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第2章:水の惑星
第18話:イルカたちは流星に抗う
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アクウァの王ルウカ様が予言する災厄の時が迫る。
ベガはアクウァに滞在して、同調増幅を受けた防壁の展開を試して完成度を上げつつある。
ティオやレシカたち狙撃手は、それぞれ扱い慣れた小型艇にアルビレオの兵器を組み込み、宇宙空間で発射の熟練度を上げる訓練を続けていた。
僕とアイオはアルビレオにアクセスして主砲と副砲の点検と試運転、調整を続けている。
この美しい水惑星を、クレーターだらけの荒れ星になんてさせない。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
アルビレオ艦内、居住エリア。
「僕たちも何か手伝わせて下さい」
アイオがプレイルームにオヤツを届けに行くと、カール王子と子供たちが駆け寄って来る。
これから何が起きるか、大人たちは何をしようとしているのか、それは子供たちにも伝えられていた。
『では、ベガの防壁に同調増幅を』
アイオは穏やかな笑みを浮かべて、子供たちに思念波を送る。
『わかりました』
生まれつき精神感応能力を持つ子供たちは、すぐに何をすべきか理解した。
「でもその前に、甘味で脳にエネルギー補給をしておきましょうね」
「クッキーだ~!」
「ありがとう!」
そう言ってアイオがテーブルに菓子と飲み物を並べると、子供たちは大喜びだった。
子供たちはアルビレオ号に乗る際に、地球人たちと同じ物が食べられるように体質を調整してもらっている。
クッキーは子供たちの大好物になっていた。
惑星アクウァ、海底王城。
ベガはアクウァの王が惑星全体にメッセージを送る際に入るという【御言葉の間】にて、防壁を増幅する為に全ての民から送られてくる思念波を受け取り、自らの能力を高めてゆく。
『英雄ベガ様に力を捧げます!』
そんな思念波が流れ込んでくる。
『おいおい、俺はまだ何もしてねえぜ?』
ベガは苦笑する。
まだ災害から人々を護り抜いたわけでもないのに、既に英雄視されていて、こそばゆい。
『この惑星を護ろうとしてくれる、その気持ちが民には英雄に感じるのですよ』
ルウカがそう言いながら泳いでくると、ベガをパールホワイトの身体で包むように寄り添った。
『私はトオヤとも交信があるので、接触テレパスで失礼しますよ』
『あ~、スベスベモチモチ肌で気持ちいいな』
敬語が苦手なベガは、精神感応になると完全に普段の口調になるが、ルウカも含めアクウァの人々はそんなものは気にしない。
『昔の地球の海には、アクウァ人に似た生き物がいたそうですね』
『ああ、イルカっていう綺麗な生き物がいたらしい。映像でしか俺は知らないけどな』
かつて海を自由に泳いでいたイルカたちを、今の地球人は見た事は無い。
映像で見たイルカを思い出しながら、ベガはそっとルウカの身体を撫でてみる。
アルビレオ号の乗組員女性にそんな事をしようものなら殴られるところだが、そもそも女性ではないからか、ルウカは穏やかな表情で撫でられた。
アクウァ大気圏外、アルビレオ号艦内。
「そろそろ見えてくる。準備いいか?」
「こちらいつでも迎撃可能です」
艦長室で交信しているトオヤは、ルウカから具体的な隕石群の情報を受け取り、それをレーダーのような位置情報に変換して狙撃手たちに送信し続けている。
(……くる!)
