オムライス食べたい ~ゲーム漫画アニメの感想、それからオカルトや都市伝説について思ったこと書く意識の低いエッセイ~

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電脳魔術結社“混沌の海”の思い出~あまねく混沌! カオティックエッセイ~

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 筆者のラノベ主人公みたいなエピソードであるが、かつてオカルトサイト──という名の魔術掲示板のオマケを運営していたことがあった。
 その名も“混沌の海”。
『女神転生』シリーズに心酔し、中二病と最悪の悪魔合体を果たしたところに『悪魔事典』(新紀元社)で『失楽園』の混沌王の存在を知ったことで、小学生が「カオス(Chaos)」に憧れる以上の執着を発症してしまったことに端を発する黒歴史サイトである。ちなみに未だに『失楽園』を読んだことはない。
 掲示板以外のサイトの読み物はマジのゴミで、許可を得て他人の言っていた魔術師の心得みたいなのを拝借したもの以外、意味のあることはまったく書いてなかった。

 サイト自体が消滅し、原稿もない直書きの駄文なのでもはや詳細は思い出せない。
 まあ、今やっているこのエッセイと大差ないといえば、大差ない。

 時代背景として、巨大な魔術サイトの存在があったのが大きい。

 バタフライエフェクトに関する名前の、掲示板と魔術・呪術・オマジナイの投稿ができる闇のサイトがあった。引用元の著書を表記するだけ、それをせずに市販本の呪術を丸写しする知恵袋などよりはマシだった。
 オリジナルの魔術呪術オマジナイも存在しており、中でも“リアルデビルマン”になる方法などは筆者の興味を強烈に惹いた。その魔術を投稿した人とは、しばらく交流して詳細を質問したものだ。ちなみに後年、その方法が転載されているのも見かけたので、もしかしたら今もネットの海のどこかにあるのかもしれない。

 ここに張り付いて怪しげなハンドルネームの連中が、魔術の話、人を呪い殺すことへの注意喚起、霊だの神だの妖精だの悪魔だの天使だのの話、人工精霊の作成方法、恋バナ、煽り、ケンカを繰り返していた。
 未成年が比較的多いサイトだったからか、もっと年齢層の高いサイトも存在していた。
 そちらは高校生~アラサーが多いイメージで、西洋魔術(のうち高等魔術)の議論などもなされており、難解な議論が交わされていたように思う。
 その大河がごとき二つの流れからの支流として、魔術師たちがサイトを立ち上げては掲示板やチャットルームで交流をするという流行があった。

 さて、魔術師であるならば何をしていると報告するのがインパクトがあるか。
 当然のように、退魔師としての武勇伝が流行した。
 ある日突然、“光さん”という存在から力を世の中の役に立てるよう告げられることで、魔術師たちは魑魅魍魎との戦闘に身を投じるようになる。
 やれ大ムカデを退治しただの、タロットカードから人格と戦闘力を引き出して兵士にして戦わせただの、気を練って剣や銃弾にしただのといった話が大量に飛び交った。
 一人二人ではない。こういった退魔師として活躍していたと嘯く魔術師たちが、大量にいた。
 彼らの交流するチャットルームにて、遠隔透視をする遊びが行われている場面に遭遇したことがあった。
 筆者にはそんなクレヤボヤンス能力はないが、楽しそうにする彼らに筆者のいる場所を視てみてくれと頼んだことがあった。
 残念ながら、帰ってきた答えは絶望的に的外れだった。
『Fate』のファンが「神秘の秘匿はどうした」とひっくり返りそうな話だが、本当にあった話だ。
 名前は出さないが、その時のメンバーには現在占い師になっている者もおり、またYoutuberに動画投稿もしているようだ。
 その方は普通に「ファブリーズが除霊に有効」説を支持しており、筆者が現在追っている都市伝説系の霊能者とは見解が違っている。

 暇人が魔術師を自称して、夜な夜な与太話をしていただけ。
 そう切って捨てるのは簡単だ。
 実際、占い師氏がかつて運営していたチャットルームで古株常連から「俺たちが言ってることは全部嘘なんだ」と告げられて大きなショックを受けたことがある。
「サイトのコンテンツに“笑える悪魔召喚”はどうか」と親身なアドバイスもくれた退魔師の方だったので、にわかには信じられなかった。(※ちなみに当時の筆者に“笑える悪魔召喚”を考えることはできなかった)
 ネット空間の片隅にいた彼らは、本当に巨大な共同幻想を用意してくれていただけなのか……?
 そうだとしても、筆者には一つ、引っ掛かることがある。
 占い師氏たちが執拗に「低次魔術はやめなさい」と繰り返していたことだ。
 これは人を呪い殺すことだけを指す言葉ではなく、願望を満たすための魔術全般を指す。
 見えない力を本当は信じていない人が、他人が怪しげなオマジナイをすることに口を酸っぱくして警鐘を鳴らしたりするだろうか?
 なんなら、人を一人殺したって死刑にはならないから呪うくらいなら、とまで言っていた。
 魔術を信じていない人間の発言だとすれば、常軌を逸しているとしか思えない。
 もっとも、西洋魔術はキリスト教の一派という共通認識もあったので、キリスト教の教えの一環として魔術の行使を禁じる教えを押し付けていただけの可能性もないではないが……。

 ともあれ、そういった環境に身を置いていた筆者が「自分も魔術サイトを持ちたい」と思うのは当然だった。
 それで作ったのが“混沌の海”なのである。
 しばらくは本当に魔術サイトの巨大な流れの支流の支流の傍流の傍流みたいな閑古鳥が鳴く、先輩がお情けで暇潰しに来てくれるだけの掲示板が置かれているだけの場所だった。
 ターニングポイントとなったのは、筆者が占い師氏以上の真の実力者だと確信する存在の来訪だった。
 仮に“L”氏とする彼の来訪から、筆者の“混沌の海”は掲示板でL氏の“雑談”と称する魔術の教えを授かるための超超超超他力本願空間とオマケの駄文というサイトになっていったのだ。
 なんとL氏は筆者が憧れてやまない“リアルデビルマン”であった。
 邪悪の樹クリフォトに名を連ねるあの大悪魔と融合していると言って憚らない、しかして物腰はやわらかく“実るほど頭を垂れる稲穂かな”を地で行く人格者という、奇跡のような存在。さらに「悪魔と融合した私をここに召喚したのですから、あなたはデビルサマナーではないのですか?」とまで言ってくれる神対応。筆者が女だったら惚れてたな。
 そんなL氏の教えを目当てに数人の仲間が集い、L氏の語る五蘊六識やそれぞれの興味に合った聞いたこともない魔術の教えを受けて実践し、できない・わからないことがあれば問答するという夢のような時間がそこにはあった。
 それも長くは続かなかった。
 筆者をデビルサマナーではないのですか、と言ってくれたのが本当だったかのように、L氏は掲示板から姿を消したのである。
 というのも、筆者がリアルの都合でしばらく掲示板を見ることができなくなった間に、ちょっとした諍いがあったようなのだ。
 もはや掲示板も消滅したためログもなく、理由も覚えていないのだがL氏の教えに集まったユーザー間でのトラブルがあって、それをキッカケにL氏は“退去”したようだった。
 また掲示板に戻れる、と希望を胸に開いた筆者はその有り様に一気に絶望へと突き落とされたのだった。
 少女漫画みたいな話(※ド偏見)だが、読者諸兄も「自分なんてこのコミュニティの中で重要度低いし」と腐っている方は注意されたし。自分でそう思っているだけで、本当はあなたこそがコミュニティの要石であるかもしれないのだ。

 その前後から、魔術サイトブームは衰退していった。
 最初に述べたバタフライエフェクトに関する名前のサイトは既になく、年齢層がそこより高めのサイトも掲示板にスパム広告が連投され、荒らしも横行。
 占い師氏が掲示板とチャットルームを閉鎖して、やがてサイトそのものを刷新。
 混沌の海もすっかり廃れ、筆者も年に何度か覗く程度となっていった。
 やがて提供元のサービス終了が段階的に進み、今や完全に消滅した。

 あの頃、確かに魔術師たちはウェブサイトに集っていた。
 現在、魔術師やオカルト専門のSNSが存在するとは伝え聞くのだが、そこにかつて“混沌の海”に集った同士は、L氏はいるのだろうか。
 Twitterで六識の話をしている彼らは、それをどこで学んできたのだろうか。

 筆者が“混沌の海”を立ち上げた当初、サイト設立以外にもう一つの夢があった。
 それは先輩魔術師たちが頻繁に開催していた“魔術オフ会”を“混沌の海”に集った常連さんたちと開催すること。
 結論として、筆者がそれを企画する前にメンバーは散り散りとなって、もはや誰の消息も把握できていない。
 美しかった思い出、みたいに言うのもあれですが、まあ。
 みんなが元気で過ごしてくれていることを祈って、本稿を終わりたいと思います。
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