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第5章:後日譚
EPILOGUE(ケイ視点)
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クリスマスが近い冬の日
フワフワと、羽毛のような雪が舞い落ちる夜に
俺は、あの子を見つけた
誰もいない公園に独りぼっちで
あの子はブランコに座って泣いていた
収録を終えた帰り道。
駐車場へ向かうため、真夜中の公園を通ったのは、運命みたいなものだろうか。
深夜といっていい時間帯、普通そんな時間に公園に子供は来ない。
「どうした? 道に迷ったか?」
最初は迷子かと思って、声をかけながら歩み寄った。
多分小学生くらいかな?
問いに対してフルフルと首を横に振る。
近付いた俺の方を振り返った顔を見たとき、柄にもなくドキッとした。
仕事柄、容姿のいい子供は見慣れている。
が、その子は飛び抜けて可愛かった。
キッズモデルだった俺の子供の頃より綺麗な男の子だ。
「もう遅いから家に帰った方がいいよ、風邪ひくぞ」
心配して言ってみると、またフルフルと首を横に振る。
ワケありだ、と直感的に気付いた。
この子は何か事情があって、家に帰れないんだと思う。
「君、行くとこないの? うち来る?」
「行っても、いいの?」
俺のその言葉を聞いた途端、初めて喋った男の子。
それが、後に俺の養子で恋人となるヒロだった。
「うちにおいで。俺はケイ。君の名前は?」
「弘樹」
「じゃあヒロと呼ぶぞ。薄着で寒そうだから抱っこしていいか?」
「うん」
本人の許可のもと抱き上げてみた身体は、思っていたより細くて軽かった。
身長のわりに軽すぎる。
車に乗せて帰宅して、身体を温めるために風呂に入れてやったら、肋骨が浮き出るくらい痩せていると分かった。
育児放棄だ。
「ヒロ、今日はゴハン食べたか?」
「ううん」
「昨日は何か食べたか?」
「お米、食べた」
「オカズは?」
「ない」
「お米だけ?」
「うん」
ヒロは食事をマトモに与えられず、台所の米びつから生米を掴み出して食べていた子だった。
とりあえずレトルトのシチューを温めて食べさせたら、ガツガツ食べて「こんな美味しいの初めて食べた」と笑顔を見せた。
危うく餓死するところだった子。
こんな酷い扱いをする親のところには返せない。
そんな思いを込めて、俺は痩せ細った子供を抱き締めた。
ヒロは愛情に飢えていて、縋るように抱きついて甘えてくる。
ヒロにはもっと幸せを感じて生きてほしいと思う。
親が愛してやらないのなら、俺が愛情を注ごう。
児相を経て引き取ったヒロを抱き締めて、俺は何度も「愛してる」と囁いた。
なるべく傍にいてあげよう。
留守番で寂しい思いをさせたくないから、学校が休みの日にはアフレコスタジオやロケ地へ連れていった。
その影響で、ヒロは容姿の良さだけではなく、秘められた様々な才能を開花していく。
翔太に習って料理が上手くなったり、絵美に習って歌が上手くなったり。
カメラを向けると、全く緊張する様子もなく「魅せる笑顔」をする。
幾つかのプロダクションから、ヒロを子役タレントにと声がかかった。
大手プロダクション「ジュネス」の社長は特に熱心にスカウトにくる。
「あの子はダイヤの原石だ。私に任せてくれたら間違いなくスターになれるよ」
「ヒロはまだ子供ですし、本人がその気になるまで待ってもらえませんか?」
繰り返しそう言われた。
でも、俺はヒロの考えを尊重したいと思う。
本人の意思が固まるまでは、芸能界には入れたくない。
スカウトを断る裏側で、ヒロを誰にも渡したくないと思ったのは、俺の我儘だろうか?
ヒロが俺に恋愛感情らしきものを抱き始めたのは、中学生の頃から。
一緒に風呂に入るときや添い寝するときに、一瞬恥じらうような仕草をする。
もしや? という期待。
それが何かを確かめるため、15歳の誕生日に聞いてみた。
「ヒロ、そろそろ彼女できたか? できたら紹介しろよ」
「彼女なんていらない。僕はずっとアニキと一緒にいたい」
その答えはちと曖昧で分からない。
もう少し踏み込んでみようと思った。
「それは、恋愛なんかしたくないのか、俺の恋人になりたいのか、どっちだ?」
「僕は、恋人になりたい」
俺の問いでヒロ本人も自分の気持ちに気付いたようだ。
その後「なら、キスできるか?」と聞いたら、戸惑いつつも唇を重ねてきた。
愛おしさが心に満ちて、そのままディープなキスに進むのは当然と言っていいか?
