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ダイクロイックアイの猫「ラムー」

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 2021年9月2日。
 その猫は、月明かりに照らされた庭に現れた。
 囁くような小さな声で鳴く、スリゴロ白茶猫。
 彼は不思議な瞳の持ち主だった。

 


【ダイクロイックアイ】
 虹彩異色症の一種。
 1つの目の中に2つの色が存在している。
 目の周りを異なる色が縁取っているように見える中心型虹彩異色症と、目の一部に異なる色が見られる扇型虹彩異色症がある。

 この猫は左目の上半分が黄色、下半分が青、扇型虹彩異色症だ。


 我が家の庭に見知らぬ猫が来ることは毎年ある。
 みんなオスばっかりなので、多分ナワバリ拡大で流れてくるんだろう。
 この猫もオスだった。

「ごはんくださ~い」

 猫は、か細い声でそう言った。
 ……ように聞こえた。

(また流れのオスが来たな。しばらく様子を見て捕まえられそうならTNRしよう)

 そう思いつつ、新入りにゴハンを差し出すと、なんと初対面からすり寄って来る。
 毛並みも綺麗だし、どこかの飼い猫が脱走して迷子になって来たんだろうか?

 飼い猫の可能性を考えて、迷子ページ(フェイスブックの石垣島 犬猫 迷子/保護/目撃等 情報交換グループ)に投稿したり、アメブロで呼びかけたりしてみた。
 探している飼い主がいれば連絡がくるだろうけど、それらしき問い合わせは無し。

 ダイクロイックアイなんて珍しい目をした猫なら、飼い主の友人知人が記事を見て気付くだろう。
 けれど、それもないのでTNRしようと捕獲。
 手術の予約をして一時保護しつつ、「ラムー」と名付けた2~3日後。

 なんと、里親希望の問い合わせがきた。

 ダイクロイックアイの猫を探し求めていたという里親さんは、海の向こうの人。
 直接届けに行けないので、関東にいるボランティアHIさんに環境チェックをお願いした。
 ベテランボランティアの目で確認してもらった飼育環境は、石垣島では揃えられないような充実した設備が整えられていたという。

 石垣島で地域猫生活をしていたら、2~3年しか生きられない。
 まだ若そうな猫だし、完全室内飼いで暮らせば10年くらいは生きられる筈。
 人懐っこく穏やかな猫で、ケージに入れても平然としている。
 これなら室内飼いに向いていると思い、送り出すことにした。

 里親さんのところには先住猫がいると聞き、その相性によっては帰ってくる可能性も考えたけど。
 環境変化に強いらしい彼はすぐ馴染み、先住猫とも仲良くなったらしい。
 今では猫同士でくっついたり、里親さんに甘えたり、ちょっと幸せ太りした様子がLINEで送られてくる。
 それを見るたびに、送り出せて良かったと思う。

 


 ラムーという呼び名は空輸前の一時保護期間だけ。
 里親さんからは「ルキ」という正式名をもらっている。
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