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第15話:歩み寄り
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一方、食器の破片を集め終えたリオは、床に広がるシチューを拭く物を借りようと顔を上げた。
「あの~すいません、雑巾ありますか?」
問うたものの、人々に動きはない。
まだ黒髪の人間を受け入れられない彼等は、関わる事を避けている。
わざと明るい声で言った自分が、何だか馬鹿みたいに思えた。
この世界へ連れて来られた際に、前世の意識が少し覚醒したので言葉は通じているのだが。
相手が会話を拒絶しているので話が出来ない。
会話どころか、そこにいないものとして視線も向けられなかった。
初めて来る場所、知らない人ばかりの環境で、これは精神的にキツイ状況だ。
(自分で探しに行った方が早いかな?)
立ち上がろうとした時、灰色の布が差し出された。
「どうぞ」
持って来てくれたのは、青い髪の若者オルジェ。
昨日は初対面のリオを前に、黒髪の人間は魔物ではないかと抗議していた1人だ。
その表情は、昨日より幾分和らいでいる。
「ありがとう」
内心ホッとしながらリオは布を受け取り、汚れた床を拭き始めた。
布を二枚持って来ていた若者が、その横に屈む。
少々意外な行動に、リオは目を丸くした。
「私も今、手が空いてますから」
床に目を向けたまま言う声は、抗議していた時よりもずっと穏やかだった。
「うん、助かる」
少し驚きつつ、リオも床の片付けを続けた。
二人がかりなら作業は早い。
破片を捨てるゴミ箱などもオルジェが持って来てくれたので、難なく終わった。
片付けが終わって雑巾を洗いに向かう頃、手当てを済ませたミーナとエレアヌが戻って来た。
広間の外へ出て行く二人と、広間に向かう二人が、廊下ですれ違う。
ミーナを怯えさせないように、リオは視線を合わせず通り過ぎようとした。
「ありがとうございます!」
「え?」
途端に、ミーナが深々と頭を下げた。
想定外の反応に、リオは少女に目を向ける。
「別に、そこまで礼を言われるような事じゃないよ」
……片付けを代わったくらいで大袈裟な、と、リオは人差し指で頬を掻いた。
自分の膝が見えるほど丸められた少女の背は、微かに震えている。
まだ少し怖がっているのかもしれない。
「……本当に…ありがとうございました……」
それでもミーナは礼を言った。
「そんな、大した事してないんだから。顔を上げてよ」
対応に困ったリオはふと、自分の右手に持ったままの布に気付いた。
「じゃあ、僕はこれを洗いに行くから」
一声かけて、リオは少女から離れ、青い髪の若者と共に歩いてゆく。
背中に、ミーナとエレアヌの視線を感じながら。
少女の瞳が潤んでいる訳を、彼は知らない。
けれど、閉ざされた心が少し、開き始めたような気がした。
「あの~すいません、雑巾ありますか?」
問うたものの、人々に動きはない。
まだ黒髪の人間を受け入れられない彼等は、関わる事を避けている。
わざと明るい声で言った自分が、何だか馬鹿みたいに思えた。
この世界へ連れて来られた際に、前世の意識が少し覚醒したので言葉は通じているのだが。
相手が会話を拒絶しているので話が出来ない。
会話どころか、そこにいないものとして視線も向けられなかった。
初めて来る場所、知らない人ばかりの環境で、これは精神的にキツイ状況だ。
(自分で探しに行った方が早いかな?)
立ち上がろうとした時、灰色の布が差し出された。
「どうぞ」
持って来てくれたのは、青い髪の若者オルジェ。
昨日は初対面のリオを前に、黒髪の人間は魔物ではないかと抗議していた1人だ。
その表情は、昨日より幾分和らいでいる。
「ありがとう」
内心ホッとしながらリオは布を受け取り、汚れた床を拭き始めた。
布を二枚持って来ていた若者が、その横に屈む。
少々意外な行動に、リオは目を丸くした。
「私も今、手が空いてますから」
床に目を向けたまま言う声は、抗議していた時よりもずっと穏やかだった。
「うん、助かる」
少し驚きつつ、リオも床の片付けを続けた。
二人がかりなら作業は早い。
破片を捨てるゴミ箱などもオルジェが持って来てくれたので、難なく終わった。
片付けが終わって雑巾を洗いに向かう頃、手当てを済ませたミーナとエレアヌが戻って来た。
広間の外へ出て行く二人と、広間に向かう二人が、廊下ですれ違う。
ミーナを怯えさせないように、リオは視線を合わせず通り過ぎようとした。
「ありがとうございます!」
「え?」
途端に、ミーナが深々と頭を下げた。
想定外の反応に、リオは少女に目を向ける。
「別に、そこまで礼を言われるような事じゃないよ」
……片付けを代わったくらいで大袈裟な、と、リオは人差し指で頬を掻いた。
自分の膝が見えるほど丸められた少女の背は、微かに震えている。
まだ少し怖がっているのかもしれない。
「……本当に…ありがとうございました……」
それでもミーナは礼を言った。
「そんな、大した事してないんだから。顔を上げてよ」
対応に困ったリオはふと、自分の右手に持ったままの布に気付いた。
「じゃあ、僕はこれを洗いに行くから」
一声かけて、リオは少女から離れ、青い髪の若者と共に歩いてゆく。
背中に、ミーナとエレアヌの視線を感じながら。
少女の瞳が潤んでいる訳を、彼は知らない。
けれど、閉ざされた心が少し、開き始めたような気がした。
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