24 / 104
第3章:翼の惑星
第21話:惑星アーラ
しおりを挟む
アクウァを出たアルビレオ号は、3度目のワープで知的生命体がいるという惑星アーラ付近に移動した。
前回の航行データによれば、そこには鳥のような翼を持つ人々が暮らしているらしい。
大きな白鳥のような見た目のアルビレオは彼等から好感を抱かれたそうで、次に来る時には専用の着陸場所を用意しておくからそこへ降りるようにと言われたそうだよ。
それで今回はアルビレオ号は大気圏内に入り、地上へと降下した。
地上にはアルビレオの輪郭を描いたように白い線で白鳥らしき図形が描かれていた。
地球にも【地上絵】と呼ばれる似たようなものがあったそうだけど、核戦争で破壊されて今は存在していない。
難なく着陸したアルビレオから外へ出て、僕たちは翼人の里へ行ってみる事にした。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
『白い鳥の使い、あなたの事は祖先から聞いていたよ。こんな姿での出迎えですまない』
その【声】を、一同は呆然としながら聞いていた。
本来は自然豊かな田舎の村だった場所。
山の上にある翼人たちの里は、見るも無残に荒らされていた。
天使を思わせる容姿の人々が、至る所に倒れている。
トオヤはその1人を抱き起こしてみた。
『残念だけど、その身体はもう蘇生出来ないよ。私は残留思念に過ぎない』
そう言うのは、トオヤに抱き起こされた人物そっくりの青年。
青年は実体ではなく、ホログラフのような姿で空中に浮かんでいる。
『……何故こんな事に……?』
アイオが問う。
倒れていた青年には外傷が無いかに見えたが、トオヤに抱き起こされた時に喉を反らしたので、そこに牙が刺さったような傷痕が4つ見つかった。
青年の肌は冷たく血の気が無く、微かに開いた目は虚ろで光は消えていた。
その瞼をそっと閉じさせたトオヤに、幻像の方の青年が会釈して感謝の意を示す。
『吸血族だ。翼人狩りと言っていた。男は血を全て吸い取られ、女と卵は連れ去られた……』
悔しそうに告げる残留思念の青年は、そこまで話して何かを感知したようにハッとした。
『……私の子が追われている……。すまないが保護してもらえないだろうか?』
『居場所は分かりますか?』
トオヤは見捨ててはおけず、保護に向かう意志を示す。
もう蘇生出来ないという遺体をそっと草の上に寝かせると、トオヤは立ち上がった。
『案内しよう。私の翼から羽根を1枚抜いて持っていてくれ』
そう言われて、トオヤは青年の遺体から白い羽根を1枚抜き取り、胸ポケットに入れた。
すると、その羽根が白く光り始め、トオヤを包んだ直後に瞬間移動させた。
「なっ?!」
「お、おい!」
「ちょっと! トオヤだけなの?!」
残された人々が慌て、レシカが青年に問おうとするが、青年の残留思念もその場から消える。
「大丈夫、トオヤは強い。それに彼が付き添ったようです」
動揺・混乱する人々の中、アイオだけが落ち着いていた。
前回の航行データによれば、そこには鳥のような翼を持つ人々が暮らしているらしい。
大きな白鳥のような見た目のアルビレオは彼等から好感を抱かれたそうで、次に来る時には専用の着陸場所を用意しておくからそこへ降りるようにと言われたそうだよ。
それで今回はアルビレオ号は大気圏内に入り、地上へと降下した。
地上にはアルビレオの輪郭を描いたように白い線で白鳥らしき図形が描かれていた。
地球にも【地上絵】と呼ばれる似たようなものがあったそうだけど、核戦争で破壊されて今は存在していない。
難なく着陸したアルビレオから外へ出て、僕たちは翼人の里へ行ってみる事にした。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
『白い鳥の使い、あなたの事は祖先から聞いていたよ。こんな姿での出迎えですまない』
その【声】を、一同は呆然としながら聞いていた。
本来は自然豊かな田舎の村だった場所。
山の上にある翼人たちの里は、見るも無残に荒らされていた。
天使を思わせる容姿の人々が、至る所に倒れている。
トオヤはその1人を抱き起こしてみた。
『残念だけど、その身体はもう蘇生出来ないよ。私は残留思念に過ぎない』
そう言うのは、トオヤに抱き起こされた人物そっくりの青年。
青年は実体ではなく、ホログラフのような姿で空中に浮かんでいる。
『……何故こんな事に……?』
アイオが問う。
倒れていた青年には外傷が無いかに見えたが、トオヤに抱き起こされた時に喉を反らしたので、そこに牙が刺さったような傷痕が4つ見つかった。
青年の肌は冷たく血の気が無く、微かに開いた目は虚ろで光は消えていた。
その瞼をそっと閉じさせたトオヤに、幻像の方の青年が会釈して感謝の意を示す。
『吸血族だ。翼人狩りと言っていた。男は血を全て吸い取られ、女と卵は連れ去られた……』
悔しそうに告げる残留思念の青年は、そこまで話して何かを感知したようにハッとした。
『……私の子が追われている……。すまないが保護してもらえないだろうか?』
『居場所は分かりますか?』
トオヤは見捨ててはおけず、保護に向かう意志を示す。
もう蘇生出来ないという遺体をそっと草の上に寝かせると、トオヤは立ち上がった。
『案内しよう。私の翼から羽根を1枚抜いて持っていてくれ』
そう言われて、トオヤは青年の遺体から白い羽根を1枚抜き取り、胸ポケットに入れた。
すると、その羽根が白く光り始め、トオヤを包んだ直後に瞬間移動させた。
