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第2章:天使長と四大天使たち
第16話:召喚獣
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神々しい白い毛並みに、空色の宝石みたいな優しい瞳、白鳥のように大きな翼で天駆ける駿馬。
僕を乗せてくれていた天馬が、ルウの召喚獣だったとは。
全然気付かなかったよ。
天使長は気軽に外出できないから、僕が無茶しないか見張り役につけたんだな。
召喚獣は術者のセンスで様々な姿のものが生み出される。
本物の天馬そっくりに作られた召喚獣は、既に何度か本物を見ている僕が見分けつかないくらいの完成度だ。
初陣で乗った天馬と並べて見たとしても、多分僕にはどっちが召喚獣か分からないかもしれない。
……それはいいとして。
召喚獣って、その目で見たものを術者に送ることができるんだよね。
この天馬が見たものは、ルウに送られていた?
例えて言うなら、監視カメラの映像をリアルタイムで見るようなものだろうか?
つまり、ディアモ戦の一部始終を見られてた?
突き飛ばされて落ちたところ、全部見られてたのか。
ルウが見てるってことは、情報を共有するケイも見てるよね?
「うわぁ……油断して落馬するなんてカッコ悪いとこ見られてたのか」
「大丈夫、ウッカリ瀕死なんてよくあることさ」
「いや、それ慰めになってないから」
頭を抱える僕の肩をポンポンと叩いてミカが言うけど。
ウッカリ瀕死経験者の彼が言うと変な説得力があるけど。
そんなしょっちゅう瀕死になりたくない。
主人公は死なないけど、身体を動かせなくなったら戦線離脱することになる。
現に落馬した後は、起き上がることもできなくなった。
ミカが回復してくれたから身代わりの反撃が使えたんだ。
「下手な立ち回りして、帰ったらお説教かなぁ」
ミカを護る筈が、逆に助けられちゃったから。
ションボリしながら天馬に乗ろうとしたら、光の粒子に変わってしまった。
バランスを崩して転びそうになるのを、誰かの腕が支える。
「叱ったりしないから、早く帰っておいで」
ケイの声だ。
ハッと顔を上げたら、ケイがそこにいた。
「ごめんね、落馬を止められなくて」
驚きで言葉が出てこない僕を、ケイが軽々と抱き上げた。
その背中には、天馬と同じ白い翼がある。
顔立ちや体格は同じだけど、ルウは6対の翼、今ここにいるケイは1対の翼だ。
……ケイの姿をした召喚獣?!
で、それを使ってケイが会話しているのか。
「突き落とされたりしないように、こうして抱いていれば良かった」
「落ちたのは僕の不注意だし、ケイは何も悪くないよ」
僕を抱えて飛び立つケイの後に、ミカたちが続く。
帰りは何事も無く天界に着いて、僕たちは天使長がいる神殿へ向かった。
◇◆◇◆◇
「状況は全て見ていた。皆、すぐに帰って休みなさい」
報告は不要と告げられ、討伐隊の面々が自宅へ帰っていく。
僕はケイ(召喚獣)に抱えられたまま、寝室へ連れて行かれた。
ケイに似ているルウが並んで歩くと、まるで双子のようだ。
……ちょっと待て。
3人(?)で寝室へ行って、ナニする気?!
「とりあえず、先にお風呂だな」
ケイは召喚獣とは思えない手際の良さで、僕を浴室へ運んで洗い上げた。
ルウも来て、3人で入浴。
天使長専用風呂は広いので、3人でもゆったりしている。
……が。
ケイは浴槽から出るかと思ったら、僕を抱えたまま縁に腰かけた。
「今日は疲れたろう? 時短しようね」
ニコニコしながらルウが言う。
その姿が、青年から少年へと変化した。
何をするのかは察したけど、時短とは……?!
キョトンとしていたら、2人がそれぞれ違う場所へ顔を寄せてくる。
「今夜のヒロは【受け】専門だな」
ケイが言うとおり、今夜の僕に攻め要素は無かった。
何があったか?
ご想像にお任せするよ。
……30分後。
風呂場で轟沈した僕は、汗やらナニやら色々洗い流してもらい、バスタオルで拭き拭きされた後、バスローブを着せられてベッドまで運ばれた。
時短おそるべし。
ケイとルウの連携が完璧過ぎて30分ももたなかったよ。
身体に力が入らない。
ボーッとしていたら、ケイとルウが布団の中に入ってきて、僕を挟んで川の字になった。
「もっと早くにこうしていれば良かった。そうすれば、添い寝を譲らなくて済んだのに」
少年ルウが囁く。
彼は、僕と初めて会ったときの姿が自分の本質だと言う。
「でも僕としては、ケイとルウには1つの身体に入って寝てほしいな。でないとどっちに抱きつけばいいのか困る」
僕は正直な意見を述べた。
2人が別々に存在してしまうと、敵の攻撃を受けた際にも護りにくくなる。
「そうだな。ヒロがゲームをクリアするまでは、俺はルウの一部だからな」
ケイがそう言ったとき、ルウは僕の手をギュッと握った。
感情豊かなAIルウの好感度は、現在ハートが7つ。
MAX10になるとき、ルウはどんな感情を僕に向けるんだろうか?
