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第2話:異世界からの迎え

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一方、リオは奇妙な空間に閉じ込められていた。

  前も後ろも右も左も上も下も、どちらを見ても緑柱石色の水のような液体があるのみ。
  といっても呼吸は可能で、彼は息苦しさを感じることなく、ただ呆然と液体の中を漂っていた。

 『やっと逢えましたね』
  不意に、頭の中に「声」が響く。
  気配を感じて振り返ると、背後に一人の青年がいた。

  歳は二十代半ばだろうか?
 足首までのびた黄金色の髪、淡い緑色の瞳、ミルク色の肌。
 優し気な顔立ちは中性的で美しく、白地に緑の刺繍を施した長衣を纏っている。

  ……けれど、その姿は実体ではない……。

  青年は立体映像のように、淡い金色の光を放って佇んでいた。

(幽霊?)
  リオは思うが、不思議と恐怖感は無い。
  おそらく、相手の雰囲気が好意的である上、春の陽光にも似た暖かさを感じた為だろう。

『来て下さったのですね。予言通り……』
  ともすれば女性のようにも見える青年は、穏やかな微笑みを浮かべている。

 「え?」
  リオは目を丸くした。
  彼が今日ここに来る事を、一体誰が予言したのか?

『私はエレアヌ。貴方を迎えに来ました。今、時の気ウールヴァンは満ちています…』
 (……ウールヴァン……?)
聞きなれない言葉に、リオは首を傾げる。

 『長い年月を重ねると、木には不思議な力が宿り、異なる世界への扉を開く鍵となるのです。その力を時の気ウールヴァンといいます。この菩提樹の力は、これから貴方を本来在るべき場所へ導いてくれます』
  エレアヌと名乗る青年は説明した。
(……本来在るべき場所……?)
 『エルティシア。こことは違う時空間に存在する世界です』
  まるでリオの心の声が聞こえるかのように、エレアヌは答える。
  白く細い腕が、リオに差し延べられた。
 『行きましょう』
 「……って言われても……」
  リオは戸惑う。
  エレアヌは悪人には見えないが、無防備についていくほどリオは子供ではない。

『戻って来て下さい。リュシア=ユール=レンティス様』
  そんな彼に片手を差し延べたまま、美貌の青年は呼び掛ける。

 その瞬間、リオの意識の底で何かが解放された。 
 まるでその名が鍵であったかのように、彼の中に眠っていた【誰か】が目覚める。

 (……行カナケレバ……)
  音無き「声」、しかしエレアヌのものではない何かが、心の奥底で呟く。

 無意識の内に、リオはエレアヌに歩み寄っていた。
 緑の刺繍がついた長い袖が、リオをそっと包み込む。
 けれど、触れた感触は無い。

『目を閉じて…』
  言われて瞳を閉じた時、足元がグニャリと揺れた。
 
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