれか?二礼二拍手とかでいいのか?」
「そんなことはしなくてよい。それは勝手に人間が決めた規則じゃ。ただ儂に拝んでくれればいい。願い事でもなんでも。拝むのはただじゃからな。地球の裏側からでもいいぞ?気持ちが大事じゃ」
神様はニヤニヤとこっちを見ている。
「こんなんでもいいのか?」
柔吾は目を瞑って神棚に意識を向ける
「そうじゃそうじゃ!これであと999人じゃな」
「じゃあすぐ終わりそうだな」
そう言って柔吾は神棚をスマホで撮影する。
続けて何やらスマホを操作する。
「駆け巡れ!」
柔吾がスマホを操作し終えると神様の体がブルっと震える。
「な、なんじゃ100、200人?どこかで儂に誰かが参拝しておる?」
「庶民の感覚を養うために、匿名でSNSを始めたんだがな、気づけばフォロワーが300万人。ネット上じゃ「流行神」って呼ばれてる」
その頃ネット上では、お洒落に撮影されてた神棚とともに「願いがかなうかも?」と添えられたtweetがリツイートといいねによって川に落ちた雷の如く駆け巡っていた。
「千人どこじゃない、一万、二万人?も、もういい止めてくれ!」
どさっと、神様はその場にへたり込んでいた。
「これで残り99個だな?次の願い事はなんだ?神様?」
願い事 残り九十九
大学生活開始まで 残り三十日
了
七五三木 柔吾(シメギ ジュウゴ)は齢18にして神様にとり殺されそうになっていた。
15分前
『おめでとう柔吾!お父さんとお母さんからのお誕生日プレゼントだ!』
3月1日。まだまだ上着が手放せない寒い寒い日。
柔吾は大学生になる祝いにと、両親から一人暮らし用の「一軒家」をプレゼントされた。
程よく郊外にあるその土地は元々神社があった場所を避難所用の公園を作るとか何かで、取り壊し、その余った土地が柔吾の家になったということみたいだ。
お気づきかも知れないが柔吾の両親は金持ちであり大地主であり庶民と感覚がズレている。
「あ、ありがとう。父さん。また連絡するね」
『ああ!いつでも連絡してくれ!困ったことがあったらすぐ父さんに言うんだぞ
!仕送りも楽しみにしておいてくれよ!じゃあな!』
「父さんも体に気をつけて。電話切るね」
柔吾は、電話越しからでもわかるいつもの父の勢いに気圧されていた。
「くそ!これじゃあ普通の大学生活からまた一歩遠のいたよ」
友達家に呼んだら一軒家だったら引くよなあ、普通。というかそれ以上に友達できるかな。実家から出れば普通の暮らしが出来ると思ったのに。
いや、そもそも「住むところぐらいはお父さんに決めさせてくれ」何て泣き脅しに屈するんじゃなかった。まさか家が買われているとは。
柔吾は人生で、両親があんな調子なので庶民との「感覚のズレ」から友達らしい友達ができたことがない。
高校生から始めたSNSで情報を集め庶民との「感覚のズレ」を修正し、ようやく大学から一旦リセットして友達を作れると思っていが、考えが甘かったようだ。
「まぁ、最悪家に人を呼ばなきゃいいわけだしギリギリなんとかなるかな」
玄関の鍵を開けて中に入る。
「やっぱり一人じゃ広いよなあ。たぶん。…ん?」
玄関からリビングのほうを見ると灯りはついていないはずなのに、光が漏れ出していた。それと同時にゆらゆらと人影らしきものも見える。
なんだ?火?小火?空き巣?放火魔?
半分パニックになってリビングに駆け寄りドアを開く。
「え???女の子?」
そこには和服を着た小学生か中学生ぐらいの女の子が。立って、いや浮いていた。
光源は髪の毛。メラメラとまるで炎のように明るい。しかし、それが髪の毛だとなんとなく感覚で理解してしまう。
「ほぅ。お主がこの社の主人か。ひとまずは礼を言おうかのう」
「え?いや?ど、どちら様で?」
「見て判らぬのか馬鹿者。儂は神じゃ」
神???と一瞬思ったが彼女の一言一言に妙に説得力があり。すんなり信じてしまう。
信じる。というよりは理屈を脳味噌が捏ねる前に「理解」してしまう感覚だ。気持ち悪い。
「さて、小さいとはいえ、よく再び祀ってれた」
神様の目線の先には小さな神棚がある。
「そこで、一つ提案じゃ。願い事を一つ…」
願い事?あるある!普通の友達がほしいけど、ここはあえて庶民的な感じで返そう
「その願い事。「願い事を百個叶える」っていう願い事になりませんかね?」
いい感じだ。
柔吾は、自分自身がとても庶民っぽいと思っていた。
「何て殊勝なやつじゃ。もちろん構わないぞ。「儂」の願い事を百も叶えてくれるとは!」
「え?」
「儂の願い事を一つ叶えてやる権利をやろうと思ったが、まさか百も叶えると自分から言い出すとは。なかなか信心深いやつじゃの」
「え?そういうこと?ですか?いや、ちょっと今のは、なしで…」
「良い良い、照れるでない。覚えておけ、今のは神との「契約」じゃ。お主が儂の願い事を百叶えなければ、お主は死ぬ」
「死ぬ???」
「あぁ…お主は死ぬぞ」
これがハッタリじゃないってことは脳味噌が痛いほど「理解」していた。
夢の庶民のキャンパスライフは神との契約にはるか遠くに遠のいていく。
「そんなことはさせるか!」
「なんじゃ?」
柔吾は決意する。
「ようやく庶民の暮らしが出来るところだったんだ、あんたの願い事!大学が始まるまでに全て叶えてやる!」
「ほう。それは頼もしいのう」
神様がにやりと笑う。
「じゃあまずは、儂に千人参拝させよ」
「千人!?」
「ああ。大さあびすじゃ」
「参拝って、どうしたら1人って数えるんだ?ここは手水もできないし、あれか?二礼二拍手とかでいいのか?」
「そんなことはしなくてよい。それは勝手に人間が決めた規則じゃ。ただ儂に拝んでくれればいい。願い事でもなんでも。拝むのはただじゃからな。地球の裏側からでもいいぞ?気持ちが大事じゃ」
神様はニヤニヤとこっちを見ている。
「こんなんでもいいのか?」
柔吾は目を瞑って神棚に意識を向ける
「そうじゃそうじゃ!これであと999人じゃな」
「じゃあすぐ終わりそうだな」
そう言って柔吾は神棚をスマホで撮影する。
続けて何やらスマホを操作する。
「駆け巡れ!」
柔吾がスマホを操作し終えると神様の体がブルっと震える。
「な、なんじゃ100、200人?どこかで儂に誰かが参拝しておる?」
「庶民の感覚を養うために、匿名でSNSを始めたんだがな、気づけばフォロワーが300万人。ネット上じゃ「流行神」って呼ばれてる」
その頃ネット上では、お洒落に撮影されてた神棚とともに「願いがかなうかも?」と添えられたtweetがリツイートといいねによって川に落ちた雷の如く駆け巡っていた。
「千人どこじゃない、一万、二万人?も、もういい止めてくれ!」
どさっと、神様はその場にへたり込んでいた。
「これで残り99個だな?次の願い事はなんだ?神様?」
願い事 残り九十九
大学生活開始まで 残り三十日
了
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