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台風前に自主避難してきた猫「キジトラ」
しおりを挟む2017年の夏のこと。
自宅から車で5分ほどの別荘地に居着いている猫が、我が家の玄関前に現れた。
「えっ? なんでここに?」
猫の名前は「キジトラ」。1歳の女の子。
毛色そのまんまやんっていうツッコミはおいといて。
彼女にゴハンは毎日あげているけれど、家に連れ帰ったことは無い。
なのに猫は餌やりの自宅を突き止めて訪問してきた。
「にゃあ~ん (ここでゴハン食べる~)」
「あ~、はいはい」
なんとも可愛いストーカーである。
うちへ来てくれるのなら、餌場まで行く手間が省けてちょうどいい。
そうして自宅の庭での餌やりが始まった。
この猫は、2016年にとある別荘に居着いた母猫から生まれた。
このとき、現場にいた猫は13匹。
成猫オス2匹、成猫メス3匹、仔猫が8匹。
仔猫は春生まれと思われる子らで、生後半年くらいになる前に3匹が交通事故で逝った。
年末の時点で別荘にいたのは10匹。
翌年4月、その数は30を超えた。
どういうことか?
それは、避妊去勢手術をしていなかったから。
別荘の主は餌だけやってTNRはしていなかったのだ。
「お金は払うから餌やりしといて」
別荘の主に依頼された僕は、当時はまだ猫の繁殖力の凄まじさを知らなかった。
避妊去勢手術をしていない猫たちの半数は、1歳になるかならないかの若い猫たち。
10匹が30匹になったら、誰でも慌てるのではないだろうか?
これはまずいと感じて、人懐っこい猫から順に避妊去勢手術を開始。
キジトラは特に懐いていたので、最初に手術ができた。
当時はTNRや耳カットを知らなかったので、キジトラには耳カットは無い。
後に目印代わりに首輪を着けたけど、いつもすぐどこかで落として失くしている。
誰もいない別荘よりも我が家の庭がいいと思ったのか、毎日来るようになったキジトラに小屋を用意してみた。
飼い猫にしようかと家に入れてみたけれど、悲しそうに鳴き続けて1週間飲まず食わず排泄もしなくなったので、諦めてリリースしたこともある。
キジトラは屋内に入るのがストレスに感じるようだった。
そんなキジトラが、台風が近付きつつある日に玄関を開けたら中へ入ってきた。
いつもは絶対に入ってこない猫が、まるで自分の家みたいに迷わず入ってきて玄関内でオスワリするという珍事。
え? 屋内はストレスになるんじゃないの?
驚きつつゴハンをあげたら、普通に食べる。
キジトラはそのまま台風が去るまで家の中で大人しく過ごし、台風明けに扉を爪でカリカリし始めた。
「にゃあ~ (外に出して)」
「このままうちの子にならない?」
「にゃあぁぁぁ~ (やだ。外がいい)」
家の中で大人しくしていたのは台風の間だけ。
キジトラは野生の勘で暴風雨がくることに気付き、以前入ったことがある家の中を避難場所にしたらしい。
台風が去った後、彼女は屋外へ帰っていった。
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