星の海、月の船

BIRD

文字の大きさ
上 下
57 / 99
第5章:獣の惑星

第49話:移民団の家族

しおりを挟む
ティオとレシカから、双子のニイとミイを養子にしたいとの要望があった。
双子は夫婦に懐いているし、本人たちも望んでいたので、僕が反対する要素は何も無い。
コロニーで成人を迎えたティオとレシカは、精巣と卵巣を摘出済みなので、実子は生まれない。
人口の調整が必要だったコロニーの人間は、第二次性徴後に出生管理局に精巣や卵巣を切除される。
摘出されたそれらは管理局が検査して、遺伝子に異常が無ければ次世代を生み出す人工授精に使われる。
コロニー成人最年少の僕も、11歳で精巣摘出手術を受けたので、生殖能力は持ってない。
だから今、アルビレオ移民団で生殖能力を有するのは、コールドスリープ装置で眠る10歳前の子供たちと、異星から参加した子供たちだけだった。

 宇宙船アルビレオ号
 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より



アイオは新たに加わった子供たちの額に順番に手をかざし、乗組員データの登録を進めてゆく。
双子の養父母になる事を望むティオとレシカも、その場に立ち会っていた。

名前:ニイ
性別:男
登録時の年齢:12歳
出身:ベスティア
養父:ティオ
養母:レシカ

名前:ミイ
性別:女
登録時の年齢:12歳
出身:ベスティア
養父:ティオ
養母:レシカ

「登録、完了しました」

微笑みと共に告げるアイオ。
その背後にあるモニターに、登録データが表示された。
養父母と双子が、喜びに目を潤ませる。

「パパ、ママ、ありがとう!」
「二人とも私たちの子になってくれて、ありがとう」

ニイはティオに、ミイはレシカに抱きつき、それぞれ愛情を籠めて抱き締められる。
母性に目覚めたレシカは特に感激していて、ミイを抱き締めたまま涙を流したほどだった。

「おめでとう!」

他の子供たちが、地球人の習慣を真似て拍手で祝う。

「トオヤ以外の人が養子を迎えるのは初めてだね」

と言うカールはベガの弟子、養父母にはトオヤとアイオを望んで登録している。
カールの両親は母星で存命だが、移民団乗組員に加わる際に未成年だったのでトオヤたちの養子になった。
コロニーでは弟子入りする先の養子になる事が多いが、プライベートが残念なベガには子供を育てられないと思われたらしい。


「ねえ、おかあさん、プレイルームの近くにお風呂を作ってほしいな」
「大浴場だと女の子が別になっちゃって寂しいの」
「そうですね。子供たちみんなで入れるお風呂を作りましょうか」

ふと思いついたのか、ナオとニアがアイオにおねだりを始める。
ニイとミイが家族風呂で一緒に入っているのが羨ましくなった女の子たち。
その願いを叶えて、プレイルーム付近に子供風呂が作られる事となった。
ニアにすっかり懐かれたアイオがそこへ引っ張って行かれ、そのアイオに引っ張られてトオヤまで一緒に入らされるのは、後に日常と化していった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

性転換ウイルス

廣瀬純一
SF
感染すると性転換するウイルスの話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

PSY・サティスファクト

韋虹姫 響華
SF
超能力────。 それは人間の中に潜む第六感とも言われている能力の一つとも言えるだろう。 ある時、そんな超能力が犯罪に利用されてしまった事で警察や探偵等の一般の考えでは解決や対処の出来ない怪事件が勃発する。 PSYパッケージと呼ばれた自発的か誘発的か分からない超能力の発現によって行われる超能力犯罪───、それに対抗すべく政府が施策した対超能力捜査一課。 しかし、超能力には同じ超能力による対処をすべく一課配属された超能力者はPSYコードと呼ばれ、怪事件を数多く解決する者達であった。 これは、出生が不明であるPSYコード達と一人の少年が出会った事で動き出す物語である。 ※表紙イラストはAIイラストを使用しています。イラストレーターが決まり次第、変更・編集予定です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

Galaxy Day's

SF
考えることができ、心を持ち、言語を解す 存在・知的生命体は長らく地球にしか いない と思われていた。しかしながら 我々があずかり知らぬだけで、どこかに 異星出身の知的生命体は存在する。 その中で!最も邪悪で、最も残忍で、最も 面白い(かどうかは極めて怪しい)一家がいた! その名も『コズモル家』。両親はおろか、子供達まで 破壊や殺戮に手を染めている、脅威の全員『悪』! 家族揃って宇宙をブラブラ渡り歩きながら、悪の組織 をやっていたり!自分達以上にどーしよーもない悪と 戦ったり、たま〜に悪らしからぬいいことをしたり! 宇宙を舞台とした、少し不思議なSFと家族愛、 そして悪vs悪の鬩ぎ合いを中心に、美少女あり、 イケメンあり、人妻あり、幼女あり、イケオジあり、 ギャグあり、カオスあり、恋愛あり、バトルあり、 怪獣あり、メカもあり、巨大ロボットまであり!? 今世紀史上なんでもありなダークヒーロー一家、 ここに誕生!窮屈なこの世の中を全力で破壊… してくれると信じていいのか!?

処理中です...