「なっ?!」
「お、おい!」
「ちょっと! トオヤだけなの?!」
残された人々が慌て、レシカが青年に問おうとするが、青年の残留思念もその場から消える。
「大丈夫、トオヤは強い。それに彼が付き添ったようです」
動揺・混乱する人々の中、アイオだけが落ち着いていた。
1
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鎮魂の絵師
霞花怜
キャラ文芸
絵師・栄松斎長喜は、蔦屋重三郎が営む耕書堂に居住する絵師だ。ある春の日に、斎藤十郎兵衛と名乗る男が連れてきた「喜乃」という名の少女とで出会う。五歳の娘とは思えぬ美貌を持ちながら、周囲の人間に異常な敵愾心を抱く喜乃に興味を引かれる。耕書堂に居住で丁稚を始めた喜乃に懐かれ、共に過ごすようになる。長喜の真似をして絵を描き始めた喜乃に、自分の師匠である鳥山石燕を紹介する長喜。石燕の暮らす吾柳庵には、二人の妖怪が居住し、石燕の世話をしていた。妖怪とも仲良くなり、石燕の指導の下、絵の才覚を現していく喜乃。「絵師にはしてやれねぇ」という蔦重の真意がわからぬまま、喜乃を見守り続ける。ある日、喜乃にずっとついて回る黒い影に気が付いて、嫌な予感を覚える長喜。どう考えても訳ありな身の上である喜乃を気に掛ける長喜に「深入りするな」と忠言する京伝。様々な人々に囲まれながらも、どこか独りぼっちな喜乃を長喜は放っておけなかった。娘を育てるような気持で喜乃に接する長喜だが、師匠の石燕もまた、孫に接するように喜乃に接する。そんなある日、石燕から「俺の似絵を描いてくれ」と頼まれる。長喜が書いた似絵は、魂を冥府に誘う道標になる。それを知る石燕からの依頼であった。
【カクヨム・小説家になろう・アルファポリスに同作品掲載中】
※各話の最後に小噺を載せているのはアルファポリスさんだけです。(カクヨムは第1章だけ載ってますが需要ないのでやめました)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
闇に堕つとも君を愛す
咲屋安希
キャラ文芸
『とらわれの華は恋にひらく』の第三部、最終話です。
正体不明の敵『滅亡の魔物』に御乙神一族は追い詰められていき、とうとう半数にまで数を減らしてしまった。若き宗主、御乙神輝は生き残った者達を集め、最後の作戦を伝え準備に入る。
千早は明に、御乙神一族への恨みを捨て輝に協力してほしいと頼む。未来は莫大な力を持つ神刀・星覇の使い手である明の、心ひとつにかかっていると先代宗主・輝明も遺書に書き残していた。
けれど明は了承しない。けれど内心では、愛する母親を殺された恨みと、自分を親身になって育ててくれた御乙神一族の人々への親愛に板ばさみになり苦悩していた。
そして明は千早を突き放す。それは千早を大切に思うゆえの行動だったが、明に想いを寄せる千早は傷つく。
そんな二人の様子に気付き、輝はある決断を下す。理屈としては正しい行動だったが、輝にとっては、つらく苦しい決断だった。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
最弱の無能力者は、最強チームの指揮官でした
はじめアキラ
ファンタジー
「良かったな?歴代でも稀に見る、“一切のスキルを持たない無能”の下につけるのだぞ。このようなチャンス滅多にない。喜び給えよ」
その惑星は百年前、降り立った異星人たちによって占拠されていた。
人類はバリアを張ったエリアに立てこもることでどうにか難をしのいでいたが、日々増える人口と食糧不足に悩まされ続けることになる。
異星人たちから土地を奪還しないかぎり、自分たちに未来はない。しかし、彼らもまたバリアで自分達の支配エリアを守っているため、長らく膠着状態が続いているのだった。
彼らと戦う陸軍兵士の一人、トーリス・マイン中尉。
彼は自身が所属する第三突撃部隊が壊滅した責任を取らされ、第十司令基地に飛ばされることになった。
そこは、よその部隊の厄介者や落ちこぼれが集められるとされる基地。司令官は、一切のスキルを持たない無能力者と蔑まれる男だった。
異動を余儀なくされたトーリス。無能力者とされる司令官クリストファー。そのもとに集った多くの仲間たち。
異星人に一矢報いるため、彼らの一世一代の作戦が幕を開けることになる。
「お節介鬼神とタヌキ娘のほっこり喫茶店~お疲れ心にお茶を一杯~」
GOM
キャラ文芸
ここは四国のど真ん中、お大師様の力に守られた地。
そこに住まう、お節介焼きなあやかし達と人々の物語。
GOMがお送りします地元ファンタジー物語。
アルファポリス初登場です。
イラスト:鷲羽さん
誰も知らない幽霊カフェで、癒しのティータイムを。【完結】
双葉
キャラ文芸
【本作のキーワード】
・幽霊カフェでお仕事
・イケメン店主に翻弄される恋
・岐阜県~愛知県が舞台
・数々の人間ドラマ
・紅茶/除霊/西洋絵画
+++
人生に疲れ果てた璃乃が辿り着いたのは、幽霊の浄化を目的としたカフェだった。
カフェを運営するのは(見た目だけなら王子様の)蒼唯&(不器用だけど優しい)朔也。そんな特殊カフェで、璃乃のアルバイト生活が始まる――。
舞台は岐阜県の田舎町。
様々な出会いと別れを描くヒューマンドラマ。
※実在の地名・施設などが登場しますが、本作の内容はフィクションです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる