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翔が書いた物語
第47話:エリエーヌ
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ラーナ神殿。
建物の前にある広場に突如現れた3人を見て、白き民達は驚いて一瞬固まる。
相手が誰か理解した途端、人々はすぐに駆け寄ったが、状況を見て再び硬直した。
「何て無茶を! そんな身体で空間移動するなんて!」
珍しく声を荒らげるエレアヌ。
その腕に抱えられたリオは応えない。
閉じられた瞼、鮮血が溢れ続ける胸と背中。
弛緩した身体は、ピクリとも動かない。
移動前はあった意識は失われている。
次第に下がってゆく体温は、命の流出を告げていた。
「……まさか……」
絞り出すような呟きが、エレアヌの唇から漏れる。
「……また……ですか……?」
問いかけても、答えは返ってこない。
「……また……私に貴方を……貴方の転生者を探せというのですか……?」
淡い緑の瞳から溢れ落ちる滴が、血の気を失ったリオの頬を濡らす。
「……お願いです……死なないで下さい……!」
瀕死の少年から魂が抜け出そうとするのを止めるかの様に、緑の賢者はその身体を強く抱き締め叫んだ。
彼は一つの名を呼ぶ。
現世ではなく、前世でもなく、遠い昔の名を。
「リュシオン!」
……それは、リオの魂の原初の名前……
呼びかけるエレアヌの身体が、淡い金色の光を放ち始めた。
―――…リオは、白い光の中に居た。
何も無い、純白の空間。
「貴方を愛しています」
女性と思われる、澄んだ高い声が響く。
「……誰……?」
ぼんやりと、リオは呟いた。
陽炎の様に空間が揺れて、リオの前に一人の乙女が現れる。
波打つ黄金色の長い髪、淡い緑の瞳。
白鳥を思わせる、穏やかな微笑み。
「私をお忘れですか?」
緑の刺繍が施された、白いドレスを纏った乙女は、笑みを絶やさずに問いかける。
「いつも、貴方の側に居ますのに……」
その笑みが、フッと寂し気に翳る。
「悠久の時の中、私達は親友となり、親子となり、兄弟となり……恋人となった事も……ありましたのに……」
乙女の姿が霞み、様々な人物に変貌する。
その中の一人は、確かに見覚えがあった。
「……エレアヌ……」
リオは呟く。
「思い出せましたか?」
柔和な顔立ちの青年が、穏やかに微笑む。
「……エリエーヌ……」
そんな名が、続いて紡ぎ出された。
「……はい……」
相手は最初の乙女に戻り、微笑む。
けれど、その橄欖石の様な瞳には、煌めく滴が浮かんでいた。
「たとえどのような姿、どのような関係に生まれても、私はあなたを……あなたの魂を愛しています……」
その微笑みと姿が、白い光に溶けてゆき、次第に見えなくなり始める。
消える刹那、乙女は言う。
「どうか、生きて下さい。……リオ……」
低く深みのある穏やかな青年の声が、それに重なった…──
建物の前にある広場に突如現れた3人を見て、白き民達は驚いて一瞬固まる。
相手が誰か理解した途端、人々はすぐに駆け寄ったが、状況を見て再び硬直した。
「何て無茶を! そんな身体で空間移動するなんて!」
珍しく声を荒らげるエレアヌ。
その腕に抱えられたリオは応えない。
閉じられた瞼、鮮血が溢れ続ける胸と背中。
弛緩した身体は、ピクリとも動かない。
移動前はあった意識は失われている。
次第に下がってゆく体温は、命の流出を告げていた。
「……まさか……」
絞り出すような呟きが、エレアヌの唇から漏れる。
「……また……ですか……?」
問いかけても、答えは返ってこない。
「……また……私に貴方を……貴方の転生者を探せというのですか……?」
淡い緑の瞳から溢れ落ちる滴が、血の気を失ったリオの頬を濡らす。
「……お願いです……死なないで下さい……!」
瀕死の少年から魂が抜け出そうとするのを止めるかの様に、緑の賢者はその身体を強く抱き締め叫んだ。
彼は一つの名を呼ぶ。
現世ではなく、前世でもなく、遠い昔の名を。
「リュシオン!」
……それは、リオの魂の原初の名前……
呼びかけるエレアヌの身体が、淡い金色の光を放ち始めた。
―――…リオは、白い光の中に居た。
何も無い、純白の空間。
「貴方を愛しています」
女性と思われる、澄んだ高い声が響く。
「……誰……?」
ぼんやりと、リオは呟いた。
陽炎の様に空間が揺れて、リオの前に一人の乙女が現れる。
波打つ黄金色の長い髪、淡い緑の瞳。
白鳥を思わせる、穏やかな微笑み。
「私をお忘れですか?」
緑の刺繍が施された、白いドレスを纏った乙女は、笑みを絶やさずに問いかける。
「いつも、貴方の側に居ますのに……」
その笑みが、フッと寂し気に翳る。
「悠久の時の中、私達は親友となり、親子となり、兄弟となり……恋人となった事も……ありましたのに……」
乙女の姿が霞み、様々な人物に変貌する。
その中の一人は、確かに見覚えがあった。
「……エレアヌ……」
リオは呟く。
「思い出せましたか?」
柔和な顔立ちの青年が、穏やかに微笑む。
「……エリエーヌ……」
そんな名が、続いて紡ぎ出された。
「……はい……」
相手は最初の乙女に戻り、微笑む。
けれど、その橄欖石の様な瞳には、煌めく滴が浮かんでいた。
「たとえどのような姿、どのような関係に生まれても、私はあなたを……あなたの魂を愛しています……」
その微笑みと姿が、白い光に溶けてゆき、次第に見えなくなり始める。
消える刹那、乙女は言う。
「どうか、生きて下さい。……リオ……」
低く深みのある穏やかな青年の声が、それに重なった…──
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