【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD

文字の大きさ
上 下
422 / 428
翔が書いた物語

第73話:皆で紡ぐ光

しおりを挟む
 「……やはり貴方はリュシアです……。私をその名で呼ぶのは……」
  言いかけて、【ルティ】の身体が再び仰け反り、痙攣し始める。
  精封球《メロウ》に力が戻ったのを確認したディオンが、攻撃を再開し、弓なりに背を反らすルティは、会話が出来る状態ではなくなる。

 「……あいつから精封球を取り上げよう」
  痙攣し続けるルティを抱き締めて、リオが小声で囁く。

 「難しいと思います。彼はそう簡単に手放しはしないでしょう」
 「でも、やらなきゃならない」
  小声で話しつつ、再び癒しの力を使った後、リオはエレアヌにルティを抱かせた。
 「治癒の力、しばらくエレアヌに任せる」
 「……分りました」
  揺るぎない意思を秘めた、リオの瞳が瑠璃色に変わる。
 エレアヌは少年の決意を悟り、軽くため息をついて答えた。
 
 「俺も行く!」
  防御壁の中で立ち上がったリオの腕を、シアルが掴む。
 「……シアル……」
  その蒼い瞳を見つめ、リオはシアルが次に言うであろう言葉を予測していた。
 「一人では行かせない!」
 絶対に離してくれそうにない少年としばし視線を合わせた後、リオは先刻のエレアヌと似た溜め息をついた。
 「じゃあ、一緒に行こう」
  その言葉に、シアルは大きく頷いた。

 「何だ、戦う気になったのか?」
  近付いてくる二人を見て、ディオンが問う。
 「大地の妖精の『力』を、精封球から解放してくれないか?」
  その正面に降り立つと、リオはいつもより低い声で言う。
 「僕は戦うのは好きじゃない。だけど、大切なものを守るためなら……」
 「……戦うというのか?」
  リオの言葉の先を、ディオンが続けた。
 「ではお前の力、見せてもらおうか」
  そして、再び呪文を唱え始める。
  遥か上の空中で、エレアヌに抱かれたルティが再び痙攣し始めた。
  しかし今度は尋常ではない。
  呪文は今までよりも長く、苦しみ方も激しい。
  詠唱を終えたディオンが冷ややかな笑みを浮かべたその時、広間の大穴から真紅の溶岩が吹き上がってくる。
  それは急速に形を変え、襲いかかってきた。

  東洋龍を思わせる、溶岩の怪物。
 警戒し、シアルが身構える。
 「来やがれ化け物、俺が相手だ!」
  その右手から、聖剣が出現した。
 「シアル」
  だが、それを制するのはリオ。
 「その剣は今は必要ない」
  言うと、彼はシアルを背後に庇った。
  直後、飛んできた溶岩の礫が、リオの両脇を掠める。
  何かが焦げる様な臭いがした。
 「馬鹿、何やって……」
  言いかけて、シアルは言葉を止める。
  リオは、穏やかな笑みを浮かべていた。

 「大丈夫、僕たちはもっと大きな、強い力に護られているよ」
  安心感を与える、落ち着いた声でリオは言う。

 (……全ての妖精たち、ラーナ神殿のみんな、……僕に力を貸して……)
  迫ってくる溶岩の怪物を前に、小柄な少年は両手を広げ、そっと目を閉じる。
  その身体を、光が包み始めた。

 「馬鹿め、こいつは防御壁ごときでは防げん。二人まとめて炭となれ!」
  ディオンが怒鳴り、リオ達を指差す。
  直後、真紅の龍は無防備に佇む少年に襲いかかった。
 「リオ!」
  堪り兼ねて、シアルが叫ぶ。
  次の瞬間、眩い七色の光が視界を覆う。

 それは、6つの属性の妖精と、人の祈りがもたらす輝き。
  支配で得る力ではなく、心を通わせる事で生まれる七徳の光ナークス

 「邪悪な力は、その主へと返れ!」
  凛とした声が響き、リオの双眸が開かれる。
  その瞳は聖者の証、神秘の瑠璃色。

 溶岩の龍が急に向きを変え、支配者である筈のディオンを襲う。
 「うわぁぁぁっ!」
  ディオンが絶叫する。
  真紅の怪物の口が、彼を捕らえた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

魔神として転生した~身にかかる火の粉は容赦なく叩き潰す~

あめり
ファンタジー
ある日、相沢智司(アイザワサトシ)は自らに秘められていた力を開放し、魔神として異世界へ転生を果たすことになった。強大な力で大抵の願望は成就させることが可能だ。 彼が望んだものは……順風満帆な学園生活を送りたいというもの。15歳であり、これから高校に入る予定であった彼にとっては至極自然な願望だった。平凡過ぎるが。 だが、彼の考えとは裏腹に異世界の各組織は魔神討伐としての牙を剥き出しにしていた。身にかかる火の粉は、自分自身で払わなければならない。智司の望む、楽しい学園生活を脅かす存在はどんな者であろうと容赦はしない! 強大過ぎる力の使い方をある意味で間違えている転生魔神、相沢智司。その能力に魅了された女性陣や仲間たちとの交流を大切にし、また、住処を襲う輩は排除しつつ、人間世界へ繰り出します! ※番外編の「地球帰還の魔神~地球へと帰った智司くんはそこでも自由に楽しみます~」というのも書いています。よろしければそちらもお楽しみください。本編60話くらいまでのネタバレがあるかも。

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...