408 / 428
翔が書いた物語
第59話:同行者
しおりを挟む
「リオ様、貴方は死の大陸に向かうおつもりでしょう?」
やがて顔を上げたエレアヌは、比較的落ち着いた声で問う。
「えっ……な、何で分った……?」
図星であった。
「分りますよ。貴方はそういう人です。自分の身が危険でも、誰かが助けを求めていると駆け付けずにはいられない。たとえそれが、人間以外でも。だからこそ、人々は勿論、妖精たちにも愛されるのです」
穏やかに微笑むエレアヌの瞳は、まだ涙に濡れている。
「貴方を導くのは、貴方に宿る魂ですから。私には、それを止める事など出来はしません。ですから……」
そこまで言うと、優美な青年は袖で涙を拭い去り、隣に座っている少年の黒い瞳をひたと見据えてこう続けた。
「死の大陸へは、私達四人が同行いたします」
「四人?」
怪訝そうにリオが問いかけた時、遠くから足音が近付いてくる。
「リオ!」
真っ先に走って来たのは、前世の養い子。
「俺を置いてったら承知しないからなっ!」
息を弾ませて駆け寄った彼の額には、汗が滲んでいて、柔らかな銀髪が貼り付いていた。
「シアル?」
「結界の外へは一緒に行くって約束だろ?」
呆然とするリオの両腕をガッチリと掴み、気性の激しい少年は大きな蒼い瞳で睨む。
「見つかりましたよ、エレアヌ様」
続いて来るのは、青い髪と紫色の瞳をもつ長身の青年。
服装はいつもと変わりないが、腰のベルトには長剣を差していた。
肩から下げた布袋、そこから少しはみ出している物が見える。
(……竪琴……?)
リオは首を傾げた。
「遅くなってごめんなさい。弦が切れていたので、張り替えていたんです」
歩幅の違いでやや遅れて歩いてきたのは、白金色の髪と勿忘草色の瞳をもつ少女。
「ミーナ? 四人って……まさか、君も?」
「はい」
さすがに面食らい、裏返った声で問うリオに、おとなしい雰囲気のミーナははにかんだ笑みで答える。
「……えっ、だって君は魔物が怖いよね……?」
意外な展開に、本来は子供っぽい性格であるリオは狼狽した。
「平気です。リオ様と一緒なら」
そんな彼に、少女はきっぱりと言う。
普段は裾の長いワンピースを着ている彼女だが、今は淡いピンクのシャツとクリーム色のズボンという、動きやすい服装をしていた。
「駄目だ、危険すぎるよ。向こうでは、何が起こるか分らないんだから……」
「その危険な場所に、一人で行こうとしてたのは、どこの誰だよ?」
焦るリオに、ツッコミを入れるのはシアル。
腕を掴んでいた手はもう離しているけれど、少々きついその瞳は常に守護すると誓った相手へと向けられていた。
「この数日間、私はずっとあの岩の怪物について調べておりました。そして見つけたのです、あれを倒す方法を。それには、彼等が必要なのです。どうか共に行く事を許してやって下さい」
横から、穏やかな口調でエレアヌも言う。
エレアヌ、シアル、オルジェ、ミーナ。
四人の視線が、黒髪の少年に集中した。
しばし沈黙した後、深い溜息をついてリオは呟く。
「……分ったよ」
柔らかな風が、彼の髪を揺らして吹き抜けた。
やがて顔を上げたエレアヌは、比較的落ち着いた声で問う。
「えっ……な、何で分った……?」
図星であった。
「分りますよ。貴方はそういう人です。自分の身が危険でも、誰かが助けを求めていると駆け付けずにはいられない。たとえそれが、人間以外でも。だからこそ、人々は勿論、妖精たちにも愛されるのです」
穏やかに微笑むエレアヌの瞳は、まだ涙に濡れている。
「貴方を導くのは、貴方に宿る魂ですから。私には、それを止める事など出来はしません。ですから……」
そこまで言うと、優美な青年は袖で涙を拭い去り、隣に座っている少年の黒い瞳をひたと見据えてこう続けた。
「死の大陸へは、私達四人が同行いたします」
「四人?」
怪訝そうにリオが問いかけた時、遠くから足音が近付いてくる。
「リオ!」
真っ先に走って来たのは、前世の養い子。
「俺を置いてったら承知しないからなっ!」
息を弾ませて駆け寄った彼の額には、汗が滲んでいて、柔らかな銀髪が貼り付いていた。
「シアル?」
「結界の外へは一緒に行くって約束だろ?」
呆然とするリオの両腕をガッチリと掴み、気性の激しい少年は大きな蒼い瞳で睨む。
「見つかりましたよ、エレアヌ様」
続いて来るのは、青い髪と紫色の瞳をもつ長身の青年。
服装はいつもと変わりないが、腰のベルトには長剣を差していた。
肩から下げた布袋、そこから少しはみ出している物が見える。
(……竪琴……?)
