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第5章:獣の惑星
第47話:スープとお風呂
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ネズミに似た獣人は、ムスラト族という少数民族で、成人でも子供のように小柄なのが特徴だ。
マヤたち猫耳族の正式な種族名はフェレス族といい、ムスラト族とは敵対関係にあったらしい。
即死はしなかったものの、重傷を負っていたムスラト族の男は、僕が話しかけても喋る事は無く、やがて息絶えた。
歯の裏側に仕込んでいた毒を使ったのは気付いていたけど、僕は止めなかった。
彼は黙秘し続けたつもりだろうね。
悪いけど情報は読み取らせてもらったよ。
今回の襲撃は、政府の討伐令によるものではなく、街の人々からの依頼でもなく、ムスラト族独自の行動だった。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「ここにいるとまた襲撃されそうだから、アルビレオに行こう」
小屋に戻って来たトオヤの言葉に、アイオと子供たちが頷く。
皆を転送した艦内プレイルーム付近には、既に山猫団メンバーの部屋が用意されていた。
「……ここは……?」
「ニアのために用意した部屋ですよ」
トオヤに抱えられ、新しいベッドに寝かされたニアは、しばらくすると目を覚まして起き上がる。
付き添うアイオが微笑んで答えると、部屋の給水機からコップに水を汲んで、ニアに差し出した。
「ニアは、ここに住んでくれますか?」
「私、ここにいてもいいの? 他の子は?」
「オイラたちも一緒だよ」
アイオの問いかけに、ニアが聞き返す。
その問いには、スープを運んできたマヤが答えた。
「ここのゴハン最高だよ。オイラ、ここに住みたい」
「このスープおいしいよ、飲んでみて」
マヤはベッドの上に座っているニアに、スープの入ったマグカップを差し出して言う。
一緒に来たナオも笑顔で言った。
ニアが渡されたスープは、トロリとしたクリーミーなポタージュで、火傷せずに飲める温度に調整されている。
「……美味しい」
マグカップを口元へ運んでスープを一口飲み、染み渡る温かさと美味しさに、ニアが感嘆の溜息をついて言う。
それは街の屋台で売られているものを、アイオが気に入り再現した豆のポタージュ。
庶民の味だが、山猫団メンバーは飲んだ事が無い。
彼らがいつも口にしていたのは、掴んで走って逃げやすいパンや干し肉、森の木の実くらいだった。
一方、生き埋めにされていたニイとミイは、ティオとレシカ夫婦にお風呂に入れてもらっていた。
男女の双子なので大浴場に一緒に入れるわけにもいかず、家族風呂を設置している夫婦のところで入浴させてもらっている。
「凄い、お湯がこんなにいっぱいある~」
「お湯で身体を洗うのは初めてか?」
「うん! いつも川の水だったよ」
感動する少年ニイを洗うのはティオ。
生まれてすぐ親を亡くした少年は、産湯も浸かったかどうか分からない。
「あったか~い」
「お風呂、気に入った?」
「うん! お湯もレシカも温かくて好き」
既に身体を洗い終えた少女ミイは、レシカと一緒にお湯に浸かっていた。
抱きついて甘えてくるミイを、レシカは優しく抱き締める。
母の顔も分からない少女は、大人の女性レシカに母への想いを重ねていた。
子供たちが艦内でお腹と心を満たされて眠る頃。
トオヤはアルビレオのAIに作らせた物を手にしていた。
「大丈夫なのは分ってますけど、お気をつけて」
「うん、やりすぎないように気をつけるよ」
艦長室でアイオと小声で話した後、トオヤは単身で瞬間移動した。
マヤたち猫耳族の正式な種族名はフェレス族といい、ムスラト族とは敵対関係にあったらしい。
即死はしなかったものの、重傷を負っていたムスラト族の男は、僕が話しかけても喋る事は無く、やがて息絶えた。
歯の裏側に仕込んでいた毒を使ったのは気付いていたけど、僕は止めなかった。
彼は黙秘し続けたつもりだろうね。
悪いけど情報は読み取らせてもらったよ。
今回の襲撃は、政府の討伐令によるものではなく、街の人々からの依頼でもなく、ムスラト族独自の行動だった。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「ここにいるとまた襲撃されそうだから、アルビレオに行こう」
小屋に戻って来たトオヤの言葉に、アイオと子供たちが頷く。
皆を転送した艦内プレイルーム付近には、既に山猫団メンバーの部屋が用意されていた。
「……ここは……?」
「ニアのために用意した部屋ですよ」
トオヤに抱えられ、新しいベッドに寝かされたニアは、しばらくすると目を覚まして起き上がる。
付き添うアイオが微笑んで答えると、部屋の給水機からコップに水を汲んで、ニアに差し出した。
「ニアは、ここに住んでくれますか?」
「私、ここにいてもいいの? 他の子は?」
「オイラたちも一緒だよ」
アイオの問いかけに、ニアが聞き返す。
その問いには、スープを運んできたマヤが答えた。
「ここのゴハン最高だよ。オイラ、ここに住みたい」
「このスープおいしいよ、飲んでみて」
マヤはベッドの上に座っているニアに、スープの入ったマグカップを差し出して言う。
一緒に来たナオも笑顔で言った。
ニアが渡されたスープは、トロリとしたクリーミーなポタージュで、火傷せずに飲める温度に調整されている。
「……美味しい」
マグカップを口元へ運んでスープを一口飲み、染み渡る温かさと美味しさに、ニアが感嘆の溜息をついて言う。
それは街の屋台で売られているものを、アイオが気に入り再現した豆のポタージュ。
庶民の味だが、山猫団メンバーは飲んだ事が無い。
彼らがいつも口にしていたのは、掴んで走って逃げやすいパンや干し肉、森の木の実くらいだった。
一方、生き埋めにされていたニイとミイは、ティオとレシカ夫婦にお風呂に入れてもらっていた。
男女の双子なので大浴場に一緒に入れるわけにもいかず、家族風呂を設置している夫婦のところで入浴させてもらっている。
「凄い、お湯がこんなにいっぱいある~」
「お湯で身体を洗うのは初めてか?」
「うん! いつも川の水だったよ」
感動する少年ニイを洗うのはティオ。
生まれてすぐ親を亡くした少年は、産湯も浸かったかどうか分からない。
「あったか~い」
「お風呂、気に入った?」
「うん! お湯もレシカも温かくて好き」
既に身体を洗い終えた少女ミイは、レシカと一緒にお湯に浸かっていた。
抱きついて甘えてくるミイを、レシカは優しく抱き締める。
母の顔も分からない少女は、大人の女性レシカに母への想いを重ねていた。
子供たちが艦内でお腹と心を満たされて眠る頃。
トオヤはアルビレオのAIに作らせた物を手にしていた。
「大丈夫なのは分ってますけど、お気をつけて」
「うん、やりすぎないように気をつけるよ」
艦長室でアイオと小声で話した後、トオヤは単身で瞬間移動した。
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