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小説の主人公、その共通点を振り返った話
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俺の小説の主人公に共通すること。
それは「自分が正義の味方ではない」ことに安心している陰キャであること。
これは「ラブコメを書こう」「熱いヒーローものを書こう」という動機“でない”作品の主人公の特徴だ。
また、そういったウケ狙い作品を書いたことで溜まる謎のパラメータを消すために書く作品の主人公も、この特徴を持つ。
正義の味方ではないことに安心する。
それは「義を見てせざるは勇無きなり」に対して「はい、俺に勇気なんかないので誰か勇気と暇を持て余している人がやってくれ」という精神性である。
物語が始まらない?
そんなことはない。
あなたはクラスのいじめを見て見ぬふりをし、スーパーで老害に絡まれている少年を見捨て、信号待ちをしているおばあさんの荷物を持ってあげたりせず、駐輪場でうっかり自転車を倒してしまった人に舌打ちして自分の自転車だけ起こして颯爽と立ち去った経験があるはずだ。
それでもあなたは、平凡だが大変な日々を送っている。そうだろう?
ある調査によれば、他人に奉仕することで豊かな気分になる人はたったの40%なのだという。
あなたがいじめられているときに、友達もクラスメイトも学級委員も助けてくれなかった理由はこれだ。
60%側の人しか、あなたのクラス、学年、教師含む学校にはいなかったのだ……そう思えば楽になるのではないか。
ならないが?
いじめグループの中心だった人間が大人になってから社会的に成功する、みたいな話を聞いて正義を信じられるか?
最近では「いじめは犯罪」と強調して訴える人もSNSにいるが、その認識が社会全体に広がるのはいつであろうか。
陰謀論に繋げられる話題なのだが、脱線が過ぎるので今回は我慢する。
だから物語の中でくらい、正義を信じたい。
因果応報。
いじめをしたやつは生きたまま熱した油に放り込まれ、溺れながらきつね色に揚がって死ぬ。
一方、いじめられっこは美男美女に助けられて、竜宮城で末永く暮らしましたチャンチャン♪
物語作者が提供すべきなのは、本当はこういう物語なのだろう。
虚しい。
全部嘘だからだ。
美しさは力。
子供の社会では特に、容姿が優れていることは権力に繋がる。
みんなその顔に愛されたいからだ。相対的に、自分の価値を感じたいからだ。
もちろん、容姿が優れていないスクールカースト上位者がいる場合はその限りではない。
けれども、それだって羨望の裏返しだ。
リアルの美男美女は陰キャを救ってくれない。
別に陰キャに愛されなくても構わない、いや、近くにそれを置きたくないだろう。
欲情だけさせてフるという、負の性欲を満たすための行動はするかもしれない。
それをきっかけに取り巻きどもにいじめをさせて、悦に入るかもしれない。
正義も愛も信じられない。
荒んだ心では、あまりにも「ラブコメ」や「熱いヒーロー」は嘘がすぎる。
そういった作品を鑑賞して熱狂、感動することはできても、創作すれば自分に噓を吐いているうしろめたさが蓄積するのだ。
謎のパラメータの正体は、これだ。
同窓会で「まあガキのすることじゃん。許せよ」かつてのいじめっこが、その対象だった主人公に言い放つ。
昔の罪を清算したつもりになってスッキリしたいだけの暴論だ。
主人公はその男の後をつけ、家を特定する。
寝静まった頃に侵入、酒の回ったかつてのいじめっこを拘束。目の前で子供を殺し妻を殺し、最後に本人の四肢と生殖器と舌と目を潰して立ち去って行く。そして盗み出した金で、いじめられて泣いている子供に高級アイスクリームと高価なゲーム機を買ってあげる。この義賊気取りの自己満足だけが、彼にあるわずかな善性の残滓であった。
こういうのが、俺にとって解毒になるキャラクターなのだ。本当のヒーローと言ってもいい。
共感する読者は『隣人13号』を見てくれ。俺は映画だけ見た。
だから主人公たちは、一般社会通念としての正義を行わない。
誰かを助ける、困っている人に手を差し伸べる義務が自分にない。
そのことに安堵して一日中誰ともしゃべらずに下校時間を迎え、下を向いて今日も家に帰るのだ。
アクション要素をつけるなら、それは不当な押し付けを跳ねのけるときや復讐を動機としたときのみ。
自己犠牲の徹底的な否定が、彼らの中にはある。ただ欲望の赴くまま、力に酔って敵を惨たらしく殺す。
当然、反応は芳しくない。
これらの主人公は他人を楽しませることではなく、俺の毒出しのために生まれ落ちたキャラクターだからだ。
プラットフォームがあるから載せているが、本来は胸の内にしまっておくべき物語なのだ。
主人公たちがヒロインとの出会いや冒険を経て、尻拭き紙以下と思っていた正義や愛を知っていくならまだしも。
なるだけヒロイックな話とかラブコメを書くようにしたいとは、思っている。
面白い、って言ってもらえる方がいいからね。
でも、毒は出さないといけないんだ。
苦手な人は、あらすじでなんとなく察してくれると助かるよ。
それは「自分が正義の味方ではない」ことに安心している陰キャであること。
これは「ラブコメを書こう」「熱いヒーローものを書こう」という動機“でない”作品の主人公の特徴だ。
また、そういったウケ狙い作品を書いたことで溜まる謎のパラメータを消すために書く作品の主人公も、この特徴を持つ。
正義の味方ではないことに安心する。
それは「義を見てせざるは勇無きなり」に対して「はい、俺に勇気なんかないので誰か勇気と暇を持て余している人がやってくれ」という精神性である。
物語が始まらない?
