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おまけ:沖縄の話
石垣島の赤馬伝説
しおりを挟む沖縄がまだ琉球とよばれる国だったころの話。
八重山の宮良村に、大城師番という一人のまずしい役人が住んでいました。
ある日、師番が海の近くを歩いていると、1頭の仔馬が海から上がってきました。
その仔馬の毛は、ベンガラをまぶしたような赤い色をしていたそうです。
仔馬は師番にかけよって、あまえるように鼻づらをすり寄せてきました。
「ここで会ったのは、何かのめぐり合わせだろうか。もしかすると、この仔馬は死んだ子供の生まれ変わりかもしれない」
子供をなくした師番はそう思い、仔馬を連れて家に帰りました。
そうして、仔馬を我が子のようにかわいがりながら育てたそうです。
仔馬はすくすくと育ち、めずらしい赤毛の美しい馬になりました。
村の人たちもこんなすばらしい毛色の馬は見たことも聞いたこともないと言い、いつしかその馬を『赤馬』と呼ぶようになりました。
赤馬は主人の心が分かるかのように、意のままに走るすばらしい馬だったそうです。
そのうわさは琉球国の尚貞王まで届き、馬を国王に差し出せという命令が下されました。
かわいがっている馬を手放したくはないけれど王様には逆らえないので、師番は泣く泣く馬を差し出します。
尚貞王は城に届けられた美しい赤馬の姿に満足し、すぐに乗ってみることにしました。
しかし赤馬は、声をかけようともムチを打たれようとも、王様のいうことを聞きません。
それどころか暴れ出して、王様をふり落とそうとしました。
「なにが名馬だ!こんな馬は殺してしまえ!」
おこった王様は、家来にどなりました。
馬役人はあわてて、石垣島にいる師番を呼び寄せました。
首里へ向かう師番はこのとき、王様に殺されるかもしれないと思いながら向かったそうです。
師番の姿を見ると、今まで暴れていた赤馬はすぐにおとなしくなり、師番が乗ると、赤馬すばらしい速さでかけてみせました。
赤馬が走る姿は速く美しく、まるではなたれた一本の赤い矢のようだとうわさされたそうです。
「これはすばらしい馬だ。一体どのように育ててきたのか?」
「一度もムチを当てず、我が子のように愛情を注いで育てたのでございます」
王様に問われた師番は、そのように答えたと言い伝えられています。
感心した王様は師番にほうびを取らせ、八重山に帰るようにいいました。
ところが、このことで赤馬の話はますます有名になり、今度は薩摩の殿様から馬を差し出すよう命令がきました。
薩摩は、今の九州の辺りです。
このころの琉球王国は、日本の国に従う属国と呼ばれるものだったので、薩摩の殿様の命令に逆らうことができません。
師番はまた悲しみながら、赤馬を島の港まで見送りに行ったそうです。
しかし、赤馬を乗せた船が港を出てしばらくすると天気が変わり、強い風と波がおそってきました。
赤馬は船の上でつながれていましたが、船がかたむき始めると、縄を切って海に飛びこみました。
それからすぐ船はしずみ、暗い波間に消えていったそうです。
赤馬は大波の海を泳いで島までたどり着くと、師番の家まで走ります。
近づいてくるそのひづめの音で愛馬の帰りに気づくと、師番は家を飛び出しました。
赤馬は師番にすり寄ると、静かに目を閉じてたおれてしまったそうです。
ただひとりの主のもとへ帰るため、赤馬は全ての命の力を使い切っていたのでした。
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このお話を知ったとき、ぼくは「スーホの白い馬」を思いうかべました。
宮良に残る赤馬像のまなざしは優しく、師番のところへ帰ってこれたことを喜んでいるようです。
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