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第5章:獣の惑星
第41話:惑星ベスティア
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惑星ミカルドとその星系を離れたアルビレオ号は、ベスティアという惑星を訪れた。
この星の住民は半人半獣の知的生命体で、アエテルヌムとは過去に交流があったらしい。
異星人が訪れる事も時折あるそうで、僕たちを見ても特に驚く様子は無かった。
乗組員も子供たちも街へ買い物に出て、異星の珍しい菓子に夢中になっていたよ。
僕たちはミカルド星で狩って蓄えた肉と物々交換で、ベスティアの特産物を手に入れた。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「おとうさん、アニムスがあのお菓子食べたいって~」
「……と言いながら、実はチアルムが食べたいんだよね」
「そう言うカールだって食べたいだろ~?」
子供たちのうち2人が賑やかな5人連れ。
トオヤは苦笑しながら子供たちの求める菓子を買ってあげた。
「あそこにトオヤが好みそうな物がありますよ」
「……と言うアイオも食べたい物だね」
大人たち……といってもアイオの見た目年齢は子供たちと変わらない……も露店の品を見て、そんな会話をしている。
他の乗組員たちもそれぞれ仲の良い者同士で買い物を楽しんでいた。
「おーいトオヤ! ここの酒は美味いぜ!」
「コロニーから持ってきた酒が残り少ないから仕入れておくぞ」
すっかり酒飲み仲間になっているのはベガとパウア。
酔っ払いオヤジコンビは艦内に居酒屋を作り、酒好き乗組員に楽しみを提供している。
そんなオッサンたちに苦笑しつつ、トオヤたちは露店巡りを続けた。
気さくな街の人々からオススメされたパン屋に向かおうとした時、前方で騒ぎが起きているのが見えた。
1人の小柄な獣人が大きなパンを抱えて必死な様子で走っている。
後ろから大柄な獣人が走って追い付き、小柄な獣人の襟首を掴んで引き倒した。
小柄な獣人の手から、パンが離れて地面に転がる。
「このクソガキ! また盗みやがって!」
大柄な獣人は、地面に倒れた小柄な獣人を拳で連打する。
その言葉から、騒ぎの元凶が小柄な獣人だというのは想像出来た。
が、やっぱり放っておけないのがトオヤたちである。
「待って、それ以上殴ったら死んじゃうよ」
「あぁん? 何だお前ら?」
何度目かの拳を振り上げたところでトオヤに手首を掴まれ、ゴリラっぽい容姿の大柄な獣人が睨む。
彼がその膝で地面に押し付けている小柄な獣人は黒髪で、頭に付いている耳やお尻のシッポは黒猫っぽい。
「通りすがりの異星人だけど、ちょっとほっとけなくてね」
「盗まれたパンの代わりにこれを差し上げますから、許してあげて下さい」
拳はトオヤに抑えられ、アイオから代わりにと差し出された異星の珍しい干し肉の香りに懐柔され、パン屋の店主らしきゴリラ系獣人は足で押さえつけていた猫耳系獣人から離れる。
地面に仰向けに倒れて動かない猫耳系獣人に、トオヤは治癒能力を使った。
数秒で傷が完治して、頭の猫耳をピクピク動かした後、小柄な獣人は目を開ける。
その瞳は金色で、猫のように縦長の虹彩があった。
「大丈夫?」
「?!」
チアルムが抱き起こそうとすると、猫耳獣人は驚いたように目を見開き、起き上がった直後に飛び下がる。
猫のようにシャーッ! と威嚇した後、小柄な獣人はダッシュで逃げ去ってしまった。
「残念だねアニムス、君に弟が出来るところだったのに」
「残念だねチアルム、2人目の弟候補なのに」
「残念ですねトオヤ、4人目の子供が逃げてしまいました」
「……みんな、何かが間違ってる気がするよ」
