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【猛猫リンネの物語】2024.4.15〜

第23話:塩ビパイプを使ってみた

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「ウゥゥ~! シャーッ! (また変な物持ってきたわね!)」
「リンネが噛むからサランラップの芯が破れちゃったし、メイクマンで良さそうなのを見つけたから買ってきたんだよ」

 ケージ固定の食器にドライフードを注ぎ入れる道具を変えてみた。
 DIYコーナーに売っている塩ビパイプと、接続パーツ。
 接続パーツの口径の大きい側が、前から持っている漏斗にちょうどいいサイズ。
 塩ビパイプはケージの格子の間を余裕で通る。
 サランラップの芯より丈夫な給餌器具を早速試してみると、長さ1mのパイプがケージの真上から底まで届くし、屈まなくても立ったままザラザラーッと素早く注ぎ込めた。
 いいなこれ。お値段もパイプと接続パーツ合わせて500円未満だし。

「保健所の職員さんが狂暴な犬の給餌に似たような物を使っていたよ」

 リニューアルした猛猫用給餌道具の話をしたら、近所の人がそんなことを言う。
 保健所の犬たちはケージに食器が固定されていて、餌はパイプと漏斗をくっつけたような道具を使って注ぎ入れる。

 そうか、なんかどっかで見たような気がすると思ったら、保健所の給餌道具に似てたのか。

「シャーッ! (何よこれ!)」
「はいはい、ゴハンが出るよ~」

 食器にいつもと違う筒が差し入れられて、困惑気味に怒るリンネ。
 ドライフードが出てきたのを見て、ようやく少し落ち着いた。

「そうだ、マイクルたちにもカリカリを置いておこう」
「ウアーオ! カッ! (うちの子に変な物近付けんな!)」

 仔猫用ドライフードも買ってきたので、試しに置いてみた。
 あっちもこっちも仔猫だらけの石垣島、お店にあったピュリナワン仔猫用は1袋だけ。
 どうにか手に入れたそれを、マイクルたちがいる近くに注ぎ入れてみた。
 お皿に入れて置くのは猛猫パンチでひっくり返されるだろうから、ケージの底トレーの角に少量そのまま置いた。

「キュー、キュー (なにか入ってきたでち)」
「キューゥ、キューゥ (粒々が出てきたでち)」
「キュ~ッ (味見してみるでち)」

 仔猫5匹のうち3匹がモソモソと近付いてくる。
 黒猫サンテとサビ猫ジョワが特に積極的。
 煮干しを齧った経験あるマイクルは、仔猫用ドライフードに近付くと、迷わず口に入れた。
 カリ、カリ、と小さな音が聞こえてくる。

「マイクル、なかなかチャレンジャーだな」

 匂いに慣れさせるつもりで置いたのに、初見で食べるとは。
 離乳食スッ飛ばしてドライフードをそのまま食べたマイクルは、逞しい食いしん坊かもしれない。

 マイクルに驚いていたら、サンテとジョワまで食べ始めた。
 この兄弟、みんな野生の食いしん坊か?
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