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第8章:魔族と世界樹の子

第79話:痛覚封印

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その後も、エカは創造神かみさまの指示するままに爆裂魔法を使い続けた。
爆裂魔法も他の魔法と同じで、使えば使うほど威力や効率が上がるらしい。

魔法を使う対象は、最初は黒い玉で動いたりしなかったけど、やがて対象は様々な形や動きをするものに変わっていった。
動くものは逃げることもあれば、エカに向かってくることもあった。

『痛みを消す支援魔法を使いなさい』
「はい!」

創造神かみさまは修行に容赦無くて、攻撃対象から反撃を食らって流血するエカに、痛みを感じなくなる魔法を使うよう指示する。

痛覚封印アネステジー!」

学園で学んでいたから、エカはすぐそれを使った。

その支援魔法は、戦闘中に負傷した魔法使いたちが、集中力を途切れさせない為に使うもの。
傷を治すわけではないから流血は続いてるけど、エカは痛みを感じなくなった。
矢のようなものを飛ばしてくる黒い人型を、矢が刺さっても動じなくなったエカが爆散させた。


『本来は生命力を半分ほど消費したところで止め、翌日にまた修行に来るのだが……』

再び生命力を使い切って倒れたエカに、創造神かみさまの【声】は聞こえてない。

『……不死鳥の主となれば、短期間で成長出来るのだな』

グッタリしたエカを翼で抱いて蘇生するボクに、創造神かみさまが言う。

今回の修行で、ボクは分った事がある。
エカは、自分の死に対する恐怖感が無い。

『それ以上使えば心臓が止まると分かってるのに、どうして魔法を使えるの?』

意識が戻ったエカに、ボクは聞いてみた。
いくら蘇生してもらえると分かってても、こんなに躊躇いなく生命力を使い切れるものかな?

『フラムを信じてるのもあるけど、苦痛が無いからかなぁ』
『爆裂魔法の使い手は、死に対する恐怖感や、死ぬ際の苦痛が無いのだよ』

ボンヤリしながら答えるエカに、創造神かみさまがそのワケを告げる。

爆裂魔法は、魔王とそれに従う魔族にのみ使うもの。
使う事を躊躇っていたら、敵を倒す前に倒されたり捕獲されたりしてしまう。
だからエカは、命を削る魔法の使用に躊躇いが無い者として創られたらしい。


『もう1つの爆裂魔法は、今は使わなくてよい。起動言語キーワードの設定のみ済ませておきなさい』

創造神かみさまの【声】が新たな指示を出す。

使わなくてよいと言われた魔法が何か、エカもボクも知ってる。

エカが設定した起動言語は【存在の完全破壊デストリュクシオン】。
使用者の肉体が消滅する代わりに、発動する唯一無二の極大魔法。
魔王と呼ばれる者を、破壊する魔法だ。
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