47 / 78
第5章:猫の時代
第41話:霊の居場所
しおりを挟む
『霊魂の保存は、その人の脳にアクセスして電気信号化したデータを使っているんだよ』
『私たちはそこに、AIの技術と、オカルト分野の【霊気】や【精神】の概念を取り入れて、保存した思考データが自発的に行動したり、新たな記憶を増やしたり、今みたいに自由に可視化できるように開発したの』
「AIに実在の人物の人格をくっつけたって思っておけばいいか?」
『うん、大体そんな感じ』
セバーズ兄妹が俺にも分かるように説明してくれたおかげで、霊魂の保存研究内容はなんとなく理解できた。
OISTでは、1つの研究に縛られず、興味があれば他の研究に参加することができる。
クリストファはコールドスリープ研究チーム所属だけど、ケイトから霊魂の保存研究を聞き、興味を持って参加していたらしい。
『データは僕とケイト、他にもケイトの研究チームのメンバー全員分が残っているよ』
「他の人はどこに? あ、いきなりまとめて出てこないでね。心臓に悪いから」
予想通り、研究に関わった他の人々の霊もいるようだ。
まとめて出てこられると霊気反応がキツそうだから、いるなら1人ずつ現れてほしいな。
『他の人たちは、今はここにいないわ』
『それぞれの家族のところへ飛んでいったよ』
「みんな、国に帰ったのか」
どうやら、他のメンバーは自国へ帰っているらしい。
OISTの生徒も教師も大半が外国人だ。
『私もカナダの実家に帰ったけど、廃墟に変わっていく家よりもOISTがいいと思って戻ってきたの』
『僕は霊になった直後から、ずっとコーイチの傍にいたよ』
「二千年も付き添ってくれて、ありがとな」
ケイトは学び舎を、クリストファは俺の傍を、居場所として決めたらしい。
肉体は失っても会話はできるから、2人を幽霊ではなく人間として扱うことにしよう。
『コーイチが実家を見て泣いていたとき、抱き締めてあげられなかったのが悔しいよ』
「大丈夫だよ。猫たちがいるから」
クリストファは自分が死んだということよりも、俺に触れられないことを悲しんでいるようだった。
その会話(といっても俺が声に出して言っていることだけ)を聞いていたミカエルが、何か察したようにピョーンと飛んで俺の腕の中にスッポリ納まる。
ミカエルは最近は母猫ポウと共に遺跡調査に出ることもよくあり、今日も調査チームに加わっていた。
俺が目覚めた頃は両手に収まるくらい小さかった仔猫は、今では成猫の半分サイズに育っている。
「タマは、ボクが寂しいとき、一緒に寝てくれたよね。ボクもタマが寂しいときは、一緒に寝てあげるよ」
「うん、ありがとう」
『いいなぁ、僕も加わりたい……』
腕の中で伸び上がるようにして抱きついてくる仔猫(やや大きめ)に、今日も癒される。
クリストファは猫をモフれないから(多分)、ちょっと残念そうだった。
『私たちはそこに、AIの技術と、オカルト分野の【霊気】や【精神】の概念を取り入れて、保存した思考データが自発的に行動したり、新たな記憶を増やしたり、今みたいに自由に可視化できるように開発したの』
「AIに実在の人物の人格をくっつけたって思っておけばいいか?」
『うん、大体そんな感じ』
セバーズ兄妹が俺にも分かるように説明してくれたおかげで、霊魂の保存研究内容はなんとなく理解できた。
OISTでは、1つの研究に縛られず、興味があれば他の研究に参加することができる。
クリストファはコールドスリープ研究チーム所属だけど、ケイトから霊魂の保存研究を聞き、興味を持って参加していたらしい。
『データは僕とケイト、他にもケイトの研究チームのメンバー全員分が残っているよ』
「他の人はどこに? あ、いきなりまとめて出てこないでね。心臓に悪いから」
予想通り、研究に関わった他の人々の霊もいるようだ。
まとめて出てこられると霊気反応がキツそうだから、いるなら1人ずつ現れてほしいな。
『他の人たちは、今はここにいないわ』
『それぞれの家族のところへ飛んでいったよ』
「みんな、国に帰ったのか」
どうやら、他のメンバーは自国へ帰っているらしい。
OISTの生徒も教師も大半が外国人だ。
『私もカナダの実家に帰ったけど、廃墟に変わっていく家よりもOISTがいいと思って戻ってきたの』
『僕は霊になった直後から、ずっとコーイチの傍にいたよ』
「二千年も付き添ってくれて、ありがとな」
ケイトは学び舎を、クリストファは俺の傍を、居場所として決めたらしい。
肉体は失っても会話はできるから、2人を幽霊ではなく人間として扱うことにしよう。
『コーイチが実家を見て泣いていたとき、抱き締めてあげられなかったのが悔しいよ』
「大丈夫だよ。猫たちがいるから」
クリストファは自分が死んだということよりも、俺に触れられないことを悲しんでいるようだった。
その会話(といっても俺が声に出して言っていることだけ)を聞いていたミカエルが、何か察したようにピョーンと飛んで俺の腕の中にスッポリ納まる。
ミカエルは最近は母猫ポウと共に遺跡調査に出ることもよくあり、今日も調査チームに加わっていた。
俺が目覚めた頃は両手に収まるくらい小さかった仔猫は、今では成猫の半分サイズに育っている。
「タマは、ボクが寂しいとき、一緒に寝てくれたよね。ボクもタマが寂しいときは、一緒に寝てあげるよ」
「うん、ありがとう」
『いいなぁ、僕も加わりたい……』
腕の中で伸び上がるようにして抱きついてくる仔猫(やや大きめ)に、今日も癒される。
クリストファは猫をモフれないから(多分)、ちょっと残念そうだった。
40
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
デリバリー・デイジー
SoftCareer
キャラ文芸
ワケ有りデリヘル嬢デイジーさんの奮闘記。
これを読むと君もデリヘルに行きたくなるかも。いや、行くんじゃなくて呼ぶんだったわ……あっ、本作品はR-15ですが、デリヘル嬢は18歳にならないと呼んじゃだめだからね。
※もちろん、内容は百%フィクションですよ!
宝石ランチを召し上がれ~子犬のマスターは、今日も素敵な時間を振る舞う~
櫛田こころ
キャラ文芸
久乃木柘榴(くのぎ ざくろ)の手元には、少し変わった形見がある。
小学六年のときに、病死した母の実家に伝わるおとぎ話。しゃべる犬と変わった人形が『宝石のご飯』を作って、お客さんのお悩みを解決していく喫茶店のお話。代々伝わるという、そのおとぎ話をもとに。柘榴は母と最後の自由研究で『絵本』を作成した。それが、少し変わった母の形見だ。
それを大切にしながら過ごし、高校生まで進級はしたが。母の喪失感をずっと抱えながら生きていくのがどこか辛かった。
父との関係も、交友も希薄になりがち。改善しようと思うと、母との思い出をきっかけに『終わる関係』へと行き着いてしまう。
それでも前を向こうと思ったのか、育った地元に赴き、母と過ごした病院に向かってみたのだが。
建物は病院どころかこじんまりとした喫茶店。中に居たのは、中年男性の声で話すトイプードルが柘榴を優しく出迎えてくれた。
さらに、柘榴がいつのまにか持っていた変わった形の石の正体のせいで。柘榴自身が『死人』であることが判明。
本の中の世界ではなく、現在とずれた空間にあるお悩み相談も兼ねた喫茶店の存在。
死人から生き返れるかを依頼した主人公・柘榴が人外と人間との絆を紡いでいくほっこりストーリー。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
モニターに応募したら、系外惑星に来てしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。
津嶋朋靖(つしまともやす)
SF
近未来、物体の原子レベルまでの三次元構造を読みとるスキャナーが開発された。
とある企業で、そのスキャナーを使って人間の三次元データを集めるプロジェクトがスタートする。
主人公、北村海斗は、高額の報酬につられてデータを取るモニターに応募した。
スキャナーの中に入れられた海斗は、いつの間にか眠ってしまう。
そして、目が覚めた時、彼は見知らぬ世界にいたのだ。
いったい、寝ている間に何が起きたのか?
彼の前に現れたメイド姿のアンドロイドから、驚愕の事実を聞かされる。
ここは、二百年後の太陽系外の地球類似惑星。
そして、海斗は海斗であって海斗ではない。
二百年前にスキャナーで読み取られたデータを元に、三次元プリンターで作られたコピー人間だったのだ。
この惑星で生きていかざるを得なくなった海斗は、次第にこの惑星での争いに巻き込まれていく。
(この作品は小説家になろうとマグネットにも投稿してます)
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる