オムライス食べたい ～ゲーム漫画アニメの感想、それからオカルトや都市伝説について思ったこと書く意識の低いエッセイ～

（感想）日本神話の海幸山幸のエピソードについての雑語り、妄想

　https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%B9%B8%E5%BD%A6%E3%81%A8%E6%B5%B7%E5%B9%B8%E5%BD%A6

　↑海幸山幸神話についてのWikipediaになります。
　知らない人はこちらをお読みください。

　コピペして飛んで読むのすらめんどいという人のためにネタバレすると、以下のようになります。
　また、神話をご存知の方は「いやぁ、山幸彦最低ですね。」まで読み飛ばしてください。

　むかしむかし、漁師スキルがバリ高な兄貴の海幸彦と、猟師スキルがバリ高な弟の山幸彦っていう兄弟がいました。
　山幸彦は幼稚にして愚かにも兄貴・海幸彦の釣り針で自分を釣りをしてみたいとゴネだしました。ガキすぎて引くわぁ。
　渋々、海幸彦は道具を交換することを了承しました。しかし、二人とも自分の専門分野以外はからっきしだったので、何の成果も得られませんでしたーっ！！
　あまつさえ山幸彦は、兄貴から借りた釣り針を紛失する始末。
　返せ、探せ、と当然の権利を主張する海幸彦。ないモノはないので、山幸彦は自分の十拳剣（拳10個分の長さのロングソードとでも思ってください）を砕いて1000の釣り針を作ります。
　しかし、神が使っていた道具もまた神具。そんなまがい物で海幸彦が許すはずがありません。
　海辺で山幸彦が困ってしまって泣いていると、海の中から塩椎神（しおつちのかみ。潮流の神）が出現。
　山幸彦から事情を聞いた塩椎神は、小舟を作って綿津見神（海神・わたつみ）の宮殿へ行くよう勧めました。
（中略）
　綿津見神の宮殿に赴いた山幸彦。来たはいいけどどうしたらええやろ、と思っているとなんやかんやあって海神の娘である豊玉毘売命とよたまびめのみことと出会う。豊玉毘売はこんなやつのどこがいいのかまったくわからないけど、山幸彦に一目惚れしてしまう。なろう小説かよ。シュミ悪いで。
　さらに父、つまり宮殿の主たる海神は山幸彦を見て、
「ぼっちゃん、天孫邇々芸命ににぎのみことの子の虚空津日高（そらつひこ・山幸彦＝火遠理命ほおりのみことの尊称）じゃないか」
　と、びっくり仰天。
　何を隠そう、海幸山幸は皇祖神天照大御神の系譜たる天孫族、つまり尊い血を引く神なのだ。なろう小説かよ。いや、貴種流離譚はジャンプの定番か。
　これ幸いと綿津見神は、山幸彦と豊玉毘売を結婚させる。胸焼けしそうなほどの、なろう展開の天丼だ。
　三年ほど宮殿で暮らした山幸彦は、ある日大事なことを思い出してクソデカ溜め息を吐いた。
　どうして自分が宮殿に来たのか──兄貴・海幸彦の釣り針を探しに来たのだと。
　兄貴のものを勝手に失くしておいて、三年もなろう小説みたいな浦島太郎ライフを送るのも相当だ。しかもその上、思い出して溜め息吐くとか、なんなんだお前は。
　義父となった海神は「おや、溜め息を吐いたりして如何されたかね？」と尋ねました。
「実は、私がここに来たのは兄の釣り針を紛失してしまったからなのです」と今さらになって事情を告げる山幸彦。
　ならば、と海神は魚たちを集めて「誰か、山幸彦殿の兄上の釣り針を知らんかね」と問いました。
　すると「あっ、自分の喉に引っ掛かってるこれかもしれないです」と赤鯛が言うので、山幸彦が見てみると確かにそれは兄の釣り針だった。少なくとも三年は喉に釣り針が掛かったまま暮らしていたのか、赤鯛。どこからツッコんだらいいんだ、赤鯛。
　釣り針を取り除いた海神はそれを返す際に、鹽盈珠しおみちのたまと鹽乾珠しおひのたまという呪具をも山幸彦に与えて、
「釣り針を兄上に返す際は、『この針は、おぼ針、すす針、貧針、うる針（憂鬱になる針、心が落ち着かなくなる針、貧しくなる針、愚かになる針）』と言いながら、手を後に回して返しなさい。兄が高い土地に田を作ったらあなたは低い土地に、兄が低い土地に田を作ったらあなたは高い土地に田を作りなさい。兄が攻めて来たら鹽盈珠で溺れさせ、苦しんで許しを請うてきたら鹽乾珠で命を助けなさい」
　無茶苦茶な身内贔屓全開の助言をするのでした。
　絶対疑われる怪しい呪文はともかく、なんだその努力なしで手に入ってしまうチートアイテムは。みんな、昔からなろうが好きだったんだね。
　帰りは和邇（わに/ここでは体長の短い龍)を貸してもらい、その背に乗って兄の待つ地へと帰る山幸彦。
　三年ぶりに帰還した山幸彦は、さっそく兄を呪って釣り針を返します。田も言われた通りに作りました。
　するとどうでしょう、海幸彦の作った田には水が行き渡らず、彼は貧しくなっていきました。田を作る場所を変えても、それは変わりません。
　当然です。それは水を掌る海神が操作していたからなのです。気象兵器かな？
「なんか、田が全然ダメなんだけど」
「へー、兄貴大変だね（ほじほじ）。まあ？　俺には関係ないですけどｗｗｗ　兄の田が不作で飯が美味いｗｗｗ　あ、米粒びっしり残しておいたから、洗ってくれるならそれ食べていいよｗｗｗｗ」
　鼻くそほじって煽りながら、海神の呪具を使うタイミングを待ちわびる性格最悪の山幸彦。
　とうとうブチギレた海幸彦は、飢えた自分の配下を率いて山幸彦へと攻め込んだ。
「キターーーーーー！！　くたばりさらせぇーっ！！」
　報告を受けて狂喜乱舞したのは、山幸彦。
　性根の腐ったドグサレ野郎は、海幸彦の軍勢を鹽盈珠しおみちのたまで溺れさせ、海幸彦が苦しんで許しを請うと鹽乾珠しおひのたまでこれを助けた。まるでオウム真理教で行われていたという、ヨガの苦行を捻じ曲げたもののごとき仕打ちである。
　鬼畜の所業を繰り返されて、何も悪いことをしていない善良な海幸彦はチートアイテムの前に戦意を喪失。
　品性下劣の梟雄きょうゆうにして畜生にも劣る卑劣漢たる山幸彦の配下へと、下ってしまうのであった。
「ギャハハハハハハ！！　これでこの世はこの山幸彦あらため大魔王火遠理命ほおりのみことサマのものじゃあ！！　うあはははは！！」


