12 / 51
第1章:ヒロとケイ
第10話:ルウ・シフェル
しおりを挟む
現実世界とは時間の流れが異なる【天使と珈琲を】の世界。
プレイタイムを確認しながらゲームを進めている僕は、ゲーム世界で初めて睡眠をとったとき、現実世界の時間を消費していないことに気付いた。
大昔のRPGで宿屋に泊まるとすぐ翌朝になり、HPとMPが全回復しているのを再現したのかもしれない。
ゲームのキャラ的には数時間グッスリ眠り、プレイヤー的には一瞬で夜が明けたみたいな感じかな?
ルウの部屋にお泊りした翌朝。
僕は顔や首や胸に誰かがキスしているのを感じながら目が覚めた。
一緒に寝ていたのはルウ(中の人:ケイ)の筈だけど。
ケイがキスで僕を起こすのはいつものことだけど。
なんか、触れ方が違うような?
僕に覆い被さる身体は、小柄で華奢な感じがする。
どこか躊躇うように、羽根で撫でるように軽い口付け。
所謂ソフトタッチ。
ケイならもっとハッキリ感じるキスをする筈。
「ヒロ、起きて。朝だよ」
呼びかける声も違う。
ケイの声だけど、地声じゃなく最高音域の少年ボイスだ。
その声を吹き込まれたキャラといえば、チュートリアルに出てきた幼馴染の少年が浮かぶ。
「……ん~……エミル……?」
「違う。声が似てるからって間違えるなんてひどいな」
「ふぉっ?!」
思いついた人の名前を言った途端、抗議の声がして急に強く吸われた。
どこを吸われたかって?
ご想像にお任せするよ。
それに反応した身体がビクッとして、僕は完全に目が覚めた。
無防備な状態だったから、変な声出ちゃったよ。
「やっと起きたね」
ニコニコしながらこちらに顔を向けたのは、銀髪に青い瞳の美少年。
チュートリアルフィールドで重傷を負って倒れていたときのルウだ。
仰向けで寝ていた僕の身体の上に伏せるような体勢で、こちらを見ている。
「ケイの記憶によれば、君はいつもキスで起こされているそうだから、試してみたよ」
その言葉で、僕は彼がAIのルウだと気付いた。
寝ている間に交代したのかもしれない。
「……ケイ……は……?」
不安を感じて聞いてみた。
ケイは、AIにキャラクターの主導権を奪い返されたんだろうか?
「心配しなくていいよ、夜になればまた入れ替わるから」
というルウは、作られた人格とは思えないくらい優しい笑みを浮かべた。
ケイに似た微笑みだ。
「今日はこれからメインクエストがあるからね。クエストでは私が出ていないとゲームの時計が進まないんだ」
「そんな仕様があったのか」
「というか、生身の人間の意識がNPCに入ってしまうという異常事態に、そのキャラクターのAIである私が対応したのだけどね」
イレギュラーなことに対応できるAIがあるのは、このゲームが最新の技術を注ぎ込まれているからかな。
そんなことを考えていたら、ルウが顔を寄せてきた。
何をするのか察した僕は、その場で動かずに目を閉じた。
「さすが分かってるね。はい、おはようのキスだよ」
ルウのキスは軽く柔らかく、そっと触れる感じ。
唇に触れるだけで、その先には進まなかった。
「シナリオ的には、私は君に興味を持って天界へ連れ帰ったところだ。朝食を済ませたら大天使たちに会ってもらうよ」
「OK」
やがて侍女が部屋に運んできた朝食を食べた後、出された珈琲を飲んだらステータスがUPした。
朝食はハードパン、ポタージュスープ、べーコンエッグ、サラダ。
人間的というか、僕が好きな朝食メニューだった。
ルウの珈琲は、光の属性値と全能力値が上がる。
それからルウに案内されて、僕は天使たちの武術訓練場に向かった。
そこで主人公は、大天使たちから修行を兼ねて勇者または聖者として試されることになる。
普通にプレイしていれば、このイベントはもう少し後だ。
ルウ以外のキャラの攻略ルートでは、神殿での暗殺者襲撃は無い。
主人公は大天使たちに会った後、神殿で様々なことを教わりながら、攻略対象たちと交流して好感度を上げるという流れになる筈。
ルウ攻略で暗殺者が出るイベントは、反撃成功なら勇者の仮認定されて、神殿の聖騎士たちと共に魔物の討伐をするクエストに進む。
……が。
ルウ(ケイ)にお持ち帰りされてしまった僕は、魔族と戦う天使軍に入隊することになったようだ。
「天使長自ら天界へ招くほどの者だ、成長を楽しみにしているぞ」
爽やかに笑うのは、炎の大天使ミカ・フラムエル。
彼は筋力と根性値の高い主人公が好みで、彼から剣術を習うと好感度が上昇する。
「明らかに格上の魔族の攻撃を、天使よりも先に察知して反撃した人間なんて初めて見たよ。面白そうなコだね」
楽しそうにニコニコしているのは、風の大天使ファー・ラエル。
彼は敏捷と回避が高い主人公が好みで、彼から弓術や投擲を習うと好感度が上昇する。
「魔法を学びたくなったらいらっしゃい。教えてあげるわ、ベッドの中で」
オネエ風味なのは、水の大天使サキ・ジブリエル。
彼は知力と器用度が高い主人公が好みで、魔法を習うとベッドに連れ込まれる。
「反撃もいいが、防御も上げた方がいいぞ、私でよければ教えてあげよう」
低くて深みのあるイケボは、地の大天使ウリ・ドルフェル。
彼は防御と回復力が高い主人公が好みで、盾を使った戦い方を習うと好感度が上昇する。
「よ、よろしくお願いします」
約1名危ない感じがするのが混じってるけど。
僕は四大天使たちから戦闘技術を学ぶことになった。
プレイタイムを確認しながらゲームを進めている僕は、ゲーム世界で初めて睡眠をとったとき、現実世界の時間を消費していないことに気付いた。
大昔のRPGで宿屋に泊まるとすぐ翌朝になり、HPとMPが全回復しているのを再現したのかもしれない。
ゲームのキャラ的には数時間グッスリ眠り、プレイヤー的には一瞬で夜が明けたみたいな感じかな?
