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頭打ったら性格変わった猫「あばれるくん」
しおりを挟む2021年1月、真冬にTNRしたその猫は、大層 な暴れん坊だった。
「この猫ものすごく暴れるから気を付けて」
と忠告する捕獲担当者から渡された、Sケージ入りの黒白猫♂。
彼は移動中の車内で、ケージに入った状態で盛大に暴れてくれた。
ガタガタガタッ、ガシャン! と音がしたかと思えば、車内で重ねて積んでいた折り畳みケージが崩れる。
バリパリパリッ! と音がしたかと思えば、車の後部ドア内側の布張り部分を引っ掻いている。
2回目までは音に驚き停車して確認したけれど、3回目からは「あ~、好きにしな」と気にしないことにした。
家に連れ帰ってTNR猫の一時保護場所にしているガレージにケージを置いて1泊させて、翌朝搬送ボランティアに渡す際には、車内の安全のため段ボール箱に入れてみた。
病院でも取り扱いに気を付けてもらおうと、張り紙もしておいた。
TNRの去勢手術と術後の抗生剤投与期間が終わり、暴れん坊リリース。
地域猫登録名は「あばれるくん」にしておいた。
自分の担当する餌場の猫じゃないから、リリース後は滅多に会えないだろうと思ったけれど。
なんと4ヶ月後、あばれるくんは大怪我で治療保護された。
頭蓋骨陥没骨折。
生きているのが不思議なくらいだと獣医師は言う。
膿が溜まって膨れ上がった頭部を切開したり。
陥没して砕けた頭蓋骨の欠片を取り除いたり。
治療は長期になり、頭蓋骨に穴が開いているのでリリースしない方がいいとの獣医師診断を受けて、あばれるくんはラリマーの保護施設に常駐する猫になった。
抜糸を済ませて、室内フリーになったあばれるくん。
奇跡のように怪我が治り、食欲も旺盛になり、悠々と施設内を闊歩している。
そんな彼の性格は、別猫のように穏やかになった。
あばれるくんは、暴れない猫になった。
譲渡会で施設内にお客さんが入って来ると、ゆっくり歩み寄り頭や身体を寄せる。
撫でてもらうと気持ちよさそうに目を細める。
TNR前後のトンデモ暴れん坊と同じ猫とは思えないくらい性格が変わった。
施設に新入りが来ると、そっとケージの隣に座る。
施設のことを新入りに教えてやっているのか、励ましているのか。
それはまるで、面倒見のいい「おやっさん」のようだ。
でもどういうわけか、イケメン♂猫は大嫌い。
フサフサだったり真っ白だったり、見目麗しい男子(猫)を目の敵にする。
イケメン猫をいじめるから、その猫をフリーにする時間、ケージに封印されるあばれるくん。
「俺よりルックスが良いオスは嫌い」
たぶん、こんな理由じゃない? と、施設を手伝う人々から噂されている。
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