コッソリと好感度チェックをしていた僕は、ミカの好感度がいつの間にかハート3になっていることに気付いた。
おいおい、今頃かよ。
ディアモ討伐イベント終わっちゃったぞ。
多分、大火傷しながら根性で耐え抜いて反撃で倒したからかな?
僕を乗せてくれていた天馬が、ルウの召喚獣だったとは。
全然気付かなかったよ。
天使長は気軽に外出できないから、僕が無茶しないか見張り役につけたんだな。
召喚獣は術者のセンスで様々な姿のものが生み出される。
本物の天馬そっくりに作られた召喚獣は、既に何度か本物を見ている僕が見分けつかないくらいの完成度だ。
初陣で乗った天馬と並べて見たとしても、多分僕にはどっちが召喚獣か分からないかもしれない。
……それはいいとして。
召喚獣って、その目で見たものを術者に送ることができるんだよね。
この天馬が見たものは、ルウに送られていた?
例えて言うなら、監視カメラの映像をリアルタイムで見るようなものだろうか?
つまり、ディアモ戦の一部始終を見られてた?
突き飛ばされて落ちたところ、全部見られてたのか。
ルウが見てるってことは、情報を共有するケイも見てるよね?
「うわぁ……油断して落馬するなんてカッコ悪いとこ見られてたのか」
「大丈夫、ウッカリ瀕死なんてよくあることさ」
「いや、それ慰めになってないから」
頭を抱える僕の肩をポンポンと叩いてミカが言うけど。
ウッカリ瀕死経験者の彼が言うと変な説得力があるけど。
そんなしょっちゅう瀕死になりたくない。
主人公は死なないけど、身体を動かせなくなったら戦線離脱することになる。
現に落馬した後は、起き上がることもできなくなった。
ミカが回復してくれたから身代わりの反撃が使えたんだ。
「下手な立ち回りして、帰ったらお説教かなぁ」
ミカを護る筈が、逆に助けられちゃったから。
ションボリしながら天馬に乗ろうとしたら、光の粒子に変わってしまった。
バランスを崩して転びそうになるのを、誰かの腕が支える。
「叱ったりしないから、早く帰っておいで」
ケイの声だ。
ハッと顔を上げたら、ケイがそこにいた。
「ごめんね、落馬を止められなくて」
驚きで言葉が出てこない僕を、ケイが軽々と抱き上げた。
その背中には、天馬と同じ白い翼がある。
顔立ちや体格は同じだけど、ルウは6対の翼、今ここにいるケイは1対の翼だ。
……ケイの姿をした召喚獣?!
で、それを使ってケイが会話しているのか。
「突き落とされたりしないように、こうして抱いていれば良かった」
「落ちたのは僕の不注意だし、ケイは何も悪くないよ」
僕を抱えて飛び立つケイの後に、ミカたちが続く。
帰りは何事も無く天界に着いて、僕たちは天使長がいる神殿へ向かった。
◇◆◇◆◇
「状況は全て見ていた。皆、すぐに帰って休みなさい」
報告は不要と告げられ、討伐隊の面々が自宅へ帰っていく。
僕はケイ(召喚獣)に抱えられたまま、寝室へ連れて行かれた。
ケイに似ているルウが並んで歩くと、まるで双子のようだ。
……ちょっと待て。
3人(?)で寝室へ行って、ナニする気?!
「とりあえず、先にお風呂だな」
ケイは召喚獣とは思えない手際の良さで、僕を浴室へ運んで洗い上げた。
ルウも来て、3人で入浴。
天使長専用風呂は広いので、3人でもゆったりしている。
……が。
ケイは浴槽から出るかと思ったら、僕を抱えたまま縁に腰かけた。
「今日は疲れたろう? 時短しようね」
ニコニコしながらルウが言う。
その姿が、青年から少年へと変化した。
何をするのかは察したけど、時短とは……?!
キョトンとしていたら、2人がそれぞれ違う場所へ顔を寄せてくる。
「今夜のヒロは【受け】専門だな」
ケイが言うとおり、今夜の僕に攻め要素は無かった。
何があったか?
ご想像にお任せするよ。
……30分後。
風呂場で轟沈した僕は、汗やらナニやら色々洗い流してもらい、バスタオルで拭き拭きされた後、バスローブを着せられてベッドまで運ばれた。
時短おそるべし。
ケイとルウの連携が完璧過ぎて30分ももたなかったよ。
身体に力が入らない。
ボーッとしていたら、ケイとルウが布団の中に入ってきて、僕を挟んで川の字になった。
「もっと早くにこうしていれば良かった。そうすれば、添い寝を譲らなくて済んだのに」
少年ルウが囁く。
彼は、僕と初めて会ったときの姿が自分の本質だと言う。
「でも僕としては、ケイとルウには1つの身体に入って寝てほしいな。でないとどっちに抱きつけばいいのか困る」
僕は正直な意見を述べた。
2人が別々に存在してしまうと、敵の攻撃を受けた際にも護りにくくなる。
「そうだな。ヒロがゲームをクリアするまでは、俺はルウの一部だからな」
ケイがそう言ったとき、ルウは僕の手をギュッと握った。
感情豊かなAIルウの好感度は、現在ハートが7つ。
MAX10になるとき、ルウはどんな感情を僕に向けるんだろうか?
コッソリと好感度チェックをしていた僕は、ミカの好感度がいつの間にかハート3になっていることに気付いた。
おいおい、今頃かよ。
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