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勇者エリシオ編
最終話:月光都市エルシエル
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魔王と魔族がその力を神に還し、普通の人間となった6年後。
SETA社とプルミエ王国と古代の民が協力して造り上げた新たな都市が完成した。
乳白色の石材を多く使用した建造物は、古代の遺跡から回収した素材と現代の素材の融合によるもの。
経年劣化防止の魔法をかけて、永い時が過ぎてもひび割れないように仕上げられた。
「第三王子エリシオよ、新都市の領主となり、治める事を命ずる」
プルミエ国王ネアルコは命じる。
成人したばかりの息子には大きな仕事だが、それを成せる力があると確信していた。
「謹んで拝命いたします」
跪いて頭を下げ、王命を受けるのは凛々しさが増した青年エリシオ。
父王から領主の証となる宝剣を授かり、新都市の繁栄を誓う。
古代神ルシエルを復活させた後、普通の人間となった人々を連れて、エリシオたちはプルミエに帰った。
彼等の移住先はこれから建築するところなので、SETA社が管理する賃貸物件に仮住まいしてもらう。
体力と魔力に自信のある元魔道兵たちは建築を手伝う事を望み、拓郎はそれを了承して派遣部社員として雇用した。
「僕も手伝うよ」
エリシオも手伝いに入り、建築の妨げとなる大岩を砕いて砂利にする事を得意とした。
視えない速度で抜刀して周囲の大岩を粉砕する様子は、若干大道芸みたいになっていたが。
「聖剣を土地開発に使った勇者は、おそらく御主人様が初めてですよ」
剣の精霊ルーチェが面白そうに笑って言った。
それから6年が経ち、エリシオ18歳。
御婦人方を魅了する、長身痩躯の金髪美青年に成長した。
ルシエは魔族から普通の人間に変わり、銀灰色の長い髪を持つ美しい乙女に育っている。
約束通り、エリシオは誕生パーティで婚約を発表した。
「兄様おめでとうございます。マーニもあと7年経ったらお嫁さんにして下さいね」
ニコニコしながら言うのは、カートルの聖女マーニ11歳。
「?!」
王族や貴族は重婚が珍しくない世界、周囲はみんな予想していたが、肝心のエリシオは想定外だった様子。
「マーニは赤子の頃から、エリしか見ておらぬからな」
そう言いながら、ルシエがエリシオに寄り添いつつ笑った。
プルミエ西方に完成した美しい都は、古代の民が崇拝する神の名から【エルシエル】と名付けられた。
SETA社が総力を挙げたライフライン、エネルギー施設・水供給施設・交通施設・情報施設などは、自然環境への影響を配慮して作られている。
「まるで絵画のように美しい都市ですね」
新都市に移住した人々や、行商に訪れる商人たちは、建造物の美しさに魅了される。
乳白色の建物は明るい雰囲気と、神殿のような清々しさを感じさせる。
街の中を流れる水路も、中央広場の噴水も、澄んだ水に満ちていた。
都市がその美しさを増すのは夜で、月の光を浴びて淡く発光する石材が、幻想的な雰囲気を漂わせた。
移住が済んで人々の生活が安定した頃、領主とその婚約者の結婚の祝祭が行われた。
エリシオはプルミエ王族の正装、白い布地で背中に赤と金の刺繍で不死鳥が描かれた衣装を纏う。
ルシエは遥かな古代、王族の女性の正装だったという乳白色に金糸で満ちた月が刺繍されたドレスを纏う。
「この命続く限り、ルシエと寄り添ってゆくと誓うよ」
「我もこの命続く限り、エリシオと寄り添うと誓おう」
夜空の下、大きな月が柔らかな光を地上へ注ぐ中、二人は共に生きる事を誓った。
神々の座する場所。
濃紺の宇宙に、瑠璃色の惑星が浮かぶ。
多くの生命を育む、宝石のように美しい箱舟の世界。
「子供たちに倣って、私たちも寄り添ってこの世界を見守ろう」
「この子らの子孫も、他の生命と共存出来ると信じよう」
