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第1章:最後の人類

第9話:森の肉屋さん

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 水炊きがよほど気に入ったらしく、俺は猫たちからまた鍋物を作ってほしいとリクエストされた。
 今度は現代の肉を使おうという話になったんだけど、なぜか俺たちは肉を買いに森へ来ている。

「こんな森の中に肉屋があるの?」
「獲れたて新鮮な肉を売ってくれる肉屋がいるんだよ」
「彼女はいつも同じ場所にいるわけじゃないから、ちょっと探さないといけないけど」

 ……それ、「肉屋」じゃなくて「ハンター」じゃなかろーか?

「ついでに森の中で食べられる植物も手に入るかもしれないよ」
「そうか、山菜が見つかるかもしれないな」

 そんな話をしながら森を歩いていたら、よく知っている植物を見つけた。
 白い小さな花を付けている植物、センダングサ。
 どこにでもはえる雑草だけど、食べられるし薬草にもなるんだ。
 カルシウムや食物繊維、鉄分、ケイ素、亜鉛などを多く含む、栄養豊富な植物。
 母が健康食にハマッていて、この草の新芽を湯がいて、炒めた豚肉と一緒に食卓に出していたよ。

「ハチベエ、これって猫たちも食べられる?」
「ああ、この草なら我々も薬草として使っているよ」

 同行してくれた黒白ハチワレ猫ハチベエに聞いてみたら、猫たちも活用している植物だった。
 人間にとっての薬効、免疫力アップや抗炎症作用は、猫にも有効なのかもしれない。

「じゃあ、新芽を摘んでいこうかな」
「手伝うよ」

 そうして付き添いの2匹の猫たちに手伝ってもらいつつ、センダングサの新芽を摘み始めた直後。
 近くの茂みから鳥が飛び出してきた。

 ケェン! って聞こえる独特の叫び鳴き、鶏くらいの体格に、長い尾羽。

「あ、雉だ」

 って俺が気付いた直後、真横から鳥に飛びかかる影も見える。
 直後、雉の長い首を咥えた白キジ猫が、音もなく着地した。

「あ、肉屋だ」

 俺に同行しているキジ白猫のコーが言う。

 ……って、肉屋じゃなくてハンターだよね?

 雉を一撃で仕留めた腕利きハンターは、獲物を咥えて俺に歩み寄ってくると、俺たちに見せるように雉を置いた。

「やあアンナ、肉を売ってくれる?」
「注文の品は、これでいいかしら?」
「うん、いいよ。獲れたて新鮮だね」

 って、もう商談成立してるっぽい。

 ハチベエに雉を渡した後、アンナと呼ばれた白キジ猫は俺をじーっと見上げてくる。

「あんたがタマね。ちょっとしゃがんでみてくれる?」
「え? こうかな?」

 言われるままにその場にしゃがんだら、アンナがヒョイッと膝に乗ってきた。
 そのまま膝の上で丸まって、ゴロゴロ言い始めたぞ。
 初対面でもスリゴロ系か?
 とりあえず頭から背中にかけて撫でてみよう。

「あぁ、いいわね。人間の手に癒し効果があるっていう言い伝えは本当だわ」
「え? そんな効果あるの?」

 満足そうに目を細めて、アンナが言う。
 そんな効果があるなんて、知らなかったよ。

「今日の仕事の疲れが一気にとれたわ。お礼にその肉は無料タダにしてあげる」

 というけで、ナデナデ対価に雉1羽を貰い、俺たちは研究所に帰還した。




↑雉狩り猫アンナ↑


【第9話の裏話】
猫が雉を獲るエピソードは、作者が餌やりしていた地域猫が元ネタです。
画像の猫アンナは、ある日獲れたて新鮮な雉を咥えてうちの庭に来ました。
くれるのかな? と思ったら、得意そうに玄関前を行ったり来たりしたあと、咥えたままどこかへ去っていきました。
その後3日ほど餌をもらいに来なかったので、多分どこかでコッソリ食べていたんでしょうね。
作者は雉の尾羽(画像)だけ貰いました(笑)
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