　いやぁ、山幸彦最低ですね。
　邇邇芸命ににぎのみこと＝マルドゥク＝ニムロデ説を唱える方がおられるのもわかるような気がします。
　こいつボコボコにできるゲームとかないんですか。
　天孫族？　いやぁ、アマテラスを倒したり合体材料にしたりできるゲームあるから平気でしょ。
　前に、なろう小説の主人公に似せた悪役を倒す漫画が打ち切りになったことがあったと思いますが、たぶん山幸彦モチーフの極悪人を倒す漫画だったら連載できたんじゃないですかね。
　この後には豊玉毘売が「尊いお方の子は陸で産まないといけませんから」と陸に上がってきて「出産のときは本来の人ならざる姿になってしまうので、産屋を覗かないでくださいね」と見るなの禁の物語が続きます。当然、山幸彦はそれを覗きます。押すなよ、絶対押すなよです。
　豊玉毘売は龍の姿での出産を見られたことを恥じて海に帰ってしまうのですが……どこかで聞いたようなエピソードですね。
　ひょっとしたら「鶴の恩返し」の原話も「桃太郎」原話のように、R-18なのかもしれません。
　実際、日本神話には下照姫という女神の詠んだ性的な内容の歌があるのですが、その歌では性行為の動作を機織りのそれに例えている……という説もあります。
（詳しくは『アマテラス解体新書』（内外出版社　著者/監修 岡本佳之）p.26~p.27）


