【画像あり】八重山諸島の犬猫の話

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野犬から愛犬へ「ルーク」

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 その日、保健所へ行ったのは別の用事のためだった。
 それがなぜ収容動物がいる犬舎へ入ることになったのか?
 もう全然覚えていないのだけど、多分何か運命みたいなものだったのかもしれない。

 当時の保健所には、3頭の犬が収容されていた。
 1頭はかわいい盛りの仔犬。
 その隣は体重10キロ未満と思われる成犬。

 仔犬は人懐っこく、クンクンキュンキュンかまってアピールを続けていた。
 対照的に、隣の成犬は置物のように動かず、声も出さなかった。

 チビッコ(仔犬)はすぐ貰われそう。
 って思ったとおり、既に問い合わせがきているとのことだった。
 問題はその隣の成犬で、人馴れしていないので譲渡は難しいという。

 野犬。
 人と共に暮らした経験のない犬のこと。
 後に「ルーク」と名付けることになる黒犬は、人間を怖がって逃げ回る犬だった。

 ルークは極度に人との接触を嫌がる。
 噛まないのが救いというべきか。
 たぶん「噛んでる暇があったら逃げる!」とか、「人間に触れたくないから噛まない!」とか。
 そんな心理状態なんだと思う。
 触れない犬は散歩に行けないし、狂犬病予防接種やワクチン接種、病気になった時に病院にかかるのに苦労する筈。

 どうしたものかと頭を悩ませているうちに1ヶ月が過ぎ、保健所の職員さんから紹介されたのは、1人の犬ボランティアさん。
 石垣島で10年以上、保健所の犬を救い続けてきた人だった。

「あなたが里親になるのなら、お手伝いします。野犬は普通の犬のようには飼えないので、必要なものや取り扱い方を教えますよ」

 その言葉に背中を押されて、野犬の里親になることを決意。
 そうして、ベテラン犬ボラさんから野犬についていろいろ学んだ。
 今の我が家にドッグランがあるのも、その出入口がオートロックなのも、その人から教わってのこと。

 一方、ルークは人馴れの基礎を教えるため、野犬慣れしたボラさんが預かってくれた。
 おかげで1ヶ月後には自分から寄ってきてオヤツを受け取るくらいになったものの、撫でようとすれば逃げる。
 6ヶ月後にボラさん宅から我が家へ移動させる際には、なかなか捕まらないので保健所の捕獲員さんに手伝ってもらった。

 


 ルークが我が家に来たばかりの頃、我が家には保護犬チャチャがいた。
 ドッグランでは人馴れしたチャチャはリードをはずして遊ばせたけど、ルークはダブルリードでドッグランの端から端へ伸ばしたロープに繋いで遊ばせている。
 このチャチャが、ルークの人馴れ修行第二の師匠となった。

 


 チャチャは呼んでも呼ばなくても寄ってくる。
 触れてもらうことに幸せを感じる犬。
 ニコニコと嬉しそうに人と触れ合うチャチャを見て、ルークは人間との接し方を学んでいった。

 ニンゲンハ、コワクナイ。
 タベモノヲ、クレル。

 ……ってことくらいは理解し始めたのかもしれない。

 


 ルークは身体能力がとても高く、柴犬より少し大きいサイズの身体で10センチ角のマス目を通り抜けた。
 通り抜けたはいいがダブルリードのおかげで脱走には至らず、動けなくてクンクン鳴いているところを近所の人が手伝って戻してくれた。
 暴風ネットは食い破ってしまう。
 近所の犬ボラさんがアドバイスをくれて、小さいマス目のワイヤーメッシュを重ねて取り付けて、脱走対策にした。
 以降ルークはマス目を通り抜けていない。

 


 首輪を食いちぎったこともある。
 首輪もリードもダブルで、頑丈な皮首輪は無事だったので脱走には至らず。
 しかし、自分の首についている首輪を食いちぎるとは想定外。
 野犬の身体能力おそるべし。

 


 うちに来てから2ヶ月経つ頃、やや強引ながら多少触れるくらいに慣れた。
 リードを掴んで動きを封じて、親指でぽっぺムニムニ。
 意外にもそんなに嫌そうな顔はしていない。
 サンタ帽子はクリスマス近かったので着けてあげた。
 頭に乗っている物はあんまり気にしていない様子。

 いろいろやらかしながら、少しずつ変わっていったルーク。
 懐いた! と感じたのは、我が家に来てから3ヶ月が経つ頃だった。

 


 2019年1月2日。
 リードを掴んでいなくても逃げずに、ルークは大人しく撫でられた。

「君を信じてもいいの?」

 澄んだ黒い瞳に、そう問いかけるルークの「声」を感じた。

 生まれてから保健所に収容されるまで、人間と暮らしたことがない野犬。
 人間とどう接していいのか知らなくて、戸惑っていただけかもしれない。
 大人しく撫でられる野犬はこの時、愛犬へと変わった。
 ルークはその後、飼い主だけでなく初対面の人にもニコニコしながら撫でられる人懐っこい犬になった。
 野犬状態だった頃の話をすると、初めて見る人が驚くほどの変わりよう。
 どういう心理状態なのか?
 それはルークのみぞ知る。
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