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第7章:双子星
第66話:政治犯収容施設
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宇宙へ出られる技術を持つだけあって、ドミナートルのセキュリティは強固だった。
但しそれは、管理コンピューターが正常に稼働していればの話。
セラフィに掌握されたセキュリティは、僕たちの侵入を防ぐ事は出来ない。
僕は警備兵の注意を引くために、正門から歩いて敷地内に入ってみた。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「ちょっとお邪魔するよ」
「なっ?! 何者?!」
正門から堂々と入ってきたトオヤに、警備兵たちが面食らう。
トオヤが建物入口に近付くと、本来は虹彩認識によって開閉する自動ドアが、ロックされていないかのように開いてしまった。
「と、止まれ!」
「こ、この! 不法侵入者め!」
動揺する警備兵たちが発砲した銃弾は、空中でピタリと止まった後に落下した。
「はい、いらっしゃいませ」
などという機械音声が流れるのは、セラフィの仕業だ。
「弾薬の無駄だから、やめといた方がいいよ」
全く侵入阻止に役立たない銃を撃つ人々に、トオヤが軽く笑って言う。
今のトオヤは私服姿なので、兵たちはそこにいる青年がアエテルヌムの力を得た者だとは分からない。
ただ、どうやっても勝てない相手だという事は本能的に感じていた。
一方、アイオはセラフィから得た情報を元に、ラティオ王子の独房に来ていた。
施設が身分の高い者を拘束するためのものという事もあり、王子の独房はそれなりに清潔でベッドなども置かれている。
「君は誰だい?」
牢の中、ベッドに腰掛けて考え事をしていたラティオ王子は、扉が開く音に気付いて振り向いた。
「これの持ち主から貴方の事を聞いて、助けに来ました」
アイオは、借りてきたペンを王子に見せて微笑む。
「そうか、ありがとう。彼は無事かい?」
「はい。これからお連れする場所で、お会いになれますよ。お手に触れても構いませんか?」
「ああ、構わないよ」
ペンを見て理解した王子は、アイオが差し出す手を取り、アルビレオ号への瞬間移動に同行した。
アイオとの情報共有で王子の救出が完了した事を確認したトオヤは、徒歩で建物の外へと進む。
「邪魔したね。そろそろ帰るよ」
困惑しかない警備兵たちにヒラヒラと手を振り、急ぐでもなくノンビリ歩いて去っていく。
「ありがとうございました」
またも流れる機械音声は、勿論セラフィの操作によるもの。
「……あいつ……一体何しに来たんだ……?」
呆然とする警備兵たちはその後、重要人物が忽然と姿を消していると知らされ、トオヤの目的に気付くのだった。
但しそれは、管理コンピューターが正常に稼働していればの話。
セラフィに掌握されたセキュリティは、僕たちの侵入を防ぐ事は出来ない。
僕は警備兵の注意を引くために、正門から歩いて敷地内に入ってみた。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「ちょっとお邪魔するよ」
「なっ?! 何者?!」
正門から堂々と入ってきたトオヤに、警備兵たちが面食らう。
トオヤが建物入口に近付くと、本来は虹彩認識によって開閉する自動ドアが、ロックされていないかのように開いてしまった。
「と、止まれ!」
「こ、この! 不法侵入者め!」
動揺する警備兵たちが発砲した銃弾は、空中でピタリと止まった後に落下した。
「はい、いらっしゃいませ」
などという機械音声が流れるのは、セラフィの仕業だ。
「弾薬の無駄だから、やめといた方がいいよ」
全く侵入阻止に役立たない銃を撃つ人々に、トオヤが軽く笑って言う。
今のトオヤは私服姿なので、兵たちはそこにいる青年がアエテルヌムの力を得た者だとは分からない。
ただ、どうやっても勝てない相手だという事は本能的に感じていた。
一方、アイオはセラフィから得た情報を元に、ラティオ王子の独房に来ていた。
施設が身分の高い者を拘束するためのものという事もあり、王子の独房はそれなりに清潔でベッドなども置かれている。
「君は誰だい?」
牢の中、ベッドに腰掛けて考え事をしていたラティオ王子は、扉が開く音に気付いて振り向いた。
「これの持ち主から貴方の事を聞いて、助けに来ました」
アイオは、借りてきたペンを王子に見せて微笑む。
「そうか、ありがとう。彼は無事かい?」
「はい。これからお連れする場所で、お会いになれますよ。お手に触れても構いませんか?」
「ああ、構わないよ」
ペンを見て理解した王子は、アイオが差し出す手を取り、アルビレオ号への瞬間移動に同行した。
アイオとの情報共有で王子の救出が完了した事を確認したトオヤは、徒歩で建物の外へと進む。
「邪魔したね。そろそろ帰るよ」
困惑しかない警備兵たちにヒラヒラと手を振り、急ぐでもなくノンビリ歩いて去っていく。
「ありがとうございました」
またも流れる機械音声は、勿論セラフィの操作によるもの。
「……あいつ……一体何しに来たんだ……?」
呆然とする警備兵たちはその後、重要人物が忽然と姿を消していると知らされ、トオヤの目的に気付くのだった。
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