そんなことはない。
あなたはクラスのいじめを見て見ぬふりをし、スーパーで老害に絡まれている少年を見捨て、信号待ちをしているおばあさんの荷物を持ってあげたりせず、駐輪場でうっかり自転車を倒してしまった人に舌打ちして自分の自転車だけ起こして颯爽と立ち去った経験があるはずだ。
それでもあなたは、平凡だが大変な日々を送っている。そうだろう?
ある調査によれば、他人に奉仕することで豊かな気分になる人はたったの40%なのだという。
あなたがいじめられているときに、友達もクラスメイトも学級委員も助けてくれなかった理由はこれだ。
60%側の人しか、あなたのクラス、学年、教師含む学校にはいなかったのだ……そう思えば楽になるのではないか。
ならないが?
いじめグループの中心だった人間が大人になってから社会的に成功する、みたいな話を聞いて正義を信じられるか?
最近では「いじめは犯罪」と強調して訴える人もSNSにいるが、その認識が社会全体に広がるのはいつであろうか。
陰謀論に繋げられる話題なのだが、脱線が過ぎるので今回は我慢する。
だから物語の中でくらい、正義を信じたい。
因果応報。
いじめをしたやつは生きたまま熱した油に放り込まれ、溺れながらきつね色に揚がって死ぬ。
一方、いじめられっこは美男美女に助けられて、竜宮城で末永く暮らしましたチャンチャン♪
物語作者が提供すべきなのは、本当はこういう物語なのだろう。
虚しい。
全部嘘だからだ。
美しさは力。
子供の社会では特に、容姿が優れていることは権力に繋がる。
みんなその顔に愛されたいからだ。相対的に、自分の価値を感じたいからだ。
もちろん、容姿が優れていないスクールカースト上位者がいる場合はその限りではない。
けれども、それだって羨望の裏返しだ。
リアルの美男美女は陰キャを救ってくれない。
別に陰キャに愛されなくても構わない、いや、近くにそれを置きたくないだろう。
欲情だけさせてフるという、負の性欲を満たすための行動はするかもしれない。
それをきっかけに取り巻きどもにいじめをさせて、悦に入るかもしれない。
正義も愛も信じられない。
荒んだ心では、あまりにも「ラブコメ」や「熱いヒーロー」は嘘がすぎる。
そういった作品を鑑賞して熱狂、感動することはできても、創作すれば自分に噓を吐いているうしろめたさが蓄積するのだ。
謎のパラメータの正体は、これだ。
同窓会で「まあガキのすることじゃん。許せよ」かつてのいじめっこが、その対象だった主人公に言い放つ。
昔の罪を清算したつもりになってスッキリしたいだけの暴論だ。
主人公はその男の後をつけ、家を特定する。
寝静まった頃に侵入、酒の回ったかつてのいじめっこを拘束。目の前で子供を殺し妻を殺し、最後に本人の四肢と生殖器と舌と目を潰して立ち去って行く。そして盗み出した金で、いじめられて泣いている子供に高級アイスクリームと高価なゲーム機を買ってあげる。この義賊気取りの自己満足だけが、彼にあるわずかな善性の残滓であった。
こういうのが、俺にとって解毒になるキャラクターなのだ。本当のヒーローと言ってもいい。
共感する読者は『隣人13号』を見てくれ。俺は映画だけ見た。
だから主人公たちは、一般社会通念としての正義を行わない。
誰かを助ける、困っている人に手を差し伸べる義務が自分にない。
そのことに安堵して一日中誰ともしゃべらずに下校時間を迎え、下を向いて今日も家に帰るのだ。
アクション要素をつけるなら、それは不当な押し付けを跳ねのけるときや復讐を動機としたときのみ。
自己犠牲の徹底的な否定が、彼らの中にはある。ただ欲望の赴くまま、力に酔って敵を惨たらしく殺す。
当然、反応は芳しくない。
これらの主人公は他人を楽しませることではなく、俺の毒出しのために生まれ落ちたキャラクターだからだ。
プラットフォームがあるから載せているが、本来は胸の内にしまっておくべき物語なのだ。
主人公たちがヒロインとの出会いや冒険を経て、尻拭き紙以下と思っていた正義や愛を知っていくならまだしも。
なるだけヒロイックな話とかラブコメを書くようにしたいとは、思っている。
面白い、って言ってもらえる方がいいからね。
でも、毒は出さないといけないんだ。
苦手な人は、あらすじでなんとなく察してくれると助かるよ。
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