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第5章:黒髪の少女

第39話:凍死していた少女

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アサケ学園の医務室は、医学部の校舎内にある。
入学時の学園見学でその場所を知っているエカは、空間移動ワープ魔法で迷わずそこに着いた。

「にゃっ?!」

医務室にいた白猫人の先生、いきなり現れたエカと少女に驚いてシッポがブワッと膨らんだ。

「すいません、この子を休ませてあげて下さい!」

まだ意識の戻らない女の子を抱きかかえて、エカが必死でお願いする。

ボクの完全蘇生の力で、身体にはもう何も異常は無いけどね。
さっきまで心臓も呼吸も止まっていたから、しばらく休ませた方がいい。

「ここへ寝かせてあげて」

困惑しつつもそこは医療関係の先生、すぐにベッドを指差して言った。

薄い布地のワンピースを着ている女の子は靴も靴下もはいてなくて、裸足だった。
クセの無い長い髪は闇夜の黒色、目は閉じているから色は分からない。

「異世界人…ニホンから転移して来た子かしら? 一体何があったの?」

医務室の先生が冷静さを取り戻して、エカに状況を聞いた。

「冬の森で、雪に埋もれて死んでたんです」
「え?!」

エカの答えに、先生のシッポがまた膨らむ。

「死んだのは今日だと思います。不死鳥フラムの完全蘇生の力で生き返ったから」
「…あぁ、そうか君は不死鳥フェニックス主人マスターだったわね」

続くエカの説明で、先生は少しホッとしつつ納得した。

「異世界からの迷い人かしら。たまに生存困難な環境に放り出されて死ぬ転移者がいるのよ」

魔道具を使って女の子の健康状態をチェックしながら、先生は教えてくれた。

最上級エリアである冬の森に放り出された女の子。
身体に傷は無かったから、死の直接の原因は身体が冷えすぎた事だろうね。

「この子は運が良かったわね。例年ならこの時期、冬の森に入る学生はいないから」

眠り続ける女の子の頬を優しく撫でて、先生は言う。

エカたちがダンジョン検定を次々に突破してなかったら、女の子を見つける事は出来なかったよね。
むしろ、もしも冬の森に入る日が明日だった場合でも、蘇生は出来なかったよ。
でも出来れば、凍死する前に見つけてあげたかったね。

「きっと、寒くて心細かったよね」

エカも先生の真似をして、女の子の頬をそっと撫でた。

「俺、実習の途中なんで、戻りますね。後で様子見に来ます」
「分ったわ」

パーティメンバーが待っているので、エカは女の子を気にしつつもベッドから離れる。
空間移動ワープ魔法を起動。
現れた転送陣の真ん中に立つと、先生にペコリと頭を下げてその場から移動した。
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