やがて、トオヤはまだ目視出来ぬそれを感知した。
「迎撃用意! アルビレオの主砲発射を攻撃開始とする」
指示を出すトオヤの隣に、アイオが瞬間移動してくる。
艦長席は端末アイオと並んで座れるサイズになっており、彼はトオヤに寄り添うように座った。
『アルビレオ戦闘準備完了。舵はボク、攻撃はトオヤに』
『OK』
2人はそれぞれアルビレオ号にアクセスしながら、接触テレパスで意思を伝え合う。
星空の彼方から飛来する流星群が見えた時、トオヤは主砲を放つ。
そして、隕石群迎撃作戦が始まった。
ベガはアクウァに滞在して、同調増幅を受けた防壁の展開を試して完成度を上げつつある。
ティオやレシカたち狙撃手は、それぞれ扱い慣れた小型艇にアルビレオの兵器を組み込み、宇宙空間で発射の熟練度を上げる訓練を続けていた。
僕とアイオはアルビレオにアクセスして主砲と副砲の点検と試運転、調整を続けている。
この美しい水惑星を、クレーターだらけの荒れ星になんてさせない。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
アルビレオ艦内、居住エリア。
「僕たちも何か手伝わせて下さい」
アイオがプレイルームにオヤツを届けに行くと、カール王子と子供たちが駆け寄って来る。
これから何が起きるか、大人たちは何をしようとしているのか、それは子供たちにも伝えられていた。
『では、ベガの防壁に同調増幅を』
アイオは穏やかな笑みを浮かべて、子供たちに思念波を送る。
『わかりました』
生まれつき精神感応能力を持つ子供たちは、すぐに何をすべきか理解した。
「でもその前に、甘味で脳にエネルギー補給をしておきましょうね」
「クッキーだ~!」
「ありがとう!」
そう言ってアイオがテーブルに菓子と飲み物を並べると、子供たちは大喜びだった。
子供たちはアルビレオ号に乗る際に、地球人たちと同じ物が食べられるように体質を調整してもらっている。
クッキーは子供たちの大好物になっていた。
惑星アクウァ、海底王城。
ベガはアクウァの王が惑星全体にメッセージを送る際に入るという【御言葉の間】にて、防壁を増幅する為に全ての民から送られてくる思念波を受け取り、自らの能力を高めてゆく。
『英雄ベガ様に力を捧げます!』
そんな思念波が流れ込んでくる。
『おいおい、俺はまだ何もしてねえぜ?』
ベガは苦笑する。
まだ災害から人々を護り抜いたわけでもないのに、既に英雄視されていて、こそばゆい。
『この惑星を護ろうとしてくれる、その気持ちが民には英雄に感じるのですよ』
ルウカがそう言いながら泳いでくると、ベガをパールホワイトの身体で包むように寄り添った。
『私はトオヤとも交信があるので、接触テレパスで失礼しますよ』
『あ~、スベスベモチモチ肌で気持ちいいな』
敬語が苦手なベガは、精神感応になると完全に普段の口調になるが、ルウカも含めアクウァの人々はそんなものは気にしない。
『昔の地球の海には、アクウァ人に似た生き物がいたそうですね』
『ああ、イルカっていう綺麗な生き物がいたらしい。映像でしか俺は知らないけどな』
かつて海を自由に泳いでいたイルカたちを、今の地球人は見た事は無い。
映像で見たイルカを思い出しながら、ベガはそっとルウカの身体を撫でてみる。
アルビレオ号の乗組員女性にそんな事をしようものなら殴られるところだが、そもそも女性ではないからか、ルウカは穏やかな表情で撫でられた。
アクウァ大気圏外、アルビレオ号艦内。
「そろそろ見えてくる。準備いいか?」
「こちらいつでも迎撃可能です」
艦長室で交信しているトオヤは、ルウカから具体的な隕石群の情報を受け取り、それをレーダーのような位置情報に変換して狙撃手たちに送信し続けている。
(……くる!)
やがて、トオヤはまだ目視出来ぬそれを感知した。
「迎撃用意! アルビレオの主砲発射を攻撃開始とする」
指示を出すトオヤの隣に、アイオが瞬間移動してくる。
艦長席は端末アイオと並んで座れるサイズになっており、彼はトオヤに寄り添うように座った。
『アルビレオ戦闘準備完了。舵はボク、攻撃はトオヤに』
『OK』
2人はそれぞれアルビレオ号にアクセスしながら、接触テレパスで意思を伝え合う。
星空の彼方から飛来する流星群が見えた時、トオヤは主砲を放つ。
そして、隕石群迎撃作戦が始まった。
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