オムライス食べたい ~ゲーム漫画アニメの感想、それからオカルトや都市伝説について思ったこと書く意識の低いエッセイ~

ごったに

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アングラを燃やす国は滅びます

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 インターネットの後追い、とヴィレッジヴァンガードが揶揄されるようになって久しい。
 確かに、あの店はあるときから雰囲気がガラッと変わった。
 女に媚びたせいだ、という人がいる。
 全否定はしないが、変わる前にも女性客はいた。
 椎名林檎とか戸川純が好きそうな女性で、今の客層とは違うがいたことにはいた。
 誰かが「ヴィレヴァンはみんな働きたがるから、時給が最低賃金以下なんだぜ」とドヤ顔で社会を語っていた記憶がある。
 なんだその「アーティストには残業も残業代もないんですよ」みたいな理屈は。
 かつてのヴィレヴァンに法律を無視できるほどの魅力が(あってもやっちゃダメだろ)あったのかは疑問だが、少なくとも今はさほど人気はないだろう。服装自由!って感じは魅力的かもしれんけど。
 商品に移りそうなほどお香の匂いが充満していて、インドかどこかの電動おもちゃの音声がエンドレスで聞こえて、モニターには往年のフラッシュ動画ネタを擦るDVDがこれまたエンドレスで流れている。
 髑髏やエッチな感じの製氷プレートだの、土産物屋で見かけるような「コインを置くと便器から骸骨が出てきて、それを収納する」謎の貯金箱、年中ハロウィンであるかのようにウマやゴリラやフランケンシュタインのゴムマスクが吊るされている……のに図書券・図書カードが使える。
 そう、雑貨屋にしか見えないが書店なのである。
 筆者のように小説を書くものにとって、本の品揃えはとても魅力的だった。
 死体! 殺人! 殺人鬼! エログロ! 魔術! 變態性慾パラフィリア! その他もろもろのアングラサブカル領域の本がずらりと並んでいたのだ。
 最近ではYoutubeで活動されているようなライターの、紛争地域や治安が最悪な海外、犯罪グループやカルト宗教、精神病院の閉鎖病棟などへの潜入ルポ本などもあったように思う。守備範囲外でしたけど。
「おくすり」の本もあったんだけど、そっちも守備範囲外でした。
 創作の役に立つ資料だけでなく、漫画も丸尾末広、駕籠真太郎、伊藤潤二、古屋兎丸、ねこぢる……とわかる人にはわかるラインナップが主、メジャーな少年誌や青年誌の漫画が従といった棚作りがされている《異界》だったのだ。
 サブカル・アングラ系のムックも充実していて、小説、音源もカラーを守っていたように思う。
 クトゥルー神話コーナーもあったし、ヤン・シュヴァンクマイエルに代表される怖い絵本系だって、だいたいあった。

 雑貨はともかく、そんな本は都会のデカい本屋に行けばある?
 それは本当なんよ。

 新宿の紀伊国屋書店、御茶ノ水の三省堂書店、池袋のジュンク堂、神田の書泉グランデ。
 むしろクトゥルー神話系なら書泉グランデが圧倒的に勝っているし、紀伊国屋書店には年季の入った『法の書』や他のアレイスター・クロウリーの著書なんかもあった。
 何なら浜松町かどこかの駅内にあるだだっ広い書店は、かなりアングラサブカルに力を入れていてびっくりしたくらいだ。

 でも違うんよ。
 ヴィレヴァンは基本的にワンフロアだったり1テナントだったりで、《異界》を作っていたんだよ。
 何階・何棟もある中のあるコーナーだけが《異界》だが、かつてのヴィレヴァンはワンフロアでそれをやってたんよ。
 テナント系はまあ、あんまり活字本はなかったかもしれんけどさ。