思えば初めて会ったときに、ヒロに心を奪われていたような気がする。
今まで誰とも付き合う気が起きなかった俺が、15歳のヒロにキスされて舞い上がっていたのは内緒だ。
フワフワと、羽毛のような雪が舞い落ちる夜に
俺は、あの子を見つけた
誰もいない公園に独りぼっちで
あの子はブランコに座って泣いていた
収録を終えた帰り道。
駐車場へ向かうため、真夜中の公園を通ったのは、運命みたいなものだろうか。
深夜といっていい時間帯、普通そんな時間に公園に子供は来ない。
「どうした? 道に迷ったか?」
最初は迷子かと思って、声をかけながら歩み寄った。
多分小学生くらいかな?
問いに対してフルフルと首を横に振る。
近付いた俺の方を振り返った顔を見たとき、柄にもなくドキッとした。
仕事柄、容姿のいい子供は見慣れている。
が、その子は飛び抜けて可愛かった。
キッズモデルだった俺の子供の頃より綺麗な男の子だ。
「もう遅いから家に帰った方がいいよ、風邪ひくぞ」
心配して言ってみると、またフルフルと首を横に振る。
ワケありだ、と直感的に気付いた。
この子は何か事情があって、家に帰れないんだと思う。
「君、行くとこないの? うち来る?」
「行っても、いいの?」
俺のその言葉を聞いた途端、初めて喋った男の子。
それが、後に俺の養子で恋人となるヒロだった。
「うちにおいで。俺はケイ。君の名前は?」
「弘樹」
「じゃあヒロと呼ぶぞ。薄着で寒そうだから抱っこしていいか?」
「うん」
本人の許可のもと抱き上げてみた身体は、思っていたより細くて軽かった。
身長のわりに軽すぎる。
車に乗せて帰宅して、身体を温めるために風呂に入れてやったら、肋骨が浮き出るくらい痩せていると分かった。
育児放棄だ。
「ヒロ、今日はゴハン食べたか?」
「ううん」
「昨日は何か食べたか?」
「お米、食べた」
「オカズは?」
「ない」
「お米だけ?」
「うん」
ヒロは食事をマトモに与えられず、台所の米びつから生米を掴み出して食べていた子だった。
とりあえずレトルトのシチューを温めて食べさせたら、ガツガツ食べて「こんな美味しいの初めて食べた」と笑顔を見せた。
危うく餓死するところだった子。
こんな酷い扱いをする親のところには返せない。
そんな思いを込めて、俺は痩せ細った子供を抱き締めた。
ヒロは愛情に飢えていて、縋るように抱きついて甘えてくる。
ヒロにはもっと幸せを感じて生きてほしいと思う。
親が愛してやらないのなら、俺が愛情を注ごう。
児相を経て引き取ったヒロを抱き締めて、俺は何度も「愛してる」と囁いた。
なるべく傍にいてあげよう。
留守番で寂しい思いをさせたくないから、学校が休みの日にはアフレコスタジオやロケ地へ連れていった。
その影響で、ヒロは容姿の良さだけではなく、秘められた様々な才能を開花していく。
翔太に習って料理が上手くなったり、絵美に習って歌が上手くなったり。
カメラを向けると、全く緊張する様子もなく「魅せる笑顔」をする。
幾つかのプロダクションから、ヒロを子役タレントにと声がかかった。
大手プロダクション「ジュネス」の社長は特に熱心にスカウトにくる。
「あの子はダイヤの原石だ。私に任せてくれたら間違いなくスターになれるよ」
「ヒロはまだ子供ですし、本人がその気になるまで待ってもらえませんか?」
繰り返しそう言われた。
でも、俺はヒロの考えを尊重したいと思う。
本人の意思が固まるまでは、芸能界には入れたくない。
スカウトを断る裏側で、ヒロを誰にも渡したくないと思ったのは、俺の我儘だろうか?
ヒロが俺に恋愛感情らしきものを抱き始めたのは、中学生の頃から。
一緒に風呂に入るときや添い寝するときに、一瞬恥じらうような仕草をする。
もしや? という期待。
それが何かを確かめるため、15歳の誕生日に聞いてみた。
「ヒロ、そろそろ彼女できたか? できたら紹介しろよ」
「彼女なんていらない。僕はずっとアニキと一緒にいたい」
その答えはちと曖昧で分からない。
もう少し踏み込んでみようと思った。
「それは、恋愛なんかしたくないのか、俺の恋人になりたいのか、どっちだ?」
「僕は、恋人になりたい」
俺の問いでヒロ本人も自分の気持ちに気付いたようだ。
その後「なら、キスできるか?」と聞いたら、戸惑いつつも唇を重ねてきた。
愛おしさが心に満ちて、そのままディープなキスに進むのは当然と言っていいか?
思えば初めて会ったときに、ヒロに心を奪われていたような気がする。
今まで誰とも付き合う気が起きなかった俺が、15歳のヒロにキスされて舞い上がっていたのは内緒だ。
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