　神話・歴史解説系のYoutuberのみなさん曰く、古代日本では末子相続というシステムがあった（大国主命も末子ですし）そうなのでそれを暗示しているとか、モデルになった民族の闘争と征服の歴史の擬人化なんだ、という話があるそうなんですが、今回それは脇に置いておきましょう。本稿ではこの神話を真実や歴史ではなく、物語として取り上げています。


　前置きが長くなりましたが本稿の妄想雑語りは、この神話ってアンチ勧善懲悪ですよねという話。

　強盗がおじいちゃんの形見をぶち壊したとして、強盗が逮捕された後に裁判を経て罰金にくわえて形見と同じものを弁償してきたとして、強盗を許せますか？
　許せないですよね？
　あとは物に念や魂が宿るとか信じていなくとも、なんか愛用の物に固有の思い入れ、愛着を持つことってあるじゃないですか。
　家族それぞれに「この箸はお父さんの箸」「このお茶碗はお母さんのお茶碗」「このキャラクター湯飲みはぼくの」なんて専用の食器とか決めて使ってるご家庭もあると思います。これはケガレ概念と通じているという人もいますけど、決まっていたらその道具に思い入れとか持ちません？
　そうだ、クルマが好きな人は愛車に特別な思いありますよね？

　海幸彦の釣り針にも、神通力とか関係なくそんなのがあったと思うんです。
　それを失くしておいて、返す際にごめんなさいもせずに呪詛をかけるって、どうなんですかね。
　善良な海幸彦を海神の神通力で干上がらせ、当然の権利として怒ってきたらチート呪具で屈服させる。
　こんな話に、微塵も正義はないですよね？
　なにひとつスッキリする要素のない、悪行を推奨する胸糞エピソードなんですよ。
　これがアンチ勧善懲悪でなくて、なんだと言うんですか。

　江戸時代、曲亭馬琴は物語なんか何の役に立つんだと幕府から言われて「勧善懲悪は役に立ちます！」と答えたと聞いています。大学時代に聞きかじっただけの話なので、裏は取っていませんけど。
　いやぁ、海幸山幸神話が原因で記紀（「古事記」と「日本書紀」を合わせていう。「赤緑」とか「スカバイ」みたいなもん）が焼かれたりしなくて良かったですね。
　封建社会では家父長制が当然なのに、弟が当主になるアンチ家父長制の物語でもありますからね。
　お家騒動を防ぐために、徳川幕府はどんなに無能でも病弱でも長子に相続させて来たでしょう？
　最悪「家康よりも昔、神代のならわしはこうだったじゃないか」と謀反を起こす旗印にもできるでしょ（暴論）
　リアル「古事記にもそう書いてある」だよ！
　もうこれ、昔は末子相続の時代があったって認知がされてなきゃやっぱ焼かれてるよ。
　だから江戸時代は仏教優勢だったとか？　いやしらんけど。


　マジレスしておくと、現代の技術で作られた釣り針というか仕掛けも余裕で根がかりしまくるので「釣りをする際に釣り針を失くすな」はムリゲーです。
　根掛かり、俗に「地球を釣ってしまった」とか言われるアレです。
　この神話では赤鯛の喉に引っ掛かっていたことがわかりますが、きっとヒットした際に岩の間にでも逃げ込まれたのでしょう。
　山幸彦は赤鯛との力比べに負け、糸がプツン、と切れたのだと思います。
　物事を見る際には、こういう多角的な視点が大事ですね。

　もちろん筆者は、山幸彦が最低最悪の卑劣漢クソ野郎だと思っています。
　海幸彦が断ったのにもかかわらずガキっぽくゴネて自分からムリゲーに飛び込んで行ったくせに、酷い復讐までかましたんですからね。物語のキャラクターとしては、外道以外の何者でもない。