 ワンフロアで世界観を構築していたから、地方にも《異界》が出店できた。
 これも大きいことなんだよ。
 本くらいAmazonがあれば地方でも買える?
 それも違う。
 ネットで調べるためには、調べたいことや知りたいことが何かを知っておく必要がある。
 つまり地方の青少年というのは「服を買いに行くための服がない」というジョークを地で行っているのだ。
 かつてのヴィレヴァンがあれば、変なおもしろ雑貨を買いに来たついでに「あっ、獣姦について書いてる本なんてあるんだ!」「子供の犯した殺人事件についてまとめた本なんてあるんだ!」という発見があったのだ。
 発見があれば興味関心が育まれ、やがてネットで調べ、それでもわからないことを知るために本を手に取って、ついに教養が深まる。
 親や教師の勧める奴隷洗脳のための本だけ押し付けられて育ち、本というものにネガティブイメージを持った大学生や大人が趣味で本なんか買うかね。
 買わないだろう。
 大学の課題や仕事のために買うもの、読むものというイメージは岩のように、いやダイヤモンドのように硬いままだ。
 だから「地元最高! クルマと仲間さえいりゃ何もいらない! 東京は敵!」みたいなマイルドヤンキーが治安を乱してコンビニのゴミ箱が店内設置になるのだ。
 本が売れないから出版社の経営が傾き、結果的に編集者はフリーランスばかりになり、小説家になろうのランキングだけ見てメールを送り、書籍化したら今度はその売れ行きランキングだけを見てアニメ会社がアニメ化の打診をする。
 こうやって(一部の例外を除き)なろうのクソアニメが量産されて、「また今期もなろうばかりじゃねぇか」「なろうはクソ!(前のクールのクソアニメにはアルファポリス連載の原作があったような?)」とアニメファンは憤ることになる。まさにバタフライ効果だ。
 なろうがアニメ文化を破壊して、ティーンエイジャーにとって最高のコンテンツはTikTokというさらなる粗製乱造の陽キャ文化に変わる。必死について行こうとする、まだ陽キャになれる可能性のあるキッズも「和室界隈」などと令和の差別用語で傷つけられる。待っているのは、いじめ、そして自殺だ。
 ほーら、本が売れないことで回り回って子供が自殺する世の中が来る……かもしれないぞ。
 
 ゆゆしき事態だとは思うが、衣食住足りて初めて礼を知る、だ。孔子というオッサンの残した言葉のうち、正しいものの一つだ。編集者が正社員として働けていない状況では、易きに流れてしまうのは人間に悪性がある以上、どうしようもない。サラリーマン編集者と山師の作家では意見が食い違って事故が起きるのは当然、という言説も聞いたことはあるが、今の事態はもっと深刻だ。それ以前の問題だ。
 昔のドラマや映画のように……あー、「サザエさん」の伊佐坂先生みたいに作家がエラい先生になるためには、編集者が明日も知れない身分であっては無理なのだ。

 たまに、子供に勉強をして欲しいからテレビや漫画やネットやゲームを厳しく制限する親というのがいる。
 それで親の望んだような子供になるか。
 ならない。
 国語力が育たないからだ。
 興味を惹かれる物語に触れないから、読解力が育たない。
 いくら問題を出されても、問題の意味がわからなければ解きようがない。
 全部暗記させるの?
 AIの時代はもう始まっているのに?
 どの道、人の心がネタ抜きでわからないまま大きくなる。
 話題が合わないから友達もできない。孤立を深める。家と学校の往復という、狭い世界。
 そういう親って余裕がないから、毒親なんだよね。虐待もするでしょう。
 人格形成に大きな影を落とすよね。
 好きな作品がなければ、想像の世界にすら逃げることができない。
 何の救いもない子供になりますよ。
 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。

 では「そんな日本」にしたのは誰か。
 間違いなく表現規制派の連中です。
 古き良き規範を重んじて汚物を消毒したい右派なのか、キリスト教的規範やフェミニズムを掲げる左派やサイレントインベージョン勢力なのかはその時々でしょう。
 都市伝説的にはどちらも“飼い主”は同じです。
 表現規制が厳しくなれば、敵の都合で表現狩りが行われ、アングラ本も焼かれてしまいます。
 その末路がどうなるかは既に述べた通りです。
 本とエロに課金して、表現規制に真っ向からNOを叩きつけていきましょう。
 オーラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!

 人間は怠惰な生き物だから、何かを学ぶなら結局遊びの中で身に付けるのが一番いいんですよ。
 効率は悪いです。だからみんな刻苦勉励してしまう、いや、することを強いられてしまう。
 ネットやスマホが苦手なおじいちゃんおばあちゃんは、それでやりたいことがないから苦手なんです。
 筆者は算数苦手ですがクトゥルフ神話TRPGのお蔭で、特定の計算は早くなりました。
 あれをやってなかったら12×5~19×5の計算が今より遅いです。

 読者諸兄も、思春期くらいに中二病の影響で何かの知識を深めたのではないかと思います。
 それがオカルトなのか、三国志なのか、武器兵器なのか、教科書で習わない科学なのかは筆者の知るところではありません。
 しかし、人間にとって一番大事な学びの時期というのは“それ”なのだと筆者は確信しています。
 どこに住んでいようと、その気になれば知りたいことについて書いた本が手に入る。または何を知りたいのかを知ることができる。
 それが教養への第一歩なのだから。
 そういった素地を我々日本人が取り戻せるよう、かつてのヴィレッジヴァンガードが戻ってきたらいいなぁ、なんて筆者は無責任な願望を垂れ流して、本稿を終わりたいと思います。
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