リオは首を傾げた。
「遅くなってごめんなさい。弦が切れていたので、張り替えていたんです」
歩幅の違いでやや遅れて歩いてきたのは、白金色の髪と勿忘草色の瞳をもつ少女。
「ミーナ? 四人って……まさか、君も?」
「はい」
さすがに面食らい、裏返った声で問うリオに、おとなしい雰囲気のミーナははにかんだ笑みで答える。
「……えっ、だって君は魔物が怖いよね……?」
意外な展開に、本来は子供っぽい性格であるリオは狼狽した。
「平気です。リオ様と一緒なら」
そんな彼に、少女はきっぱりと言う。
普段は裾の長いワンピースを着ている彼女だが、今は淡いピンクのシャツとクリーム色のズボンという、動きやすい服装をしていた。
「駄目だ、危険すぎるよ。向こうでは、何が起こるか分らないんだから……」
「その危険な場所に、一人で行こうとしてたのは、どこの誰だよ?」
焦るリオに、ツッコミを入れるのはシアル。
腕を掴んでいた手はもう離しているけれど、少々きついその瞳は常に守護すると誓った相手へと向けられていた。
「この数日間、私はずっとあの岩の怪物について調べておりました。そして見つけたのです、あれを倒す方法を。それには、彼等が必要なのです。どうか共に行く事を許してやって下さい」
横から、穏やかな口調でエレアヌも言う。
エレアヌ、シアル、オルジェ、ミーナ。
四人の視線が、黒髪の少年に集中した。
しばし沈黙した後、深い溜息をついてリオは呟く。
「……分ったよ」
柔らかな風が、彼の髪を揺らして吹き抜けた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)
屯神 焔
ファンタジー
魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』
この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。
そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。
それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。
しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。
正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。
そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。
スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。
迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。
父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。
一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。
そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。
毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。
そんなある日。
『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』
「・・・・・・え?」
祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。
「祠が消えた?」
彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。
「ま、いっか。」
この日から、彼の生活は一変する。

俺だけが持つユニークスキル《完全記憶能力》で無双する
シア07
ファンタジー
主人公、レン・クロニクスと幼馴染である、サクヤが一緒に買い物へ行っている時だった。
『ユニークスキル《完全記憶能力》の封印が解除されました』
という機械のような声が聞こえ、突如頭が痛みだす。
その後すぐ周りが急に暗くなり、頭の中に数々の映像が見せられた。
男女の怪しげな会話。
サクヤとの子供時代の会話。
つい最近出来事など様々だった。
そしてレンはそれをみて気づく。
――これがレン自身の記憶であることを。
さらにその記憶は。
「なんで、全部覚えてるんだ……」
忘れることがなかった。
ずっと覚えている。
行動も時間もなにもかもすべて。
これがレンだけが持つ、最強のユニークスキル《完全記憶能力》の能力だった。
※他サイトでも連載しています

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる