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翔が書いた物語
第46話:過ち
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「……危ないなぁ……」
間一髪で難を逃れ、リオは溜め息をついた。
そして彼はエレアヌの腕にシアルを抱かせ、接近してくる魔物の方を向く。
「あんなのに追いかけられたら厄介だな。ちょっと壊してくる」
二人を結界の中に残し、聖なる力を持つ少年は岩の怪物へと近付いていった。
「いけません! 不用意に近付いては……!」
その背を見つめるエレアヌは、胸の内側が締め付けられるような感覚に陥る。
神殿を出る時から感じていた、訳の判らない焦り。
「エレ兄?」
やがて、シアルが意識を取り戻し、大きな蒼い瞳で世話役である青年を見上げる。
結界の外では、リオが片手を岩の怪物に向けて、自分の内にある【力】を掌の間に集結させていた。
以前、水の妖精を襲っていた魔物を消し去ったのと同じ【光の力】を放とうとしている。
「闇に属するものは、闇へと還れ!」
そして、今の自分に出せる精一杯の力を放とうとした時……
―――…違う…―――。
微かな【声】が、聞こえた様な気がした。
「え?」
リオが一瞬戸惑った時、岩の怪物の胸元がグニャリとねじれる。
次の瞬間、彼は胸の辺りに衝撃を感じた。
「リオ様っ!」
悲鳴に近い声で叫んだ、エレアヌの緑の瞳に映ったのは、巨人の胸元から突き出した鋭く長い岩の槍に胸を刺し貫かれる、黒髪の少年の姿であった。
声も上げられぬほどの激痛に、リオの顔が苦悶に歪む。
その口から、鮮血が迸った。
シアルが、言葉にならぬ引き吊った悲鳴を上げる。
守護者になると誓った彼はエレアヌの腕を振りほどき、リオの方へ行こうとするが、空に浮かぶ防御壁の中では不可能だった。
岩の怪物が無造作に槍を引き抜くと、リオの胸から背まで貫通した傷口から、大量の鮮血が噴き出した。
「早く、彼を結界の中へ!」
風の妖精達が、リオの身体を背後の二人の方へと移動させる。
「しっかりして下さい!」
胸と背中から大量の血を流しながら苦痛に呻くリオを抱えて、エレアヌが叫ぶ。
「風の妖精達、お願いします! 私たちを神殿へ……せめてリオ様だけでも運んで下さい!」
そして、周囲に集う小妖精たちに視線を巡らせ懇願する。
頼まれなくともリオたちを逃がそうと必死の妖精たちに運ばれて、結界ごと空を進む3人を、岩の怪物が追う。
微かに目を開けたリオの視界の端に、高速移動でこちらへ接近してくる岩の怪物が映る。
(……駄目だ……風の翼では、あいつから逃げ切れない……)
半ば薄れかけた意識の中で、彼は一つの決意を固めていた。
何事か言いかけたリオの口から、咳と同時に鮮血が溢れ出る。
「リオ! ……怪物め、よくもリオを……!」
その横で、シアルがリオを心配しつつ剣を握り締め、岩の怪物を睨む。
「……シア……ル……」
リオの口から、やっと聞き取れる声が漏れる。
振り返ったシアルの蒼い瞳に、こちらを見つめているリオが映る。
「……手を……」
「手? ……これでいいか?」
幾分はっきりした声で、リオは言う。
そっと差し延べられるシアルの手を震える手で掴み、リオは薄れかける意識を必死に集中させた。
伏し目がちの黒い瞳が、瑠璃色に変わる。
「……リオ?! いけません!」
何かを察知したエレアヌが叫んだ瞬間、三人の姿はその場から消えた。
間一髪で難を逃れ、リオは溜め息をついた。
そして彼はエレアヌの腕にシアルを抱かせ、接近してくる魔物の方を向く。
「あんなのに追いかけられたら厄介だな。ちょっと壊してくる」
二人を結界の中に残し、聖なる力を持つ少年は岩の怪物へと近付いていった。
「いけません! 不用意に近付いては……!」
その背を見つめるエレアヌは、胸の内側が締め付けられるような感覚に陥る。
神殿を出る時から感じていた、訳の判らない焦り。
「エレ兄?」
やがて、シアルが意識を取り戻し、大きな蒼い瞳で世話役である青年を見上げる。
結界の外では、リオが片手を岩の怪物に向けて、自分の内にある【力】を掌の間に集結させていた。
以前、水の妖精を襲っていた魔物を消し去ったのと同じ【光の力】を放とうとしている。
「闇に属するものは、闇へと還れ!」
そして、今の自分に出せる精一杯の力を放とうとした時……
―――…違う…―――。
微かな【声】が、聞こえた様な気がした。
「え?」
リオが一瞬戸惑った時、岩の怪物の胸元がグニャリとねじれる。
次の瞬間、彼は胸の辺りに衝撃を感じた。
「リオ様っ!」
悲鳴に近い声で叫んだ、エレアヌの緑の瞳に映ったのは、巨人の胸元から突き出した鋭く長い岩の槍に胸を刺し貫かれる、黒髪の少年の姿であった。
声も上げられぬほどの激痛に、リオの顔が苦悶に歪む。
その口から、鮮血が迸った。
シアルが、言葉にならぬ引き吊った悲鳴を上げる。
守護者になると誓った彼はエレアヌの腕を振りほどき、リオの方へ行こうとするが、空に浮かぶ防御壁の中では不可能だった。
岩の怪物が無造作に槍を引き抜くと、リオの胸から背まで貫通した傷口から、大量の鮮血が噴き出した。
「早く、彼を結界の中へ!」
風の妖精達が、リオの身体を背後の二人の方へと移動させる。
「しっかりして下さい!」
胸と背中から大量の血を流しながら苦痛に呻くリオを抱えて、エレアヌが叫ぶ。
「風の妖精達、お願いします! 私たちを神殿へ……せめてリオ様だけでも運んで下さい!」
そして、周囲に集う小妖精たちに視線を巡らせ懇願する。
頼まれなくともリオたちを逃がそうと必死の妖精たちに運ばれて、結界ごと空を進む3人を、岩の怪物が追う。
微かに目を開けたリオの視界の端に、高速移動でこちらへ接近してくる岩の怪物が映る。
(……駄目だ……風の翼では、あいつから逃げ切れない……)
半ば薄れかけた意識の中で、彼は一つの決意を固めていた。
何事か言いかけたリオの口から、咳と同時に鮮血が溢れ出る。
「リオ! ……怪物め、よくもリオを……!」
その横で、シアルがリオを心配しつつ剣を握り締め、岩の怪物を睨む。
「……シア……ル……」
リオの口から、やっと聞き取れる声が漏れる。
振り返ったシアルの蒼い瞳に、こちらを見つめているリオが映る。
「……手を……」
「手? ……これでいいか?」
幾分はっきりした声で、リオは言う。
そっと差し延べられるシアルの手を震える手で掴み、リオは薄れかける意識を必死に集中させた。
伏し目がちの黒い瞳が、瑠璃色に変わる。
「……リオ?! いけません!」
何かを察知したエレアヌが叫んだ瞬間、三人の姿はその場から消えた。
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