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第5章:黒髪の少女
第48話:シッポの挨拶
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「よろしくお願いします」
お城の人々が、ソナに差し出すのは手ではなく長いシッポ。
王様から、ソナが手を差し出されると怖がると教えられた猫人たち。
彼等はソナを気遣い、様々な色彩の柔らかな猫毛に覆われたシッポを挨拶代わりに差し出す。
そんな猫人たちの優しさは、ソナの心から少しずつ哀しみと恐れを消してゆく。
「ありがとう。よろしくお願いします」
シッポの優しさに触れて、ソナは微笑む。
元の世界で虐められて死を選んだ女の子は、過去の記憶を捨てて新しい世界で生きる事を決めた。
「私はナゴの母のジャミだよ。ばぁばと呼んでくれて構わないからね。敬語もいらないよ」
初めて会う白い猫人が、微笑みと共に差し伸べるのも長いシッポ。
王様のお母様、つまり王太后のジャミ様は、庶民の出で占術使いの女性だ。
猫人は大人になった後は容姿がほとんど変わらないから、ジャミ様がお年寄りという感じはしない。
「もしも将来の事が気になるなら、ばぁばの占いでよければ道を示してあげられるよ」
ジャミ様は、透き通った宝石みたいな青い瞳でソナを見つめる。
「ばぁば、私は魔法使いになれる?」
「もちろんさ。ソナから大きな魔力を感じるよ」
ソナの問いに、ジャミ様は微笑んで答えてくれた。
「わたし、侍女さんたちみたいに服やアクセサリーを作ったり、エカみたいに狩りが出来るようになりたい」
「異世界人はみんな、この世界へ来る時に神様から贈り物を貰うからね。ソナはまだ子供だから眠っている力もあるけど、いずれ目覚めて色んな事が出来るようになるよ」
そう言ってもらえたソナは、嬉しそうに笑う。
いつか出来るようになる未来が、楽しみになったみたいだよ。
医務室で怯え切っていたのが嘘のような、明るい表情だ。
「エカ、ソナを支えてあげるんだよ」
それからジャミ様は、エカに視線を移して言う。
「お前さんはソナを導く者。幸せになれるように傍に居てあげなさい」
「はい」
答えたエカは、もちろんそのつもりだ。
雪の中で死んでいたソナを見つけて、蘇生を望んだ時からその運命に関わる予感がしていた。
お城暮らし最初の夜、エカは与えられた自室で寝ようとしたら、ソナに引き止められた。
「やだ…置いて行かないで…」
「と、隣の部屋で寝るだけだよ」
エカのシッポをギュッと握って涙目のソナ。
困惑したエカが鼻の穴広げて真顔になるんだけど、ソナは全く気にしない。
「怖くて眠れないの。エカ、一緒に寝て…」
「わ、分った」
来たばかりの場所、独りになるのが怖いソナに必死で頼まれて、エカは添い寝を引き受けた。
エカが誰かと寄り添って眠るなんて、学園入学よりずっと前の幼少期以来だね。
「大丈夫だよ。もしも怖いものが出たら、俺の魔法でやっつけるからね」
「うん。ずっと傍に居てね…」
エカにピッタリくっついて、シッポで撫でてもらいながら、ソナは眠りに落ちていった。
お城の人々が、ソナに差し出すのは手ではなく長いシッポ。
王様から、ソナが手を差し出されると怖がると教えられた猫人たち。
彼等はソナを気遣い、様々な色彩の柔らかな猫毛に覆われたシッポを挨拶代わりに差し出す。
そんな猫人たちの優しさは、ソナの心から少しずつ哀しみと恐れを消してゆく。
「ありがとう。よろしくお願いします」
シッポの優しさに触れて、ソナは微笑む。
元の世界で虐められて死を選んだ女の子は、過去の記憶を捨てて新しい世界で生きる事を決めた。
「私はナゴの母のジャミだよ。ばぁばと呼んでくれて構わないからね。敬語もいらないよ」
初めて会う白い猫人が、微笑みと共に差し伸べるのも長いシッポ。
王様のお母様、つまり王太后のジャミ様は、庶民の出で占術使いの女性だ。
猫人は大人になった後は容姿がほとんど変わらないから、ジャミ様がお年寄りという感じはしない。
「もしも将来の事が気になるなら、ばぁばの占いでよければ道を示してあげられるよ」
ジャミ様は、透き通った宝石みたいな青い瞳でソナを見つめる。
「ばぁば、私は魔法使いになれる?」
「もちろんさ。ソナから大きな魔力を感じるよ」
ソナの問いに、ジャミ様は微笑んで答えてくれた。
「わたし、侍女さんたちみたいに服やアクセサリーを作ったり、エカみたいに狩りが出来るようになりたい」
「異世界人はみんな、この世界へ来る時に神様から贈り物を貰うからね。ソナはまだ子供だから眠っている力もあるけど、いずれ目覚めて色んな事が出来るようになるよ」
そう言ってもらえたソナは、嬉しそうに笑う。
いつか出来るようになる未来が、楽しみになったみたいだよ。
医務室で怯え切っていたのが嘘のような、明るい表情だ。
「エカ、ソナを支えてあげるんだよ」
それからジャミ様は、エカに視線を移して言う。
「お前さんはソナを導く者。幸せになれるように傍に居てあげなさい」
「はい」
答えたエカは、もちろんそのつもりだ。
雪の中で死んでいたソナを見つけて、蘇生を望んだ時からその運命に関わる予感がしていた。
お城暮らし最初の夜、エカは与えられた自室で寝ようとしたら、ソナに引き止められた。
「やだ…置いて行かないで…」
「と、隣の部屋で寝るだけだよ」
エカのシッポをギュッと握って涙目のソナ。
困惑したエカが鼻の穴広げて真顔になるんだけど、ソナは全く気にしない。
「怖くて眠れないの。エカ、一緒に寝て…」
「わ、分った」
来たばかりの場所、独りになるのが怖いソナに必死で頼まれて、エカは添い寝を引き受けた。
エカが誰かと寄り添って眠るなんて、学園入学よりずっと前の幼少期以来だね。
「大丈夫だよ。もしも怖いものが出たら、俺の魔法でやっつけるからね」
「うん。ずっと傍に居てね…」
エカにピッタリくっついて、シッポで撫でてもらいながら、ソナは眠りに落ちていった。
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