かつて仲を違えた2人の神が、今は共に並び立ち、慈愛に満ちた笑みでそれを見詰めていた。
SETA社とプルミエ王国と古代の民が協力して造り上げた新たな都市が完成した。
乳白色の石材を多く使用した建造物は、古代の遺跡から回収した素材と現代の素材の融合によるもの。
経年劣化防止の魔法をかけて、永い時が過ぎてもひび割れないように仕上げられた。
「第三王子エリシオよ、新都市の領主となり、治める事を命ずる」
プルミエ国王ネアルコは命じる。
成人したばかりの息子には大きな仕事だが、それを成せる力があると確信していた。
「謹んで拝命いたします」
跪いて頭を下げ、王命を受けるのは凛々しさが増した青年エリシオ。
父王から領主の証となる宝剣を授かり、新都市の繁栄を誓う。
古代神ルシエルを復活させた後、普通の人間となった人々を連れて、エリシオたちはプルミエに帰った。
彼等の移住先はこれから建築するところなので、SETA社が管理する賃貸物件に仮住まいしてもらう。
体力と魔力に自信のある元魔道兵たちは建築を手伝う事を望み、拓郎はそれを了承して派遣部社員として雇用した。
「僕も手伝うよ」
エリシオも手伝いに入り、建築の妨げとなる大岩を砕いて砂利にする事を得意とした。
視えない速度で抜刀して周囲の大岩を粉砕する様子は、若干大道芸みたいになっていたが。
「聖剣を土地開発に使った勇者は、おそらく御主人様が初めてですよ」
剣の精霊ルーチェが面白そうに笑って言った。
それから6年が経ち、エリシオ18歳。
御婦人方を魅了する、長身痩躯の金髪美青年に成長した。
ルシエは魔族から普通の人間に変わり、銀灰色の長い髪を持つ美しい乙女に育っている。
約束通り、エリシオは誕生パーティで婚約を発表した。
「兄様おめでとうございます。マーニもあと7年経ったらお嫁さんにして下さいね」
ニコニコしながら言うのは、カートルの聖女マーニ11歳。
「?!」
王族や貴族は重婚が珍しくない世界、周囲はみんな予想していたが、肝心のエリシオは想定外だった様子。
「マーニは赤子の頃から、エリしか見ておらぬからな」
そう言いながら、ルシエがエリシオに寄り添いつつ笑った。
プルミエ西方に完成した美しい都は、古代の民が崇拝する神の名から【エルシエル】と名付けられた。
SETA社が総力を挙げたライフライン、エネルギー施設・水供給施設・交通施設・情報施設などは、自然環境への影響を配慮して作られている。
「まるで絵画のように美しい都市ですね」
新都市に移住した人々や、行商に訪れる商人たちは、建造物の美しさに魅了される。
乳白色の建物は明るい雰囲気と、神殿のような清々しさを感じさせる。
街の中を流れる水路も、中央広場の噴水も、澄んだ水に満ちていた。
都市がその美しさを増すのは夜で、月の光を浴びて淡く発光する石材が、幻想的な雰囲気を漂わせた。
移住が済んで人々の生活が安定した頃、領主とその婚約者の結婚の祝祭が行われた。
エリシオはプルミエ王族の正装、白い布地で背中に赤と金の刺繍で不死鳥が描かれた衣装を纏う。
ルシエは遥かな古代、王族の女性の正装だったという乳白色に金糸で満ちた月が刺繍されたドレスを纏う。
「この命続く限り、ルシエと寄り添ってゆくと誓うよ」
「我もこの命続く限り、エリシオと寄り添うと誓おう」
夜空の下、大きな月が柔らかな光を地上へ注ぐ中、二人は共に生きる事を誓った。
神々の座する場所。
濃紺の宇宙に、瑠璃色の惑星が浮かぶ。
多くの生命を育む、宝石のように美しい箱舟の世界。
「子供たちに倣って、私たちも寄り添ってこの世界を見守ろう」
「この子らの子孫も、他の生命と共存出来ると信じよう」
かつて仲を違えた2人の神が、今は共に並び立ち、慈愛に満ちた笑みでそれを見詰めていた。
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