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第1章:最後の人類
第3話:ママの代役
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猫文明は二千年前の人間の生活を真似ているところが多く、電気や水道がある。
保護人間の俺には6畳間くらいの1室が与えられ、人間用のベッドやシャワー室やトイレが用意された。
トイレは最初「おまる」だったけど、2~3日で水洗トイレが設置されて驚いたよ。
祖先の猫たちが人間をよく観察していたんだろうなぁ。
昨夜、いつのまにかキスマークをつけられていた俺。
翌日の夜、首元がムズムズするので目が覚めた。
肌を吸われているような?
オマケにちょっとチクチクする何かが肌に当たるし、一定のリズムで押されている感じがする。
昨夜のキスマークの犯人か?!
ハッと気付いた俺は、枕元にあるスイッチを押して明かりをつけた。
「犯人は、おまえか」
明かりがついたので驚いて、俺の首元から口を離した奴。
ちょっと寝ぼけた顔の白仔猫がこちらを見た。
「あ、バレちゃった」
テヘッという感じで笑うのはミカエルだ。
昨夜もこうやって吸い付いてたんだろう。
お前、子供だろ?
人にキスマークつけるとか、10年早い。
いやまてよ? 猫の年齢1歳は人間の18~20歳か。
じゃあ1年早い! って言えばいい?
「なんで俺の首元を吸ってるんだ?」
とりあえず、理由を聞いてみよう。
なるべく冷静を装って。
まさか、人生初のキスマークつけた奴が猫になるとは。
俺以外の人間は絶滅しちゃったから、人間からキスマークつけられることは永遠に無いけど。
「ボクね、寝るときいつもママのオッパイ吸ってるから、ついクセでやっちゃった」
「母ちゃんのオッパイ代わりかい」
白状した仔猫の言うことが、赤ちゃんらしくてホッとした。
とりあえず大人のキスマークではないようだ。
「ママが帰ってこない日はパパと寝てたんだけど、パパも出かけているからタマにお願いしたの」
「パパと寝るときはオッパイ吸ってないだろ?」
「んーん。パパのも吸ってるよ」
……お父さん、母性本能(?)すげーな。
そういや、オス猫でも仔猫をかわいがって乳を吸わせる奴がいるとかいう話を聞いたな。
二千年くらい前だけど。
「だから、タマもお願い~」
開き直った、というか悪気は全く無いらしい、ミカエルのおねだり。
キュルンと丸い瞳で見つめて、ゴロゴロ言いながらスリスリしてくるのズルい。
まさに天使のおねだりだ。
こんなの拒否れないぞ。
「もう、好きにして」
観念した俺は、胸元に仔猫を乗せたまま、肌を吸われるのを放置して寝ることにした。
ちょっと出てる爪がチクチクするけど、まあそんなに痛くはない。
ゴロゴロ音がしなくなる頃には、爪も引っ込んでいた。
翌朝もキスマークだらけになるかと思ったら、1ヶ所に落ち着いたのが幸いだ。
猫文明にはキスマークというものは無い(毛皮で隠れて見えないから?)のか、他の猫たちは俺の首元が赤くなっているのを見ても、虫刺されくらいに思ったらしい。
「そこ、痒くない?」
「かゆみ止めの薬を使うかい?」
「首の後ろに垂らして使う虫よけがあるけど、つけておくかい?」
「痒くないし自然に治るから平気だよ」
気遣いは嬉しいけれど。
とりあえず、猫用と思われる薬の使用は遠慮しておこう。
↑首の後ろに垂らして使う虫よけ……
【第3話の裏話】
白い仔猫ミカエルは、作者が学生の頃に学園敷地内で拾って飼っていた仔猫の名前です。
仔猫にチューチューされて人生初のキスマークをつけられたシーンは、作者の実体験が元ネタになっております。
首から胸にかけて数ヶ所、蚊に刺されたみたいに赤くなり、当時のバイト先で「あらぁ、昨日はお盛んだったのね」って言われました。
保護人間の俺には6畳間くらいの1室が与えられ、人間用のベッドやシャワー室やトイレが用意された。
トイレは最初「おまる」だったけど、2~3日で水洗トイレが設置されて驚いたよ。
祖先の猫たちが人間をよく観察していたんだろうなぁ。
昨夜、いつのまにかキスマークをつけられていた俺。
翌日の夜、首元がムズムズするので目が覚めた。
肌を吸われているような?
オマケにちょっとチクチクする何かが肌に当たるし、一定のリズムで押されている感じがする。
昨夜のキスマークの犯人か?!
ハッと気付いた俺は、枕元にあるスイッチを押して明かりをつけた。
「犯人は、おまえか」
明かりがついたので驚いて、俺の首元から口を離した奴。
ちょっと寝ぼけた顔の白仔猫がこちらを見た。
「あ、バレちゃった」
テヘッという感じで笑うのはミカエルだ。
昨夜もこうやって吸い付いてたんだろう。
お前、子供だろ?
人にキスマークつけるとか、10年早い。
いやまてよ? 猫の年齢1歳は人間の18~20歳か。
じゃあ1年早い! って言えばいい?
「なんで俺の首元を吸ってるんだ?」
とりあえず、理由を聞いてみよう。
なるべく冷静を装って。
まさか、人生初のキスマークつけた奴が猫になるとは。
俺以外の人間は絶滅しちゃったから、人間からキスマークつけられることは永遠に無いけど。
「ボクね、寝るときいつもママのオッパイ吸ってるから、ついクセでやっちゃった」
「母ちゃんのオッパイ代わりかい」
白状した仔猫の言うことが、赤ちゃんらしくてホッとした。
とりあえず大人のキスマークではないようだ。
「ママが帰ってこない日はパパと寝てたんだけど、パパも出かけているからタマにお願いしたの」
「パパと寝るときはオッパイ吸ってないだろ?」
「んーん。パパのも吸ってるよ」
……お父さん、母性本能(?)すげーな。
そういや、オス猫でも仔猫をかわいがって乳を吸わせる奴がいるとかいう話を聞いたな。
二千年くらい前だけど。
「だから、タマもお願い~」
開き直った、というか悪気は全く無いらしい、ミカエルのおねだり。
キュルンと丸い瞳で見つめて、ゴロゴロ言いながらスリスリしてくるのズルい。
まさに天使のおねだりだ。
こんなの拒否れないぞ。
「もう、好きにして」
観念した俺は、胸元に仔猫を乗せたまま、肌を吸われるのを放置して寝ることにした。
ちょっと出てる爪がチクチクするけど、まあそんなに痛くはない。
ゴロゴロ音がしなくなる頃には、爪も引っ込んでいた。
翌朝もキスマークだらけになるかと思ったら、1ヶ所に落ち着いたのが幸いだ。
猫文明にはキスマークというものは無い(毛皮で隠れて見えないから?)のか、他の猫たちは俺の首元が赤くなっているのを見ても、虫刺されくらいに思ったらしい。
「そこ、痒くない?」
「かゆみ止めの薬を使うかい?」
「首の後ろに垂らして使う虫よけがあるけど、つけておくかい?」
「痒くないし自然に治るから平気だよ」
気遣いは嬉しいけれど。
とりあえず、猫用と思われる薬の使用は遠慮しておこう。
↑首の後ろに垂らして使う虫よけ……
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白い仔猫ミカエルは、作者が学生の頃に学園敷地内で拾って飼っていた仔猫の名前です。
仔猫にチューチューされて人生初のキスマークをつけられたシーンは、作者の実体験が元ネタになっております。
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