少し呆然としながら、4人はそんな事を言う。
しゃべれないアニムスは不思議そうに首を傾げて、猫耳獣人が走り去った方角を眺めていた。
この星の住民は半人半獣の知的生命体で、アエテルヌムとは過去に交流があったらしい。
異星人が訪れる事も時折あるそうで、僕たちを見ても特に驚く様子は無かった。
乗組員も子供たちも街へ買い物に出て、異星の珍しい菓子に夢中になっていたよ。
僕たちはミカルド星で狩って蓄えた肉と物々交換で、ベスティアの特産物を手に入れた。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「おとうさん、アニムスがあのお菓子食べたいって~」
「……と言いながら、実はチアルムが食べたいんだよね」
「そう言うカールだって食べたいだろ~?」
子供たちのうち2人が賑やかな5人連れ。
トオヤは苦笑しながら子供たちの求める菓子を買ってあげた。
「あそこにトオヤが好みそうな物がありますよ」
「……と言うアイオも食べたい物だね」
大人たち……といってもアイオの見た目年齢は子供たちと変わらない……も露店の品を見て、そんな会話をしている。
他の乗組員たちもそれぞれ仲の良い者同士で買い物を楽しんでいた。
「おーいトオヤ! ここの酒は美味いぜ!」
「コロニーから持ってきた酒が残り少ないから仕入れておくぞ」
すっかり酒飲み仲間になっているのはベガとパウア。
酔っ払いオヤジコンビは艦内に居酒屋を作り、酒好き乗組員に楽しみを提供している。
そんなオッサンたちに苦笑しつつ、トオヤたちは露店巡りを続けた。
気さくな街の人々からオススメされたパン屋に向かおうとした時、前方で騒ぎが起きているのが見えた。
1人の小柄な獣人が大きなパンを抱えて必死な様子で走っている。
後ろから大柄な獣人が走って追い付き、小柄な獣人の襟首を掴んで引き倒した。
小柄な獣人の手から、パンが離れて地面に転がる。
「このクソガキ! また盗みやがって!」
大柄な獣人は、地面に倒れた小柄な獣人を拳で連打する。
その言葉から、騒ぎの元凶が小柄な獣人だというのは想像出来た。
が、やっぱり放っておけないのがトオヤたちである。
「待って、それ以上殴ったら死んじゃうよ」
「あぁん? 何だお前ら?」
何度目かの拳を振り上げたところでトオヤに手首を掴まれ、ゴリラっぽい容姿の大柄な獣人が睨む。
彼がその膝で地面に押し付けている小柄な獣人は黒髪で、頭に付いている耳やお尻のシッポは黒猫っぽい。
「通りすがりの異星人だけど、ちょっとほっとけなくてね」
「盗まれたパンの代わりにこれを差し上げますから、許してあげて下さい」
拳はトオヤに抑えられ、アイオから代わりにと差し出された異星の珍しい干し肉の香りに懐柔され、パン屋の店主らしきゴリラ系獣人は足で押さえつけていた猫耳系獣人から離れる。
地面に仰向けに倒れて動かない猫耳系獣人に、トオヤは治癒能力を使った。
数秒で傷が完治して、頭の猫耳をピクピク動かした後、小柄な獣人は目を開ける。
その瞳は金色で、猫のように縦長の虹彩があった。
「大丈夫?」
「?!」
チアルムが抱き起こそうとすると、猫耳獣人は驚いたように目を見開き、起き上がった直後に飛び下がる。
猫のようにシャーッ! と威嚇した後、小柄な獣人はダッシュで逃げ去ってしまった。
「残念だねアニムス、君に弟が出来るところだったのに」
「残念だねチアルム、2人目の弟候補なのに」
「残念ですねトオヤ、4人目の子供が逃げてしまいました」
「……みんな、何かが間違ってる気がするよ」
少し呆然としながら、4人はそんな事を言う。
しゃべれないアニムスは不思議そうに首を傾げて、猫耳獣人が走り去った方角を眺めていた。
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