ルウの部屋にお泊りした翌朝。
僕は顔や首や胸に誰かがキスしているのを感じながら目が覚めた。
一緒に寝ていたのはルウ(中の人:ケイ)の筈だけど。
ケイがキスで僕を起こすのはいつものことだけど。
なんか、触れ方が違うような?
僕に覆い被さる身体は、小柄で華奢な感じがする。
どこか躊躇うように、羽根で撫でるように軽い口付け。
所謂ソフトタッチ。
ケイならもっとハッキリ感じるキスをする筈。
「ヒロ、起きて。朝だよ」
呼びかける声も違う。
ケイの声だけど、地声じゃなく最高音域の少年ボイスだ。
その声を吹き込まれたキャラといえば、チュートリアルに出てきた幼馴染の少年が浮かぶ。
「……ん~……エミル……?」
「違う。声が似てるからって間違えるなんてひどいな」
「ふぉっ?!」
思いついた人の名前を言った途端、抗議の声がして急に強く吸われた。
どこを吸われたかって?
ご想像にお任せするよ。
それに反応した身体がビクッとして、僕は完全に目が覚めた。
無防備な状態だったから、変な声出ちゃったよ。
「やっと起きたね」
ニコニコしながらこちらに顔を向けたのは、銀髪に青い瞳の美少年。
チュートリアルフィールドで重傷を負って倒れていたときのルウだ。
仰向けで寝ていた僕の身体の上に伏せるような体勢で、こちらを見ている。
「ケイの記憶によれば、君はいつもキスで起こされているそうだから、試してみたよ」
その言葉で、僕は彼がAIのルウだと気付いた。
寝ている間に交代したのかもしれない。
「……ケイ……は……?」
不安を感じて聞いてみた。
ケイは、AIにキャラクターの主導権を奪い返されたんだろうか?
「心配しなくていいよ、夜になればまた入れ替わるから」
というルウは、作られた人格とは思えないくらい優しい笑みを浮かべた。
ケイに似た微笑みだ。
「今日はこれからメインクエストがあるからね。クエストでは私が出ていないとゲームの時計が進まないんだ」
「そんな仕様があったのか」
「というか、生身の人間の意識がNPCに入ってしまうという異常事態に、そのキャラクターのAIである私が対応したのだけどね」
イレギュラーなことに対応できるAIがあるのは、このゲームが最新の技術を注ぎ込まれているからかな。
そんなことを考えていたら、ルウが顔を寄せてきた。
何をするのか察した僕は、その場で動かずに目を閉じた。
「さすが分かってるね。はい、おはようのキスだよ」
ルウのキスは軽く柔らかく、そっと触れる感じ。
唇に触れるだけで、その先には進まなかった。
「シナリオ的には、私は君に興味を持って天界へ連れ帰ったところだ。朝食を済ませたら大天使たちに会ってもらうよ」
「OK」
やがて侍女が部屋に運んできた朝食を食べた後、出された珈琲を飲んだらステータスがUPした。
朝食はハードパン、ポタージュスープ、べーコンエッグ、サラダ。
人間的というか、僕が好きな朝食メニューだった。
ルウの珈琲は、光の属性値と全能力値が上がる。
それからルウに案内されて、僕は天使たちの武術訓練場に向かった。
そこで主人公は、大天使たちから修行を兼ねて勇者または聖者として試されることになる。
普通にプレイしていれば、このイベントはもう少し後だ。
ルウ以外のキャラの攻略ルートでは、神殿での暗殺者襲撃は無い。
主人公は大天使たちに会った後、神殿で様々なことを教わりながら、攻略対象たちと交流して好感度を上げるという流れになる筈。
ルウ攻略で暗殺者が出るイベントは、反撃成功なら勇者の仮認定されて、神殿の聖騎士たちと共に魔物の討伐をするクエストに進む。
……が。
ルウ(ケイ)にお持ち帰りされてしまった僕は、魔族と戦う天使軍に入隊することになったようだ。
「天使長自ら天界へ招くほどの者だ、成長を楽しみにしているぞ」
爽やかに笑うのは、炎の大天使ミカ・フラムエル。
彼は筋力と根性値の高い主人公が好みで、彼から剣術を習うと好感度が上昇する。
「明らかに格上の魔族の攻撃を、天使よりも先に察知して反撃した人間なんて初めて見たよ。面白そうなコだね」
楽しそうにニコニコしているのは、風の大天使ファー・ラエル。
彼は敏捷と回避が高い主人公が好みで、彼から弓術や投擲を習うと好感度が上昇する。
「魔法を学びたくなったらいらっしゃい。教えてあげるわ、ベッドの中で」
オネエ風味なのは、水の大天使サキ・ジブリエル。
彼は知力と器用度が高い主人公が好みで、魔法を習うとベッドに連れ込まれる。
「反撃もいいが、防御も上げた方がいいぞ、私でよければ教えてあげよう」
低くて深みのあるイケボは、地の大天使ウリ・ドルフェル。
彼は防御と回復力が高い主人公が好みで、盾を使った戦い方を習うと好感度が上昇する。
「よ、よろしくお願いします」
約1名危ない感じがするのが混じってるけど。
僕は四大天使たちから戦闘技術を学ぶことになった。
10
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています

見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました
むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる