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第7章:二千年前の願い
第68話:メタボコンビ頑張る
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俺と研究所メンバーは、ミノルとアババの狩りの様子を見に、アンナがよく狩りをする森へ行ってみた。
アンナも彼らがサボッてないか監視する目的で一緒に来ている。
余程アンナが怖かったのだろう、2匹は超真面目に狩りをしていた。
森の中、真っ白メタボと黒白タキシードメタボが身を低くしながら茂みを目指す。
おそらく、そこから雉の匂いがするんだろう。
俺には全然分からないけど。
ミノルとアババは、そこに獲物がいると確信しているようだ。
そのあたりは、太っても肉食獣といったところか。
やがて、2匹は同時にダッシュする。
まるで転がる肉ダルマのようだ。
その速度は、案外速かった。
(おお、意外と機動力あるじゃん)
隠れて見ている俺やアンナや研究所メンバーが、そんな事を思う。
本猫たちは勿論気付いていない。
茂みに駆け寄るメタボコンビに、雉が気付いたようだ。
ケーン! という甲高い声が、森の中に響く。
「「とうっ!」」
茂みの中から飛び立つ雉を追い、ミノルとアババが跳躍した。
その姿、白と黒の座布団の如し。
(おお、意外と身軽じゃん)
俺たちは感心しながら傍観を続けた。
……が。
雉は2匹の間をすり抜けてしまい、攻撃は回避された。
結果、ミノルとアババのでっぷり太った腹と腹が激突。
「「ぐほっ!」」
一瞬息が詰まったのか、変な声を出す2匹。
見事に失敗のメタボコンビは、揃って茂みの中に落下した。
(駄目だこりゃ)
隠れて見ている一同、誰もがそう思う。
猫たちの遺伝子には狩猟本能が残されているそうだが、だからといって誰でも狩りができるわけじゃない。
「あ~あ、もう見てられないわね」
「「……すいません」」
アンナがそう言うと、2匹の前に姿を現した。
ショボくれた2匹が揃って謝る声には応えず、アンナは森の中を見回す。
「ちょっと狩るから、見てなさい」
「「は、はい」」
どうやら、プロがお手本を見せるようだ。
見たからといって彼等が真似できるかは怪しいが。
新たな獲物を見つけたのか、アンナがスッと身を低くする。
同じような動きでも、ぎこちなかったメタボコンビとは違い、アンナの動作は洗練された感がある。
それは例えて言うなら、日本刀を鞘から抜き放つ動き。
素人がやるのと玄人がやるのでは、動きが全然違うような感じだ。
ケーン! と雉が鳴いた瞬間にアンナは飛んだ。
茂みから雉が飛び出す位置や向きを把握していたかのように、彼女は空中で獲物を捉え、その首に鋭い牙を突き刺す。
たった一撃で、雉は絶命してしまった。
クタッと動かなくなった雉の首を咥えたまま、アンナは軽やかに着地する。
「どう?」
「「す、凄い……」」
メタボコンビもギャラリーも、驚きを含む感嘆の声を漏らした。
プロの肉屋(っていうかハンター)恐るべし。
まるで居合い切りで敵を倒す剣豪のようだ。
「あんたたちもやるのよ。今日から特訓ね」
「「……えっ」」
アンナの言葉に、ミノルとアババが固まる。
メタボコンビの受難は、まだまだ続くのだった。
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おそらく、そこから雉の匂いがするんだろう。
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……が。
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結果、ミノルとアババのでっぷり太った腹と腹が激突。
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「ちょっと狩るから、見てなさい」
「「は、はい」」
どうやら、プロがお手本を見せるようだ。
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まるで居合い切りで敵を倒す剣豪のようだ。
「あんたたちもやるのよ。今日から特訓ね」
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アンナの言葉に、ミノルとアババが固まる。
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スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
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